13.何事もタイミングが大事。
この間の続き。
帰り際に伯父に言われた事を
俺はまだ気にしていた。
「まだ名前決まってないのかぁ...」
「早くしないとタイミング逃すよぉ〜?」
(なんだその婚期逃すよ的な言い方は...)
これでも色々と考えてはみたのだが
どうも“ウェザー”という呼び方に慣れつつあり
しっくり来る名前を思い付けなかった。
確かにタイミングを失いつつある。
このままではいけないと思い
俺は時々伯父の屋敷の隅にある資料室に通っている。
その間の彼女は中央にあるガーデンで
フィオと“ふたり女子会”をして待っていた。
時折とても楽しそうな笑い声が聞こえる。
そんな時はつい調べ物の手をとめて
ガラス越しの彼女たちの横顔を眺めてしまう。
なんだかとても仲良くなった様子で
年齢が少し違いの姉妹のようだ。
フィオはまだ慣れないウェザーの事を
何かと気にかけてくれている。
こんな優雅なお茶会を“邪魔しそうな伯父”もいるが
彼は大人しく部屋で溜まった仕事をこなしているようだ。
なにせ彼女のクラスはウォーリア。
精霊同士の麗らかな午後を邪魔をしようものなら
きっと戦女神の鉄槌を受けるであろう。
フィオもかつては冒険者だったそうだ。
総勢五十名ものパーティの総指揮を任され
幾多の戦局を乗り越えたのだと。
彼女はそれ以上詳しく教えてはくれなかった。
完全無欠の女神は現在
原稿のチェックやスケジュール管理
家事手伝いなど、違う意味で忙しく戦っている。
指揮者としては間違っていないのだが...
不満に思わないのか聞いたことがある。
伯父は戦になんて興味がない人で
争い事など極力避けて通るタイプだから。
思えばとても不躾な疑問であったが
彼女は窓の外を眺めながら
優しい笑顔でこう答えてくれた。
“戦う事だけが喜びであると思っていた。
でも今は本を読んだり、お菓子を作ったり
美しい庭の手入れをしたり。
そんな日常がとても愛おしい”ーのだと。
日も陰ってきたところで今日はもう帰る事にしよう。
結局また良い名前を見つける事が出来なかった。
伯父が考えると言ってくれたが
俺とウェザーは丁重にお断りしておいた。
「何を話していたの?」
「ナイショだよ〜」
帰り道。
いつもそう聞くと内緒だの秘密だのと言っては
楽しそうにスキップしながら笑っている。
ふたりだけの女子会はもう暫く続きそうだ。




