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91.寒くても懐は暖かい。

午前四時。

外はまだ薄暗くて静かだけど

俺は黙々と積荷のチェックをしている。


ケニーが居ないから皆持ち回りで

早朝出勤を余儀なくされているのだ。

この膨大な仕事量を毎日一人で片付けるなんて

まったく想像もつかない。


俺は店が開くまでになんとか終わらせた。

カレンはまだリンダと事務作業をしているから

先に上がって奥で仮眠させてもらうことにした。

(バイト代...期待できそうだな)


スヤスヤ...

さすがに早朝出勤はつらい。

昨日ログ見てて寝るのが遅かったせいでもあるが。


「レオ終わったよ!」

「はいこれ今日の分だって」


ザク...

テーブルに置いたコインの音で一気に目が覚めた。

なんて良い目覚めなのだろう。


「じゃあ俺達はあがりますね」

「お疲れっ」「お疲れ様レオナルド」


ザクザクの給料袋を上着の内ポケットに入れて

俺とカレンは悠々と街に出かけた。

まだ昼前で時間は余るほどあるのだから。


カランカラン...

「いらっしゃいませ」


まずはカレン用の防寒着を買いに来た。

男物の地味なコートのままではさすがに可哀想だ。


「あら? ログで気象予報をしてる精霊さんよね!」

「うん。.....あれ?」「どうしたカレン?」


マジマジとブティックの店員さんを見ている。

いつもは人見知りなのになぜか興味津々。


「んふふ。隠しても無駄なようねウェザー」

「私は“色彩”の女神級よ」


彼女は誰にも見られていないことを確認すると

スルンと纏めていた髪をほどいた。

その長く美しい亜麻色の髪を搔き上げると

ネモフィラのような淡い水色へと色が変わった。

瞳の色も少し明るくなったような...


「ここで働いているのー?」

「そうよ。でも皆にはナイショにしておいてね」


店員はカラーという女神級の精霊だった。

この店の主人に気付かれぬよう

カーラという偽名で働いているのだとか。

そこはあまり変わってない気がする。


わざわざマスターから離れて働いてるのは

変というより不自然な感じだ。

なにか特別な理由でもあるのだろうか。


「私ね、服とかドレスが大好きなの」

「いろんな色に染めることができるでしょう?」


売り物のセーターを優しく撫でると

鮮やかな紅色へと変化した。

次々と商品の色を変えていくカラ...カーラ。

店内は今色彩に溢れている。


カチャ...ギィィ...

「カーラ、お客さんかい?」


シュウウン...

まるで幻を見ていたかのように

店主が扉を開ける前には全て元に戻っていた。

もちろん彼女自身も。


「シックな茶色も良いけどコレも似合いそうね」

「可愛いのがいいなー!」「ならこれも...」


チャリン...結構高かった。

精霊は言葉巧みな話術を使って

買う予定のない俺にも上着を売りつけた。

中々の商売上手だ。


ヒソヒソ...

「これ私の本垢だからフォローして」

「また買いに来てね」


本来の彼女とそのマスターのアドレスをくれた。

それにしてもカラーはレベルが高くて

オトナ感が色々と漂っている。

マスターは冒険者かハンターに違いないから

あとでログを覗いてみよう。


「あったか〜い!それに可愛い〜!」

「精霊にも会えてよかったね」「うんっ」


次は馴染みの返却屋へ。

店内がいつもより混み合っていることが

このガチャの渋さを物語っていた。


数十分待たされてようやく順番が来た。

“ポッケ”の中から外れの当たりと

呪いのコタトゥを取り出す。


「これ本当に戻していいのかい!?」

「いいよ。レアだけどヤバい代物だからね」


店主は本当に呪われているのかと疑ったが

あれは間違いなく呪われている。


チャリン...

全部で6000コインに変わった。

コタトゥの返却額が思いのほか良かったから

俺は予定より少し多めの石を購入した。

まとめて買うと数個分のオマケが貰えるのだ。


「お肉は何買おうかな〜」

「先行き不安だからパタパタにしようか...」


そう、まだ当たった訳ではないし

来週から他のガチャも始まるから節約は必須。

高級肉は我慢してもらうしかない。


「似合ってるかなぁー?」

「よく似合ってるよ(10回目)」


買ったばかりの上着をきて嬉しそうなカレンが

帰り道で何度も俺に感想を求める。

彼女が選んだのは白いファー付きのコートで

カーラが魔法で入れた雪の結晶柄が

西陽でうっすらと浮き上がって見えた。

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