45.優しい魔女。
魔術士や魔法使い。
呼び方は違えど然程違いはないので後は好みの問題。
母さんをあえて呼称するとしたら“魔女”が似合う。
とてもミステリアスで、年齢不詳だから。
...とは言っても人の子の親だし、可愛い物が大好き。
いわゆる魔女さまな感じではなくて凄く優しい。
見た目はどちらかといえば大人っぽくて
カレンにあげた“大きなリボン”を付けるには
さすがに無理があると思うけれど
まるで時間が止まってしまったかのような綺麗さだ。
でもそれを言うと調子に乗ってやり過ぎちゃうから
本人がいる前では絶対に言わない。
おかずを作り過ぎたり...
仕送りが三日に一度届いたり...(しかも日持ちしない)
「レオのお母さんって美人だねっ!」
「まあ、そんなことないわよ...(照れ笑い)」
(あぁ....到着早々に余計なこと言ったな)
今日の晩御飯は品数がやたらと増えるであろう。
カレンが残さず食べるなら、まあいいか。
「ところでこちらの彼女は.......彼女なのね!」
「残念ながら違います」
俺の即答に対しあからさまに残念な顔をする母さん。
何を期待していたのでしょうか。
「この娘はカレン。俺の相棒でウェザーって精霊」
「ウェザー!?あなた一生分の運を使ったんじゃ...」
それ前にも誰かに言われたし。
身の丈に合ってないとか酒のネタにされてるし。
「よろしくおねがいしますっ」
「これは、つまらない物ですが!」
カレンが昨日作ったボンゴリのジャーキーを手渡す。
(どこで覚えたんだ その社交辞令的なトークは...)
「まあまあこれはご丁寧に」
「いえいえ、とんでもございませんよぉー!」
使い慣れてない感が出てて笑える。
フィオの時“第一印象で失敗した”と気にしていたから
入念に作戦を立てたのだろうとすぐに解った。
「はいはい。堅苦しい挨拶は終了」
「寒いから早く部屋に入ってもいいかな?」
カレンの言っていた通り午後から強風が吹いてきた。
しかも山からの風だからすごく冷たい。
「そうね。風邪を引いたら大変っ」
「すぐに温かいお飲み物を入れますからね」
玄関先に感謝祭の飾り付けがしてあった。
こういうイベントには必ず乗る母さん。
今年はイルミネーションにもチャレンジしたらしい。
かなりの気合いの入れようだ。
コト...「はい。温かいミルクティーですよ」
懐かしい味がした。
モリヤギのミルクとドラゴンリーフ
それに様々なスパイスを合わせて煮出したお茶だ。
「お砂糖は入れなくてよかったのかしら?」
「うん!」「この子は甘いの苦手なんだ」
「めずらしい精霊さんね。本当はお肉が好きとか?」
母さん、ジョークのつもりで言ったけど正解だから。
驚きつつも“じゃあ今夜はステーキねっ”とか言って
一人買い出しに出かけた。
二時間後...
カチャ。ズズッ...ズズッ...(何かを引きずる音)
「ごめんなさい。遅くなってしまって」
「・・・・・・・・・」
ほら、やり過ぎた。
買ってきたんじゃなくて狩ってきたようだ。
「おいしい〜!お料理も上手なんだねー」
「ウフフ...それは良いお肉が手に入ったからよ」
謙遜するが間違いなく喜んでいる。
でも旨味があって美味しいなこの肉...
「ヒクイトリっていう稀少な魔獣なのよ」
「すごいねー!レオのお母さん」
「・・・・・・・・・」
そう。この魔女はすごい。
勇者の親父と冒険してきただけあって
レベルの高い魔術を使うからね。
「今日はちょっと魔力を使い過ぎてしまって...」
「イルミネーションは明日でもいいかしら?」
電飾を輝かす事が出来ないほどの魔力を使い
ヒクイトリを狩ってきてくれたらしい。
まったく無茶しやがって。
早めの風呂に入ってからすぐ寝る事にした。
二階の天窓から真っ暗な夜空を眺める。
街灯が明るい街では見ることのできない
無数の小さな星々が瞬いていた。




