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59.謎は多い方が面白い。

居間のソファー。

少し眠ったおかげで体調はすっかり回復していた。


パタパタ...クイッ

ウィンディが“こっちへ来て”と手招きをする。

どうやらみんながいる場所へと案内してくれるようだ。




パシャ...パシャパシャ

屋敷の裏庭に集まって竜の写真撮影をしていた。

著書の宣伝用に使いたいらしい。


「これでいいかなー?」

「もう少し右...もうちょっと上の方だねぇ...」


真剣な眼差しの伯父。

カメラを持っている時だけはとても真面目だ。

そしてなぜかカレンがモデルとして頑張っている。


「私がモデルしましょうか?って聞いたらね」

「ローズさんは魅力が強過ぎるからって言われちゃった」


あの小説は確か17歳の少女が竜に恋をする話だったから

母さんは単に年齢制限に引っかかっただけだし

“強過ぎる”もきっと別の意味だと思う。

喜んでいるから言えないけれど...まあ、放っておこう。


「レオナルド、もう調子は大丈夫ですか」

「ああ、もう元気になったよ」


俺に気付いたフィオが撮影アシスタントを抜けて来た。

(数分飛んだだけで酔うなんて、格好悪いな俺...)

彼女には心配かけてばかりだ。


“あら...あらあらあら.....”


ふいに何か聞こえた気がしたけど

まだ耳が少し変になっているようだ。


「はい、カァーットォ!!お疲れ様カレンちゃん」

「はぁぁ...やっと終わったよー」


一時間こんな事ばかりさせられていたらしく

さすがのカレンも弱っていた。


でも出来上がった写真はまるで小説の世界が

本当の話だったのではと思ってしまうほど美しい

少女と竜が見つめ合う幻想的なものだった。


「これで増刷、実写化オファーも期待できますよ」

「あとでログに上げるので見てくださいね」


撮影機材を一通り片付け終わった後

俺達は少し早めの夕飯をご馳走になった。


「今日はクライフがいないから食べに行こう」

「お薦めの料理屋があるんだ。肉も旨いぞぉ〜!」


それを聞いてカレンの目が輝く。

新しく変わった異国の料理を出す店が出来たらしい。


いつも特訓で使う近くの森に入りしばらく歩くと

大きな木の幹がくり抜かれたように広がっていて

そこに無理矢理はめ込まれたような扉があった。


「異世界激辛食堂 娘娘...なんだそれ」

「扉しかないよー?」「まあ入ればわかるって」


カランカラン...

「イラッシャイマセご主人さま〜」

「5名さまと小さな妖精が1匹ですね、どうぞ中へ」


煌びやかな装飾と見慣れない異国の雰囲気。

これってもしかして...


「異世界と通じてるのかって?んなわけないだろぉ」

「ファンタジー小説の読み過ぎだなレオナルド」

「そうよ、考え方が子供ねあなたは」


伯父と母さんにひたすら笑われた。

これは今人気の映画“異世界の竜と紅い月”の

劇中に出てくる架空の店“娘娘(ニャンニャン)”であり

宣伝を兼ねて全国を期間限定で回っているそうだ。


「まずはなんといっても小籠包だなぁ」

「ドラゴン!だいすきー」


しゅわわん...

不思議な器を開けると白くてクタッとした

変な丸いのが5つ入っていた。


「これ熱いから気をつけろよぉ」

......プチッ「アッヅウ!!!」


自分で言って真っ先に火傷している...馬鹿だ。

味はすごく美味しかったけれど、カレンは...


「これ...美味しいけど肉少ないよー」

「それにドラゴン肉じゃない気がする...」


とても不満そうだ。

次の麻婆豆腐も挽肉が少しとあとは豆のゼリー?

のようなもので、俺は美味いと思ったけど

カレンには全然肉要素が足りない。


結局食べたのは肉団子と青椒肉絲の野菜抜き。

フィオも苦手なものが多かったらしく

杏仁豆腐というデザートばかりを食べていた。


「やはり不思議ですね...杏仁なんて知りませんし」

「食材はどこから手に入れているのでしょうか...」


小声で意味深なことを聞くフィオ。

彼女も俺と同意見のようだ。この店はやはり.....

まあ、謎は謎のままにしておこう。


「ご馳走さまでしたフェルナンドさん」

「いやいや、こちらもわざわざ呼んでしまって」


フヲン....バッサバッサ...


母さんを乗せたドラゴンは月夜に黒光りして

まさにファンタジー小説の一場面のように見えた。

一緒に乗って行くか聞かれたけれど

俺とカレンは家までの道を歩いて帰った。

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