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145.怒りのベクトルが違う。

「布団の中に忍び込むなよ変態っ!」


ドゴォォォォォン!


「フィオに迷惑ばかりかけやがってぇ...」

「とっとと原稿書けこの三流作家めがぁ!!」


バゴォォォォーン!

カランッ...ズダァァァァァァン.....


思い出したくない過去の出来事や

日頃の恨みつらみを込めた攻撃が炸裂する。

とても清々しい気分だ。


「なんだかお前んち複雑なんだな...」

「まあね。前説だけで軽く二時間は語れるけど」

「いや...遠慮しとくわ」


ひたすら弱点らしい脛を狙い続けるが

時折繰り出す高速タックルには要注意だ。

でも直撃さえ受けなければ問題はー


ダッダッダッダッダ.....

シュウン...


なぜか俺達に向かってではなく

勢いをつけて上空へと高く跳び上がったゴーレム。

あの巨体では上から来ても容易に予測がつく。

(なんだ脳筋タイプだなコイツ)


「いけない!地面から離れるんだっ!!」


茂みの中からレノが慌てた様子で顔を出す。

ゴーレムは宙返りすると回転しながら落下を始め

高速で地面に向かって...地面にぃ!?


「ウェザーは私の腕に掴まれっ!」

「レオナルド跳ぶんだっ!レオナルド!」



ヤバい...ミスったなこれは。

状況判断が大事だって何度も言われてたのに。

どんな相手でもナメたら痛い目にあうってー



ダガアアアァァァァァン!!!!!



俺の身体は衝撃で高く吹き飛んだ。

地面が割れるような音と

砕けたソレが背中にぶち当たる音。

痛い...



(あぁ、カレンはエマが...良かった...)



落ちていく。

砂埃の中で少しだけ瞼を開くと

エマとカレンの姿が映った。

ラファエルも勘がいいから上手く避けたと思う。



(どっちが地面なのか判らない)

(判らないけれど着地をキメないと...)



ガシィィィン!!

グオオォォォォァァ!!!


「ぐあっ...あぁ...あぁぁぁっ」



地面に落ちるより先に

ゴーレムの右手が俺を捕らえた。

さすが上級クラスは素早さも腕力も桁違いだ。

圧迫されて腕が...痛い...



「レオがつぶされちゃうっ!エマ離して!」

「状況を考えろウェザー!」



ダンッ!ダンッ!ダンッ!



ミッチェルさんの砲撃が右腕に直撃。

よろめくゴーレムにエマも攻撃を仕掛けるが

その間も俺を締め付けて離そうとはしない。

い...意識が.....やば...



「レオを離してぇー!」


スザンッ!

ダゴォォォォン...パラパラパラ.....



俺が落とした剣をカレンが力一杯振り抜くと

掴んでいた右手は肘からスパッと切り落とされた。

ラファエルが助けに駆け寄る。


「おい大丈夫かレオナルド!」

「なんとかね...ははっ」

「とりあえずお前はそこで休んどけ」


すぐに戦場へと戻るラファエル。

ゴーレムの怒りはカレンに向けられている。

回避しつつも果敢に反撃するカレン。


「怒りだカレン!」

「お肉がもっと食べたいよー!(ブンッ)」


サクン...


多分怒りのベクトルが違うのだと思う。

微かに擦り傷がついた程度でノーダメージ。


「なんかねぇのかよ!レオナルドに不満とか」

「ないよー!(ブンッ)」


サクン...


それは良かった(よくない)

平和的なカレンには向いていない強化魔術だけど

他のメンバーにもそれほど怒りはないようだ。


「オレかぁ...そうだな...駄目だパス」

「私に渡されても...は...恥ずかしくて言えないっ」


やはり俺のトラウマ的な一撃でしか

こいつを仕留める事は不可能なのだろうか。

まだまだ嫌な思い出なら沢山ある。



ダッダッダッ...

ズダダダダダダダダダッ!


「マズイぞウェザー!ラファエル!」

「なんだよさっきより早くねぇかアイツー」


ダアァァァァァァン.....


ゴーレムが再度地面を強く叩きつけると

今度は避けきれず爆風に飲まれた。


「ぐはぁ...いってぇな.....」


立て続けに特殊攻撃を放たれて

街道沿いの露天や木々は見る影もなく

破壊の規模は恐ろしい勢いで広がっている。



「レオナルド、ウェザーがっ!」


エマの呼ぶ先には瓦礫が積み重なり

その下には半分以上埋もれた状態のカレンが


「んぐぅ...レオ...ふぐぅあ...あぁ...」

「待っててすぐ助ける!」「せーのっ」


脚が挟まれていて体が抜けない。

俺とエマで隙間を作ろうと試みるも動かず

一つひとつ外した方が賢明だけれど...


「オレが引きつけるから急げよっ」

「私も逃げるだけならお役に立てますよ」


ラファエルと戦場を離れていたレノが矢面に立つ。

気がそれている間に瓦礫を払うが

一番下にいるカレンは苦しそうに息をしていて

魔力が段々に弱まっていくのを感じる。


「レオナルド早くしろっ!うわっ」


バァァァァンッ!

グルゥゥ...ダッダッダッダッダ.....


ダンッ!ダンダンッ!!


ゴーレムはラファエルを弾き飛ばすと

ミッチェルさんの砲撃を気にも留めずに

まだ救出の叶わない俺達へ向かって走り出した。

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