14.乙女心は複雑なものだ。
毎晩ウェザーは洗濯をする。
あれから彼女は仕事の日以外でも制服を着ている為
夜洗ってまた朝着る感じだ。
乾かなそうな気もするだろう。
そこはまだレベルの低い彼女が唯一使える魔法
“コンディショニング”によって乾燥を上げる事で
見事に朝までには乾いてしまうのである。
(しかし俺の喉は毎朝キリキリと痛むのであった...)
今日は仕事帰りに伯父の屋敷へと向かった。
フィオから晩御飯のお誘いが来たからだ。
ウェザーは仕事中も終始にやけていた。
今もそうだ。なんだか浮き足立っている様子。
「なに。どうかしたの?」
「んー?....な〜んでもないっ!」
わかりやすい性格だな。
間違いなくこれから何かあるのだろう。
カンカンカン.....
ノックするとゆっくりとブロンズの扉が開いた。
「こんばんはレオナルド。時間通りでしたね」
「どうぞ中へお入りください」
成功者の家には広い食事専用の部屋がある。
もちろんこの屋敷も然り。
そしてシェフを雇うのが常だ。
「レオナルド様、ようこそお越しくださいました」
魔術料理のエキスパート、クライフさん。
こんな堅苦しい仲ではないが
いつもワザとおどけて畏まる。
「先生、私はこれで外れます」
「あいよ。もうこっちも片付いてるし」
フィオが先生と呼ぶのは料理の師だからで
日々お菓子や料理を学んでいるのだとか。
「レオナルド、ウェザーを借りてもよろしくて?」
なぜか彼女まで畏まった言い方をする。
しかも謎の笑みを浮かべながら...
訳も分からぬまま二人は去って行った。
「なんなんですかね...あれは」
「乙女心とはなぁ〜複雑なもんなんだよ」
クライフさんはそう言って厨房へと戻り
俺は夕食の皿を並べるのを手伝った。
ドンッ!バタンッ!
「諸君!!今宵の宴を始めようじゃないか!」
玄関の方から無駄に大きな声が聞こえた。
伯父が帰ってきたようだ。
「マスター、まずは着替えてきてくださいね?」
「面倒だからこのまま...イデデ...わかったって...」
遠くでフィオに怒られている声が聞こえる。
いい年して何やってるのだろうか...
「今フェルナンドも行きますので」
「先に席でお待ちくださいね」
彼女は部屋に一度顔を出すと
そう言い残してまた出て行った。
食事の準備も整い
あとは二人が来るのを待つだけなのだが.......
「お待たせしました!!」
声と共に部屋の扉が開くと
素敵なドレスを纏った二人がいた。
「これは一体...」
「イイね!イイね〜!女神っぽくて!!」
いつもと違う姿に俺は目を丸くしてしまった。
伯父のはいつものテンションだが。
「ウェザーさんがデザインして私が作りました」
(俺が調べている間にそんな事を...)
魔装束のない事を相当気にしていた彼女の為に
生地からドレスを仕立ててくれたのだ。
フィオは本当に優しいお姉さんだな。
「さあ、いただきましょうか」
ウェザーがドレスを汚すまいと慎重に食べている。
ぎこちない所作が可笑しくて皆で笑った。




