37.親しき仲でも礼儀は必要。
「ウェザー君っ!待っていたよ!」
「第一助手!早くお茶を入れないか!」
「教授、その呼び方イラッとします」
確かにそれは失礼だと思う。
目を細くして教授を見るブルー。
「き、キミは冗談も通じないのかねっ」
時すでに遅し。
女神怒らせるべからず。
「さあ、お茶とクッキーをどうぞ」
「教授には特別にこちらを」
この臭いは...野生のシビレ草だ。
しかもお茶じゃなくてスムージーだろあれ...
「もちろん飲みますよね?」
「わざわざ“第一助手”が淹れたのですからね」
ゴクゴクゴク.....バタンッ
ちゃんと謝れば許してくれるであろうに
素直に謝罪が出来ない教授は
一気にそれを飲み干してから倒れた。
「大丈夫よ。少ししたら起きると思うから」
「それまで私の秘密部屋、見たい?」
「なにそれー!みたいっ!」
伸びている教授を一人残して
俺たちはブルーの後について行った。
カチャ...ギィィィィ...
結構頑丈な作りをしている扉だな。
「さあ、どうぞ」
(な...なんだここは!?)
ズラリと並べられた銃。
投げて使う武器なども壁一面に飾ってあって
綺麗な装飾や格好の良いデザインの物ばかりだ。
「すごいでしょう」
「これがこの前使ったタイプのやつね」
カシャカシャッ...
そう言ってショットガンを構えて見せるブルー。
「これ全部ガチャで集めたの!?」
(心の声 : 一体幾ら課金したの!?)
「違うわよ。彼は殆どガチャを回さないわ」
「よく見ればわかるはずだけど」
ブルーのコレクションはよくよく見ると
普通の“それ”とは少し違っていて
銃口や引金などの形が簡単な作りをしている。
「気付いた?これは魔道具でも普通の銃でもないの」
「自分で作ったりオーダーした特注品なのよ」
そういえば助けてくれた時に撃った銃。
あの時は蔓のようなものが竜の体をを包んでー
...ってことは
「これに種を入れて使うの?」
「正解。だから“私専用”ってわけ」
小さい種を連射出来るマシンガンタイプや
大きい種用の大砲まであるじゃないか...スゲぇ。
細かな細工はヒマな時に自分で入れたそうで
まさに宝物庫と呼ぶべき部屋だ。
「私のスキルは遠くに飛ばせないと不利になるの」
「だから趣味と実益を兼ねてって感じよね」
ここまで凄いと半分以上が趣味な気がするけどね。
「さあ、そろそろ起きたかしら」
すっかり忘れていた教授のいる部屋へ戻る。
記憶が飛んでいるようで、俺たちを見るなり
とても驚いて“いつ来たんだい!?”なんて言う。
「教授、重要な研究結果が得られましたよ」
「生葉のシビレ過剰摂取は記憶障害を引き起こすー」
カチャカチャカチャ...
研究用の端末に内容を書き起こす教授。
「一体誰で実験したと言うのかね、ブルー」
「教授、あなたです」
「...あ、そう。なるほど覚えてないわけだ!」
彼は研究の事になると何をされても平気らしい。
まさにマッドサイエンティストだ。
いや、ただのマゾか。
「お礼に伺うのが遅くなってしまいましたが」
「この前は本当にありがとうございました」
さっき倒れていて言えなかったお礼を二人に伝えた。
カレンもペコっと頭を下げる。
「これはカレンと一緒に作った物です。どうぞ」
包みを手渡す。
お礼の品を持って行くことにしたのだが
せっかくなので最近俺達がハマっているものにした。
「ボンゴリの生ハムです」「おいしいんだよ!」
「ほう、これはウェザーのスキルを駆使したのかね」
そう、大正解。
保管庫にだけ効かせた “ 室内温度湿度調節 ”
そこに少し塩漬けした肉を吊るして3日程で完成。
“クックログ” に載っていた人気のレシピを参考にし
さらにスキルを使って超時短調理を実現させたのだ。
「わざわざありがとうね」
教授は受け取ると嬉しそうな声でそう返した。
(なんだか凄く素直な反応...シビレ草の効果か?)
この後教授の頼み事もカレンがいくつかお手伝いして
あっという間に帰る時間になった。
名残惜しいけど俺達は急いで村まで戻り
待っていたオーサーのバンに乗って家路に着いた。




