19.ダンジョンに出たい。
「だんじょんにでたい〜♪ だんじょんに〜♪」
早朝、俺がトレーニングを終えて家の中に戻ると
ウェザーが鼻歌混じりに変な歌を歌っていた。
「それ、なんなの?」
「これ?レオが寝ながら言ってるやつ」
「いつもいつもそう言うよ?」
........なんですと!?
どうやら毎晩そんな寝言を言っているらしい。
心の声がダダ漏れだ。
そう。俺はそろそろダンジョンに出たい。
ダンジョンでなくてもせめて討伐イベントに。
ケニーの所へ着くと、ウィッドが隣町から戻っていた。
「おいレオ、耳寄りな情報があるぜ」
彼はそう言うと一枚の紙を差し出した。
“討伐イベント: 西の森 低級ノラ一掃 終了: 討伐完遂”
「これって野良の討伐じゃないですか!」
「久しぶりだよな?」
ノラとは...
ガチャでしか現れなくなった低・中級の魔物は
自分の使い魔にするかアイテム屋などに売るのだが
不届き者が故意や返却が面倒だからという理由で
野に放ってしまう事が残念ながら多々ある。
そんなモンスター達を“野良”と呼ぶのだ。
それは“あの人”の目指す“世界”にはとても都合が悪いし
戦わない人達からしたらとても危険な訳で。
だから魔物の数が一定数増えてしまったところで
初心者向けの“討伐イベント”が開催される。
中・上級者が無双しそうな気もするであろうが
低級の討伐は報酬、落ちるアイテム、上がる経験値など
びっくりする程低いので彼らは来ない。
「そろそろいいんじゃないか?」
...シュバンッ
ウィッドが不意を打って俺にジャブを繰り出してきた。
だが俺は反射的に片手でそれを受け止める。
「やるじゃねぇか。大丈夫だろうよ」
“剛腕のウィッディー”のお墨付きをもらい
俺は討伐参加を前向きに検討することにした。
仕事を終えた後、ケニーにこの事を相談する。
「そっか...ウチ的には厳しいんだけどねぇ」
「やっぱそうですよね...」
時期的に今は繁忙期なのだ。
お祭りを控えてどこの商売屋も忙しいのだが
討伐に参加となると最低でも5日は休みがいる。
「うーん...まあ、いっかな。大丈夫だよ」
「いいんですか!?」
一週間休みという予想外の満額回答であった。
といっても有給休暇とはいかないが。
「すげぇな。ケニーも気前良いとこあるじゃねえか」
側から聞いていたウィッドが背中を叩く。痛い。
「大丈夫。“剛腕のなんとか”が二人分頑張ってくれるから」
「えぇ...老体にムチ打つつもりかよ...」
都合よくご老人アピールするも彼女は本気だ。
申し訳ないが、彼ならきっと乗り切ってくれるに違いない。
そうしてケニーから許可をもらった後
伯父とフィオにも報告しに屋敷へと向かった。
「そうですね...低級だけでしたら...」
フィオは少し心配そうだったが許可してくれた。
ただし参加するにあたり忠告を受けた。
“最後の一撃はウェザーに打たせること”
これは最後に倒した者に多く経験値が割り振られる為
レベルが低い彼女をイベント中に強化しつつ進み
攻撃や防御魔法を覚えて俺のサポートが出来るようになれば
万が一の事があってもお互いに安全だからだと言う。
「色々考えてくれてありがとう」
「いえ...お二人とも怪我だけはなさらぬように」
伯父はなんだかまだ忙しそうだから言付けだけして
俺は意気揚々と家路に着いた。




