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65.気分転換には甘いもの。

大きな街には大きな広告塔がある。

ビルの壁面や柱などに魔術モニターを取り付けて

最近では写真のほか動画広告まで流れる。


「ここもエラー表示が出ていますね...」


これらはネットワークを利用している為

更新したモニターは使えなくなっているようだ。


カランカラン...「いらっしゃいませぇ〜」


用事があってとあるお店へ。

壁に貼られた紙のポスターを見て

俺は違う心配をしていた。


“世界初!ライブを生中継で配信決定!”

“女神級アイドル精霊フローリアファーストライブ”

“※楽曲のご購入とVer3.0への更新が必要です”


チケット抽選は外れて取れなかったけれど

大人気のため新しいシステムの試験運用も兼ねて

ネットで中継動画を流すらしい。


(だから即アップデートしたのにな.....)


このままでは来週までに直らない可能性もあるが

とりあえず初回限定アルバムを予約する。


「ありがとうございましたぁ〜」


これで今日の任務は完了だ。


「こういう娘(こ)がレオナルドの好みなのかぁ〜」

「.....に、人気があるからだよ!」


艶やかな表情をしたジャケット写真だったから

なぜだか俺は全力で取り繕った。

いつもの可愛い感じもいいけれど

これもまた新鮮で.....


それはともかく情報収集。

返却をやってるお店はどこもクローズ。

ネットやガチャ関連は完全に駄目っぽい。


「レオナルドも俺も用が済んだけど、どうする?」

「あの...私行きたいお店があって...」


フィオがそう言って端末を見せる。

いま流行っているパンケーキのお店らしい。

たしかに美味しそうだ。


「次の角を左で、その先を渡って右です」

「なんだか人がたくさんいるよー?」


店の前から建物を曲がった所まで凄い行列。

みんなネットもガチャもできなくて暇なのだろう。


「これでは...また今度にしますね」

「いや、並ぼうよ。俺も食べてみたいし」


彼女は俺達に気を遣ってそう言うけれど

パンケーキなら食べ終わるのも早いだろうから

大人しく長い列に並ぶことにした。


「フィオ、お前は少し遠慮し過ぎだぞ?」

「.......マスターはもう少し遠慮してください」


伯父の小言に冷めた目でそう返した。

俺も常々そう思う。


ようやく順番が来て席に着くと

直ぐにパンケーキとエッグパタパタが運ばれた。

並んでいる時にオーダーを受けているからだ。


どれもボリュームが多いから

みんなで皿に取り分けてシェアして食べる。

カレンは甘いの苦手だから玉子の方だけ。


「いただきまーす.....うまーい!」

「どれどれ...おおっ!コレは中々美味いぞぉ!」


二人はそれを大絶賛。

俺とフィオはパンケーキからいただく。

山盛りのクリームは意外にも軽くて

甘過ぎないからペロリと平らげた。


「凄いです...このフワフワ感と絶妙な.....」


カレンの第一声とは違い

まるでグルメ記者のような食レポだ。


「美味しかったです...ご馳走さまでした」

「でも俺はこの前のフィオが作った方が好きかな」


頬を少し赤らめてそれを否定するフィオ。

お世辞でもなんでもなくて

本当にあの時食べたパンケーキは最高だった。


「また今度作ってよ」

「はい...私ので良ければいつでも」


ウッヴン...

そんな甘い会話に割り込む咳払い。

たしかにちょっと甘過ぎた気がするから

食後の珈琲を三つと紅茶を一つ追加注文した。



ピロン♪

「これは魔術ネットワークからですね」

「なんて書いてあるんだい?」


“通信速度規制の解除とアップデートの再開”

“Ver3.0障害は順次修復(予定)”


...だそうだ。

なんとか修復もできるみたいでよかった。

あとはガチャの方だけれども...


“現在システム障害によりメンテナンス中です”


進展はなさそうだが、詫び石の配布告知があった。

(いっそ長引いて十個くらいくれればいいのに...)

結局今夜中には復旧せず

新しいガチャを回すことは出来なかった。

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