143.危険な時は大声を出す。
ダアァァァァァァンッ!
商人達は泣く泣く店をあきらめ
抱えられるだけの荷物を抱えて一目散に逃げる。
俺は雑踏の中でカレンとはぐれてしまったが
とりあえず轟音のする方向へと急いだ。
グォォォォォォ!!!
ダァァァン!
現場に近づくと大きな岩の塊が
飛び跳ねるように体を回転させて
フル装備の冒険者達に体当たりしている。
「相当ヤバそうだなレオナルド...」
この先へ進むという選択は
自ら戦場に飛び込むのと同義であるが
遅かれ早かれ戻っても追いつかれるだろうし
誰かが退治しなければならない事案だ。
ジャキ...ジャキ...
「攻撃を避けるなら軽い方が良さそうですね」
とか言いながらフルメタ武装のミッチェルさん。
彼は遠距離攻撃のスペシャリストだから
ここから動かずに後方援護するつもりなのだ。
「来ねぇのかよっ!」
「大丈夫ですよ。見守っていますので」
手を振って笑顔で送り出されたが
俺はもちろんラファエルも内心ビビっている。
やだこわいどころの話ではない。
だってあれは...
「どう見ても上級クラスだよね...」
「だな。しかも特上って感じだろアレ」
特上がここに居る理由として考えられるのは
前にあったみたいなシステム上のバグ
もしくは力量の無い冒険者が深追いし過ぎて
ここまで連れて来てしまったかのどちらかだろう。
♢戦闘の最前線
ザンッ!ダダァァァン!
「ぐぁ...腕が...おまえら先に逃げろっ!」
前線で戦っていたパーティと思わしき集団。
そのリーダーと思わしき男の腕はぐにゃりと曲がり
痛々しい姿でうずくまっている。
「俺が囮になるからラファエルはー」
「わかった。アイツの腕治してから合流だな」
左右に分かれて一気に敵前へ飛び出すと
俺は岩の塊を誘うように目の前に立ちはだかり
ラファエルは負傷した男を抱えて木陰へ。
グギッ!「アグッ...ぐあぁぁぁぁ!」
痛そうな音とともに大きな悲鳴が上がったが
今は自分の身を案じた方が良い。
グッグッグッ...
ドゴォォォォォンッ!!!
♢即席の寄せ集めパーティー
先ほどの男が率いているメンバー以外にも
その場で合流した他の冒険者たちの姿もあり
一緒に魔物を取り囲むように集まって
次々と攻撃を仕掛けていく。
それは遠目にはただの岩の塊だったが
しなやかな動きとパワフルな攻撃力は凄まじく
見た目は岩で出来た人形のようだ。
(あれはゴーレムの一種だろうな)
魔法で攻めるよりは削る方が効いてるようだから
俺も盾をかざしながら右手の剣を振り抜く。
ズダァァァァァン!
「どこ狙ってんだ危ねぇだろっ!」
「す、すみませんわざとじゃ...」
防具の軽量化ばかり気にしていたから
あの“伸びるだけの剣”を外すのを忘れていた。
(でもこれなら近付かなくても...おぉ!)
シュザンッ....ザクッ!!
ボロボロボロ...
これといった特性は伸びる以外にないのだが
魔物の体に少しだけダメージを加えることに成功。
それに当たった時の威力はそこそこある。
「すげぇ...それ伸びた時に攻撃力上がんだな」
治療が終わり合流したラファエル。
彼の推察では強化特性が発動したのでは...との事。
簡易判定では普通の数値だったのに中々使える。
「魔法も魔術も効かないみたいだよ」
「肉弾戦か...しんどいなコイツ」
体当たりするだけの脳筋タイプだけど
その巨体から繰り出す一撃をまともに喰らったら
腕が外れるだけでは済まされないが...ん?
「あぁ...ふぅ...キミ、ちょっといいかな」
「うわっ!ちょっとな...やめてくださいっ!」
「大丈夫。怪しい者じゃないから...」
突然肩をたたかれて振り向くと
知らない男がギュゥっと抱きしめてきた。
日頃から危険人物の回避術を心得ている俺でも
この状況ではなすすべもなく...
「暴れないですぐ終わるから」
「何するつもりなんだよこの変態っ!」
ガンガン!ガンガン!
慌ててラファエルが助けようとするが
結界か何かに弾かれて近寄れない。
(詰んだ...まだ彼女だって出来たことないのに...)
スゥ.....
“生命とは太陽の輝き”
“その力は脅威であり偉大なる栄光”
“まあ、詠唱はこのくらいにしてっと...”
シュウゥゥ...
ズワアァァァァンッ...キラキラ...
光が渦になって俺の身体を取り囲むと
空へと消えていった。
それと同時に結界のようなものも解かれー
「いいかげんに...離れろよ変態っ!(ドンッ)」
ボゴォォォーン!ダスン...
「ぐはっ...どうやら上手くいった...ようだ..」
倒れながら親指を掲げる変態。
俺は軽く突き飛ばしただけなのに
大袈裟すぎるほど遠くに吹っ飛んだ。
確実に何かされたっぽい。
「もしかして今のは強化魔術...」
「イテテ...じゃあボクはそろそろ行こうかな」
男はその場から立ち上がると身を翻し
颯爽と森の中へ消えていった。




