64.メンテナンスが終わらない。
“Grand Challenge System Ver2.10 更新”
ポチリ。
時々やってくるシステムのアップデート。
新しく実装されるという天界の秘宝シリーズは
神々により作られたとされるアイテムが当たるらしい。
“しばらくお待ちください...”
待ち時間が長いのはいつものことだけれど
今回は魔術ネットワークも同じ更新日だから
暇で暇で仕方がない。
トントントン...カチャ
「おいレオナルド!更新はもうしたのか?」
「勝手に入るな。フィオはいいけど」
「朝からナイスジョークだなぁ!ハハッ!」
土曜の朝からけたたましい笑い声。
もちろん伯父だ。
「で、まだアップデートしてないよなぁ?」
「残念。俺は初動が早いので」
“メール読まなかったのか!?”と言われたが
いつもどうでもよい内容しか送ってこないから
当然未読スルーしていた。
「やっちまったなぁーレオナルド」
ゴクゴク...さりげなく俺の飲みかけの珈琲を飲む。
(.......この危険人物めがっ!!)
「どっちも更新が終わらないだろ?ヤバいらしいぞ」
「ヤバいってどういう...」
どうやら俺は大きなミスを犯したようだ。
魔術ネットワークVer3.0への更新は必須ではない。
更新後は多少のバグが起こるものだが
今回はかなりまずい事になっているのだという。
「更新出来た人も開けなかったり、データ飛んでるって」
「だからメールしたのにさぁ...(チラッ)」
今更何を言われても後の祭りだ。
フィオも遅れてやって来た。
「おはようございます。レオナルド」
「おはようフィオ。入って」
フィオが自分の小型端末を持って来てくれた。
まだ更新前でログも普通に見れるが...
「さっそくですが、これを見てください」
“更新に不具合発生!アップデートは要注意”
“GCSにも大規模な障害か”
情報屋のまとめログの記事だ。
上の記事から下の記事まで全部更新の話題。
こんなことはシステム開始時以来だ。
「ネットもガチャも同時刻に障害が発生しました」
「同じシステムを経由しているとしか思えません」
度々話題になる魔術ネットワークと“あの人”の関係性。
フィオの推測ではやはりと言うことらしい。
「最悪の場合ガチャ出来なくなるかもなぁ...」
「当たったモノもどうなるやら」
(.......無理ぃ!!絶対に無理ぃぃぃ!!!)
せっかく慣れて来たこの“世界”なのに
すべてなかった事にされたらたまったもんじゃない。
それにフィオとかカレンはどうなるんだよ...
「運営はそこまで非情なことはしないと思います」
「とりあえず今は復旧を待つことしか...」
ピロン♪
“運営より更新の不具合について”
具体的な原因は不明だが
復旧は午後十二時を予定とだけ書かれていた。
俺はフィオと稽古をしながら時間潰し。
カレンは伯父の新作用に挿絵を描いている。
「やはり天才だなぁカレンちゃんは」
「えへへー」
さて、もういい頃だろう。
召喚陣を広げる..........ブウォン...ウォン... シュウゥゥ
“現在サーバーの負荷によりメンテナンス中です”
.....更新は終わっていたけれどガチャができない。
たぶん障害あけにアクセスが集中したため
メインサーバーがダウンした模様だ。
「こりゃ一日経っても治らないかもなぁ」
「運営さんって大変なんだねー」
フィオの未更新端末の通信も遅い。
そもそもサーバーって何だろう?
「サーバーは大きな魔術回路のようなものです」
「似たような物は旧世界でも.....」
以前から秘密裏に運用されていたらしい。
大きな組織と頭の良い人達、それに“あの人”の影。
頭の悪い俺にはちょっと理解不能だ。
「それじゃあ暇つぶしがてら隣街に行こうか」
「はーい!行きたいー!」「それが良いですね」
一向に更新が終わらない端末を机の上に置いて
俺達はウィザーライドに乗り込んだ。




