58.細かいことは気にしない。
「来ちゃった(エヘッ)」
「だから来ちゃったじゃないでしょ、母さん」
あれから二日後。
さっそく母さんがドラゴンに乗ってやって来た。
「ちゃんと連絡してからにしてよ」
「あらあら?急じゃ困るのかしらねぇ〜(意味深)」
残念だけど、母さんの思っているような事はないし
急に結婚とか孫ができる心配とかもない。
(そもそもまだ十六の俺に孫を期待するなよ...)
「それで今日はあなたに見せたいものがあって」
ガサゴソ...(大きな封筒を取り出す)
俺は警戒した。
母さんの事だからお見合い写真とか広げかねない。
とりあえず椅子に腰掛けて話を聞く。
「はい、お茶をどうぞー」
「あらまあ、カレンちゃんはお利口ね」
カレンが気を遣ってシビレ草のお茶を入れてくれたが
客人に苦いお茶を出すのはどうかと思う。
まあ、母さんだからいいか。
「うん、苦くて元気がでるわねっ!」
「...じゃなくて、その封筒は一体なんなんだよ」
「そうそう、忘れるところだった」
ススッ...ペラリ
“初心者向けクエスト: 宝石の森 資源採掘”
“魔石の元になる“素材”を採掘して経験値を貰おう!”
“ランキング上位には更に豪華アイテムの副賞”
“エントリーはお早めに事務局まで”
その封筒の中身はクエストの開催案内と
エントリーシートであった。
南にある“宝石の森”は鉱物の採掘が盛んな地域で
昔は魔力の強い地脈であったため魔石が採れた。
今はあの人が全て吸い上げてしまったが
魔力のない石...つまりはただの宝石は残っている。
運営は何かしらの理由で
魔力の受け皿となるその“素材”が欲しいようだ。
「これなら安全そうだし、良いかと思って...」
「お節介だったかしら?」
「そんなことないよ...ありがとう母さん!」
レベルを上げるのには丁度良い。
勇者というよりトレジャーハンターの案件だけれど
今は細かいことにこだわっていられない。
「じゃあエントリーシートにサインしてね」
「この書類と、この書類に...(ススッ)」
(..........ん?)
なんか一枚違う書類が紛れている。
“トキメキがとまらない...”
“第2回森コン参加者用エントリーシート”
「.........お節介だよ母さん」
「やっぱりダメよね。地区長さんが是非にって」
頼まれてというのは絶対に嘘だ。
都合が悪い時はいつも口元に指を当てる。
心配なのはわかるけれど最近ちょっとしつこい。
俺は一枚の書類にサインをして渡し
もう一方はなんとか諦めさせた。
そのあと伯父の屋敷へ寄るというので
俺達はあのドラゴンに乗せてもらうことにした。
「すごいねー!ゴツゴツしてるよ」
乗り易いようにちゃんと身体を低くする竜。
背中...いや、正確にはもう少し前の首あたりに
お手製の鞍が付けてある。
「うわぁ...っとっと」
「落ちないように気を付けなさいよ」
竜が立ち上がると一気に視界が変わり
その振動と共に思わずよろけてしまった。
「結構高さがあるんだね...(少し怖い)」
「飛んだらもっと高いわよ〜(煽る)」
バサバサと翼を動かしてホワッと宙に浮く。
そのまま真っ直ぐ上昇すると
母さんの合図でヒューンと飛びだし高度を上げる。
「旋回するから掴まってなさいっ」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」「すごいすごいー」
手綱を引いてグルリと上空を旋回すると
伯父の屋敷方向へ一気に滑空した。
シュウウウン.....ワッサワッサ...ドスーン
歩きで二十分弱の距離がたった数分で到着。
俺は降りてからも眩暈と吐き気で死にそうなのに
カレンは全然平気な様子だ。
「........前に乗ったことあるの?」
「ないよー!ドラゴンなんて初めて乗ったよ」
(俺が軟弱なのか...そうなのか...ゲホッ)
居間の大きなソファーで暫く休ませてもらった。
なんだか世界がぐるぐる回っている...
「グリフォンも同じですよ、レオナルド」
コト.....フィオがお水を持ってきてくれた。
景色を追わずに真っ直ぐ飛ぶ方向だけを見るのが
酔わないコツらしいのだけれど
結局は怖がる気持ちが精神的に作用するらしい。
「ハハッ!これじゃあガチャで来ても乗れないなぁ」
「......少し黙ってもらえますか」
伯父が倒れこむ俺を見て面白そうに揶揄う。
「レオナルド!伯父様にそんな口利いちゃダメよ」
「いいんですよローズさん。彼なりの照れ隠しです」
(..........違うしマジギレだよ?)
そのあと俺は一時間くらい寝てしまい
起きた時にはウィンディ以外誰もいなくなっていた。




