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141.雰囲気は大事。

♢フレイア山麓


広い芝生の上へと降り立ったが

飛空挺の底は地面に触れることなく

ホバリング状態で停止している。


「よっと。あ〜空気がうめぇ」

「標高が高いから少しだけ肌寒いわね」


耳を澄ませば獣の鳴き声やー


ガヤガヤガヤ...


野鳥の美しいさえずりも聞こえ.....ない。


ザワザワザワ...


「さあ皆さん寄ってらっしゃい見てらっしゃい」

「古今東西あらゆる品を一堂にっ!」


静けさというよりは喧騒。

喧騒というよりは活気溢れる祭り会場だな。


「イメージと違うでしょう。もはや観光地ですよ」

「さすがに奥地にまでは来ませんけれど」


商人は何処にでも現れるものであるが

最近は危険区域ギリギリの所まで顔を出しては

冒険者相手に食料や宿泊施設を提供している。

もちろん割高な料金で。


「レオおいしそうだね〜!」

「はいはい。お金がないから一本だけだよ」


串焼きの美味しそうな香り。

屋台メシは好きだけれど今回の目的は冒険。

決して遊びに来たわけではない。


(はぁ...俺は匂いだけで我慢しよう)



♢屋台村の一番端


様々な誘惑に心を奪われながらも先へ進むと

怪しげな黒いテントが建っていた。

客が数人並んでいるから宿屋ではなさそう。


「見えます...見えますよ...そこのあなた」


(こっち見て手招きしてる...やだこわい)


俺達は華麗なスルーで横切ろうとしたが

ミッチェルさんとラファエルが店の前で足を止め

立看板を食い入る様に見始めた。


「ガチャ...予知能力...こんなことが本当に...」

「レオナルド、お前はこれマジだと思うか?」


(なになに、ガチャ占い?神引き代行?)


ガチャの当たりを予知するのに500コイン。

代わりに引いてくれるのが1000コイン。

喜びの声や感謝の手紙も横に貼られているが

より怪しく感じるのは俺だけだろうか...


「お待たせしました。次の方」


"占いの館・神秘のコトリ"


机の上には宝石やタロットカードが整然と並らび

外套を着た小柄な女が客を椅子に座らせると

その中から宝石を一つ選ばせる。


「レッドアイ...燃え上がる恋の炎...未練」

「別れた方が良さそうです。はい次の方どうぞ」


早くここから離れたいのだけれど

占いにはうちの女子達も興味津々の様子で

その場を動こうとしない。

そもそも俺はオカルト的な話になんて興味はー


「外れたら半額返金保証と書かれていますし...」

「いや、ハズしても半額取られるって事だろコレ」


ラファエルは冷静だけどガチャ廃の彼は乗り気で

さりげなく列の後ろに並んでいる。


「腰の痛みですか...それは専門外なので病院へ」

「はい、次の方どうぞ」


そうこうしている間に順番が回ってきてしまい

俺達は怪しげなテントの中へ。


「あぁ...見える...見えますよ」

「栄光を掴み取る貴方の姿がっ!」


店の入り口はロープで閉じられ

女はミッチェルさんでなく俺を指名すると

宝石を選ぶように言ってきた。


「俺は付き添いだからやらないです」

「いえいえ...お代は頂きませんのでどうぞ」


(これけっこうヤバめのやつだ...)

密室に閉じ込めて心理的不安を煽り

無料と言いつつ後に高額な商品を購入させる

典型的な詐欺に違いないっ!


バサッ...よいしょっと


飛空挺を停泊させに行っていたエマが

テントの縄を外して中へと入ってきた。

(逃走経路は確保できたから隙を見て逃げよう)


「みんなここにいたのか。探したんだぞ」

「エマちょうどいいところにー」


頭に被ったフードをスルリと下ろす占い女。

特徴的なピンと尖った耳に女神のような白い肌で

尋ねなくともエルフ族だと分かる。


「久しぶりだねお姉ちゃん」


(.....お姉ちゃん?)


「紹介するよ。私の妹で“自称占い師”のコトリだ」

「姉の知り合いとは知らず失礼しました」


ペコリと頭を下げてから外に出て

まだ並んでいた客を帰した。


「今日はもう店じまいします」

「お茶を淹れるので寛いでどうぞ」


エマと違って純血っぽい耳をしているけれど

エルフにしては背が低いからか随分と幼く見える。

まさかロリエルフ姉妹だったとは...


「俺はてっきり詐欺師なのかと」

「良心から声をかけたのに酷いです」

「この子は少し先を見ることができるからー」


彼女の能力は正確には予知能力とは違い

最近よく聞く“既視感”(デジャヴ)というやつだ。

時間軸が人より少しズレて見えているらしい。


「ネタばらしは営業妨害だよお姉ちゃん」

「じゃあこの宝石とかタロットは?」

「飾りです。それっぽさは営業的に大事なので」


見えたものを伝えるだけで占ってはいないらしい。

ある意味詐欺師で間違いないと思う。


「でも俺がどうとか言ってたのは...」

「嘘ではありませんよ。詳細は不明ですが」

「強く当たった後に栄光を掴む姿が見えました」


当たる...掴む...ガチャを意味しているのだろうか?

カレンに節制を強いている手前回し辛いが

そこまで自信満々に断言されると気にもなる。


「結局どうすんだレオナルド」

「い、一回だけ試してみようかな...」


俺はポッケから石を取り出すと

テントの中心に描いた陣の中へと投げ入れた。

挿絵(By みてみん)

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