146.劣等感と無力感。
ピンッ...シュッ.......ドゴォォォン!!
手榴弾の爆風で視界が曇った。
エマが一人でゴーレムの進撃を食い止めている。
「レオナルド、早くウェザーを」
ダゴォォォォン!ダンダンッ!
援護の砲弾が頭上に飛び交う。
俺は何重にも重なった瓦礫を崩して
埋もれたカレンの救出を急いだ。
グオォォォォ!ブンッ!
「大丈夫かラファエル!」
「つぁ...やべぇ...マトモに食らった」
半身を起こしたが額からは血が滴っている。
「ガウガウッ!ガウゥ!」
「悪りぃな...」
ズズッ...ズズッ...
攻撃をやめて停止するゴーレム。
その間にガウがラファエルを連れて退場。
重傷でないといいけれど...
カラカラカラ...
「ってレイナ!だめだよ降りてきちゃー」
「私だって逃げない。仲間なんだから」
「足手纏いだとでも?」「違うけど今は...」
(あぁ...正直足手纏いだよ)
こんな状況でお姫様に何が出来るのかと
俺は内心イラついてしまった。
「一度落ち着け。レオナルドは私と前線に」
「レイナはウェザーを救出後に離脱」「了解っ」
冷静さを欠いた俺に的確な指示が飛ぶ。
エマは普通の時と戦場では口調も違って
その目はまるで高貴な騎士のようだ。
「ユーフラテスの子息なら勇姿を見せてみろ!」
そう言って駆け出したエマは
停止中のゴーレムを何度も斬りつける。
(なんだよエマまで...)
(それに親父が勇者だからってのはー)
「関係ないですってぇ!」
サクン...あれ?
明らかに怒りを込めたはずなのだが
剣は威力を発揮せずに失速。
(おかしいな...ならもう一回だ!)
「親父と比較されても困るのでっ!」
サクン...
「それは劣等感で怒りとは違う」
「わ...わかってるよ!」
大声で二回も叫んだ挙句
冷静に突っこまれて物凄く恥ずかしい。
「起動するぞ!救出の進捗具合はどうだ」
「もう少しでっ!これさえ外せれば...んぐぅぅ」
「わかった。レオナルドは私の背後につけ!」
この面倒な剣をチェンジして前線に出るつもりが
そのまま後方援護にまわれとの指示。
確かにエマの方がレベルも高いのだろうけれど
そんなに邪魔者扱いしなくてもいいのに...
「来るぞレオナルド、後方の援護用意!」
「わかってます(なんだよもう)」
カチャ...
レイナがカレンを救出するまでは仕方ない。
俺は若干不貞腐れ気味に前を向く。
グオォォアァァァァァ!
シュゥン...しゅわわわわあ〜ん...
(なんだ今の可愛い効果音は?)
「そういえば言い忘れましたが」
「一定量のダメージを加えると全快するようです」
手負いのレノが伝えに来た。
どんなに攻撃してもコレだなんて
他の冒険者が諦めて離脱するのも無理はない。
「狼狽えるなレオナルド!」
「総員退避まで時間を稼いでから私達も離脱する」
「離脱って...それじゃあケインズの街がー」
「状況を考えてから物を言え」
目がマジだった。
“お前殺されたいのか”
“自分一人じゃないの理解してる?”
“正直足手纏いだ”
そう言われたような気がして
俺はその場に立ちすくんでしまった。
気迫も状況判断も全てにおいて優っている。
何を思い上がっていたんだ俺は...
「抜けたっ!カレン私に掴まって」
「あぁ...いたたぁ...大丈夫立てるよ...」
ダダン...ダダン...(停止)
二人の方を向いて動きを止めるゴーレム。
これは特攻を仕掛ける前兆...マズい!
「グリフォン出ろ!二人を咥えて飛空挺へっ」
グォォォォォ!コンニチィィィ!!!
バッサバッサッ...カプゥ!
シュゥゥゥン
これで戦場に残るは俺とエマだけだ。
ラファエル達もミッチェルさんも下がっているし
あとは離脱するタイミングをー
「レオナルド油断するなっ!」
ダゴォォォォン!!
「うわっ...このぉぉぉ!!!」
「右から来る!レオナルドそっちじゃー」
バアァァァァァァァン...
タスン...
回避できずに防御体制をとる俺を咄嗟に庇い
目一杯突き飛ばしたエマ。
何度も地上を転がってから顔を上げると
彼女の鎧は鮮血で紅く染まっていた。
「レオ...ナルド.....ここから...逃げ.....」
「エマ、エマしっかりしてっ!」
「大.....だから...早く...逃げ...」
駆け寄ると親指を立てて笑顔を見せるエマ。
ぜんぜん大丈夫なんかじゃない。
それにゴーレムは再攻撃を仕掛けるモーション。
俺は隅の方にエマを寝かせてから
敵の目前に立ち塞がって深呼吸をした。
(俺は約束したのに)
同じことを繰り返さないって。
(守りたいだけなのに)
護られてるのはこっちじゃないか。
(強くなったはずなのに)
勘違いも甚だしい...
これじゃあ半年前と
半年前と何一つ変わっていないじゃないか...
「この...この...バカヤロォォォー!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ブンッ.....スパァァァァァン
一太刀で真っ二つに切り裂かれたゴーレムの体。
その時俺の中で何かが弾けたような気がした。




