149.恥らう乙女心。
♢フレイア山麓
「テントが...テントが...お姉ちゃん...」
「保険に入っておくべきだったねコトリ」
占いの館は鉄砲水で破壊されたことになっているが
本当は俺が...無意識のうちに破壊したらしい。
申し訳なさすぎて黙々と片付けを手伝う。
「レオナルドさん優しいです」
「い...いやぁ、手が空いてたから...」
荷物を積み終えて次の目的地へと向かう。
店を失った彼女を残して行くのも可哀想だから
飛空挺のお留守番係として連れて行くことに。
そもそも俺のせいだし。
「占い料込みの時給はこれくらいでー」
パチパチ...パチリ...
恐ろしい額を提示するコトリ。
自営業の言い値ほど理不尽なものはない。
「調子に乗るんじゃない!お小遣いなら私が出す」
「わーい。ありがとうお姉ちゃん」
(最初からそれが目的だったのか...)
♢飛空挺/雲の上へ
フレイア山を後にした俺達は飛空挺で一路西へ。
モコモコした雲の上を滑るようにして進んでいく。
「あの...さっきの神官って人は...」
「彼奴は逃げるように帰っていったぞ」
「用も住んだでなぁ?」
なぜかカレンの方を向いて目を細めるイルジオネ。
怒っている感じでもなさそうだし
匂わせ振りな物言いも気になるのだが...
「何かあったのカレン?」
「...なにもないよ」「何かされた?」
首を横に振るカレン。
セクハラ的な何かをされたなら俺は許さない。
「ハハッ!女神に手を出す程愚かではなかろう」
「何もなかったならそれならいいけど...」
二人には笑って誤魔化されたけれど
なんだかモヤモヤする。
それに何も食べてないからお腹も空いてきた。
トットットッ...
操舵室に降りてきたラファエル。
腕に包みを抱えているが...
「ほいっ、昼メシまだ食ってなかっただろ?」
「簡単なサンドウィッチを作ってみた」
うん、なんだろうこの違和感。
料理なら俺かイルジオネが作るのに
どういった風の吹き回しなのだろうか。
「ログのインセンティブ制度に登録してみた」
「よくわからないけどふごぃね(モグモグ)」
具沢山な断面が色鮮やかで綺麗。
カレンのはローストパタパタ入りか...美味そう。
「ほら食えって。フィッシュタルタル好きだろ?」
「要らぬと言うておろうがっ!」
「食べないの〜?あむぅ...(モゴモゴ)」
拒否しているわりにそれを凝視しているが
ダイエット中なんてことは女神だからないはずだ。
単にラファエルの料理が気に入らないのだろう。
「こんな...こんな野蛮な食べ物など...」
「なんだ食わねぇのかよ」
「あとで俺が食べるよ。ありがとうラファエル」
バタン...
ラファエルは残念そうに部屋から出ていった。
一生懸命作っただろうに...少し可哀想。
ペシペシッ!
「後ろを向け。良いと言うまで動くでないぞ!」
「てぇ...なんだよいきなり」「私も〜?」
俺とカレンを壁側に立たせた女神。
逆らうのも怖いし取り敢えず命令に従う。
ムシャムシャ.....
モキュモキュ.....モキュ...
(あれ...サンドウィッチ食べてる!?)
モゴモゴ...ゴクリ。
「よいぞ。初心者にしては美味であった」
「恥ずかしくて人前では食べられぬ...」
(.....恥ずかしくて?)
普段とは違って乙女なコトを言う女神。
口を大きく開けるのが彼女的に無理だったらしい。
カレンは豪快にかぶりつくけど。
「恥らいがない女神などあり得ぬぞ」
「き...気をつけるよぉ...」
コンコンッ...
出発から一時間ほど経過。
休憩を終えたレイナ達が交代に来た。
「余はそろそろ休むでな」
「自動運転モードに切り替えておくぞ」
「お疲れ様。あとは私に任せて!」
だいぶ疲れているように見えるのは
例の神官に魔力を供給していたからだという。
相当使われたらしくて足取りも重い。
「大丈夫ですか?一緒に部屋へ行きましょう」
「ひゃ...だ...そんな...急に.....」
ひょいっ...
心配したミッチェルさんが腕に抱えると
突如として意識を失った女神。
(そんなに魔力を消耗していたなんて...)
医務室へと運ばれたけれど心配だ。
魔力風邪とかじゃなければいいけど...
「天然なのかしらレオナルドって」
「天然なんだろレオナルドは」
なぜだかコソコソ笑われている。
俺は変なことを言った覚えはないのだが...
「ふふっ...そこもユーフラテスとそっくりだ」
(エマまで一緒になって...むぅ...)
「ごめんなさい。少し笑いすぎた」
「外の見張りにでも行きましょうかレオナルド」
そろそろ夕陽が見える頃。
気晴らしにも良いし付いていこう。
「カレンも一緒に行こう」
「私は女神様の様子を見てくるよー」
「そっか...じゃあよろしく」
.....ピュ〜イ♪
結果的にふたりになっただけなのに
ラファエルが茶化すように口笛を吹く。
そんなじゃないのに...
♢マスト上の見張り台
ビュウゥゥゥ...
カンッ...カンッ...よいしょっと
「手に掴まってレオナルド」
「ありがとうエマ」
一番高い位置にある小さな見張り台。
風が時折強く吹くけど雲の上にいるから
強い西陽で寒さは感じない。
「とても綺麗な景色...異世界にいるみたい」
「そうだね...(なんだろうこのイイ感じ)」
柔らかな風に乗る鳥の群れ。
空には白い月がうっすらと顔をのぞかせている。
しばらく沈黙が続いた後
深刻な表情でエマが口を開いた。
「レオナルド...ウェザーの様子がおかしい」




