144.怒りを強さに変える。
(なんだただの変態かと思った...ふぅ)
俺は見知らぬ男に強化魔術をかけられたらしい。
とりあえず色々と無事でよかった。
「なに安心してんだよレオナルド!来るぞっ」
ダァァァン...ダァァァン...
ズダダダァァァァァァン!!!
後退しながら攻撃を避けるが
土煙で視界が遮られて姿を捉えられない。
これじゃあ反撃しようにもー
「ホワールウインドッ!」
ブワァァァァン!
その聞き慣れた声と同時に突風が砂を蹴散らした。
俺を見つけて嬉しそうに大きく手を振るカレン。
「やっと見つけたよ〜!」
ゴーレムは立ち止まってグルリと方向を変えると
カレンめがけて走り出した。
のんきに手を振っている場合じゃないって!
ダァァァン...ダァァァン...ダァァァン...
「逃げろカレンッ!」「んぅ?」
慌ててよく伸びる剣を力一杯に振り抜く。
肩の辺りを軽く擦っただけだったが
ターゲットは即座に俺へと切り替わった。
でも他の冒険者が一緒に戦っているから
ここは人海戦術でいけば...
「少年、ここで時間稼ぎを頼むっ!」
「俺達は街まで戻って加勢を呼んでくるからな」
(えぇ...それって実質逃げるってことじゃ...)
「じゃあ気を付けるんだぞっ!」
「いや、ちょっとま...」
撤退するパーティーの姿を見て
続々と他の冒険者達も戦場から離脱する。
(マジかぁ...大人汚いな)
加勢が来るとしても街からでは時間がかかるし
その前に被害が拡大してしまうというのに。
「どうすんだレオナルド」
「どうしようレオ〜」「どうって...」
シュウィン...ドァァァン!!
森の中から一直線に光の矢が飛びだして
ゴーレムの胸に直撃した。
しばし活動を停止するゴーレム。
「ナイスミッチェルさんっ!」
「あいつちゃんと仕事してんだな」
姿は見えないけれど的確な援護はありがたい。
今のうちに奴の弱点を探らなければ...う〜ん...
「弱点なら載ってたぞ。脛だってよ」
パチパチ...カチ
昔とは時代が違うのである。
知りたい事はまず端末でログ検索をするという
スタイリッシュな発想はさすがラファエル。
「そうだな。私も彼の言う通りだと思う」
「あなたはさっきのー」「恩は返させてもらうよ」
関節をグキッと荒治療されていた冒険者だ。
他のメンバーは先に逃げて残ってはいないが
彼は一人ここに留まり共に戦ってくれると言う。
「じゃあオレ走り回る役な」
「うん。カレンは足留めと砂払いをお願い」
「わかったよ〜!」
俺と冒険者は脛をひたすら狙って
ゴーレムを横倒しにするのが役割だ。
「私はレノだ。よろしく頼むよ」
「レオナルドです。.....ゴーレム来ますっ!」
ズダダダァァァァァァン!!!
左右に避けて事なきを得たはずなのに
腕を抱えてうずくまるレノ。
「ぐぁ...腕があぁ....」「レノさんっ!」
「ったく...心配すんなレオナルド。ほいよ」
グギッ!「アグッ...ぐあぁぁぁぁ!」
ラファエルによるとただの脱臼し易いタイプで
最初のも特に攻撃を受けたワケじゃないらしい。
なんだ紛らわしいなこの人。
「ふ...ふぅ...大丈夫だ。た...たたかえる」
「お気持ちだけで十分心強いです」
とは言いつつ事実上の戦力外通告だ。
度々これでは危険極まりないから
ミッチェルさんと一緒に後方で休ませる。
さあ、これからどうしようか...
ボソッ...
「感情を込めるんだよ」
向かい側の木陰に人影が見える。
(この声はさっきの変態魔術師っ!)
「そうそれ。怒りは強いエネルギーだ」
「嫌な事を思い出して剣を振り抜いてごらん」
かけられた強化魔術の発動方法がそれなのか...
だったら思う存分発散してやるっ!
「この...危険人物めがぁぁぁぁぁ!!」
シュンッ...ザクッ!!
グガガァァァァァ!!!!!
「風呂入ってくんじゃねぇこの変態っ!!」
シュンッ...ザンッ!
ドゴォォォォォン.....パラパラ.....
俺の攻撃力とは思えないほどの破壊力で
巨大なゴーレムが片膝をついた状態に。
「いやはや...キミ相当なトラウマ持ちなんだね」
「ここまで強力な怒りはひさしぶりだ」
フォンフォンフォン...
「そうだな。ひさしぶりであるな神官よ」
「げぇ...こんなところに女神ぃ...」
カランカランカラン...
ロープを伝って降りてきたのはイルジオネ。
上空にはエマの飛空挺がホバリングしていて
そこにはレイナとコトリだけでなく
逃げ遅れた人達の姿もある。
スタッ...
「私も戦うぞレオナルド」
「エマさんっ!....じゃなくてエマ!」
「この先はもう無人だ。思う存分暴れるぞ」
タッタッタッ.....
ガァン!ガァン!ガァン!ガァン!
先陣を切って飛び出すエマ。
防具ではない攻撃用のガントレットを付けて
何度も岩にハードパンチを繰り出す。
「あれはハーフエルフか...実にいい...イデッ!」
「お前には向こうで話があるぞ。来い」
俺達が攻勢をかける中
イルジオネは“神官”と呼ぶその男を連れて
その場から離れていった。




