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142.都合良く信じるもの。

“Grand Challenge System Assign...”


ブウォン...シュルッシュルッシュルッ


投げ入れた石の光でテントの内側が照らされると

動物の頭蓋骨や爬虫類の剥製が浮かび上がった。

これも占いの道具(装飾)だろうか...こわい。


「黒魔術師の工房のようだな」

「あーそれ、よくできたレプリカなので」


オカルトな雰囲気が漂う中

回転していた石はパチンと砕け散った。


ボァン...“マジックソード”


金色に輝くワケでも高速回転するでもなく

いたって普通のモーションだったが

なかなか良さそうな名前をした中型の剣だ。


「コレが栄光の剣なのか...」


さっそく装備して端末のパラメーターを確認する。

マジックソードと言うだけあって

攻撃力はもちろん魔力もきっと高いはずでー


「どうしたレオナルド?」

「なんだか...至って普通の数値が...」


端末の判定はあくまでも推定の値だから

絶対に正確だとは言い切れないのだけれど

それにしても誤差が半端ないな...うん。


「ガチャではないのかもしれません」


なにを今更なコトをいうロリエルフ(妹)は

他人事のように自らが淹れた茶をすすった。

(ぬぅ...俺の貴重な石なのにぃ...)


「どうか疑わないであげてくれレオナルド」

「コトリは嘘はつかない。商売はアレだけど...」


商売がアレなのは問題かと思うが

彼女が嘘をついているようにも思えない。


「ううっ...見えます...その剣で栄光を掴む姿がぁ」

「だってさ。オレが受けてやるから来いよ」


コトリが新しい既視感を感じたらしく

俺は試しに外で剣を振ってみることにした。



♢占いテント脇の森


万が一のことを想定して人が居ない場所に移動。

鑑定していないアイテムほど怖いものはない。


「私達もログでも調べてみるわ」

「ありがとう。じゃあ離れていてね」


カシャン...


重くはないな。

かといって軽くもないし...極めて普通。


「じゃあいくよラファエル」


スゥ...ガシンッ!ガシンッ!


「遠慮は要らねぇからなレオナルド」


刃を交える音が反響する。

少しずつペースを上げて実戦モードに。


「隙ありだっ!」「くぅ...そっちこそっ!」


ラファエルの容赦無い一撃をギリギリで回避して

俺は大きく剣を振り抜いた。


ズサァァァーンッ!!!


「だ...大丈夫ラファエル?」

「ひぃ...ヤベェな。間一髪だったわ」


ラファエルの頭をかすめて

樹木には剣が鋭く突き刺さった跡だけが残る。

俺の所からは距離があるし彼も後ろに避けたはず...


「いま確実に伸びましたよね」

「ぐぅ〜んってなってビューンだったよ!」


側から見ていたミッチェルさんとカレンの解説では

振り抜いたと同時に剣先がグンと伸びたらしい。

あと数センチずれていたらと思うと背筋が凍る。

(親友を串刺し肉にするところだった...)


「わかったわよレオナルド!その剣はー」

「いま体感したばかりだよ(苦笑)」


ログの情報によればー

マジックソードはマジシャン用の剣であり

伸縮する特性があるそうだが

それ以外に特筆するようなことは無いという

まさに魔法/マジック違いの代物。


「見世物用にしては不必要な鋭利さだけどな」

「リアルさは大事ですよ。営業的に」



♢それから一時間


「はい。間違いなく運命的な出会いです」

「これからも困難を乗り越えていくでしょう」


女子達はコトリに占ってもらっては

キャッキャと嬉しそうにはしゃいでる。

姉の知り合いだからタダでみてくれるらしい。


「あぁ...やはり運命であるのだなミッチェル」


聞いている限りでは当たり障りのない言葉を

ただただ羅列しているだけのようだし

彼女は“既視感使い”(デジャバー)であって占いの方は適当に...


「そんなこと全然構わないわ」

「みんな程々に都合良く信じているだけだから」

「へぇ...そうなんだ(女子ってわからないや)」


カレンも占ってもらったみたいだけれど

内容は恥ずかしいからと教えてくれなかった。

努力すれば報われると言われたようで

モチベーションが上がった様子。

なるほどそういったプラシーボ効果もー




ダァァァァァァァン!!!


「キャァァァァ!誰か!誰か助けて!」




突然遠くから女性の叫び声が聞こえて

俺達は直ぐにテントから飛び出した。

フレイア山の入り口付近から煙が立ち上り

何かがこっちへ向かって来る。


「とりあえず行ってみよう」

「レイナはエマと一緒にここで待ってて」


一人だけではない。

何人もの悲鳴と建物が破壊される音がする。

ここの屋台村で働いているのはただの商人だ。

彼らには戦闘のスキルだけでなく

回避する能力ですら優れているとは言い難い。


「はぁ...はぁ...ああ逃げてっ!」

「来るわ...もうムリ...助からない...」

「落ち着いて下さい。この先で一体何が」


逃げてきた人達はそう繰り返すばかりで

一目散に来た道を戻って行く。

その中には取り乱す冒険者の姿もみられ

ただ尋常じゃないことだけが伝わってきた。

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