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131.個性的な彼女たち。

チラッ...シュタタタ...


積荷に隠れている売り子と思わしき影は

何故かこちらを警戒しているようで姿を現さず

ヒソヒソと話し声だけが聞こえてきた。


「(こちらに来てお客様にご挨拶なさい)」

「(あのねあのね...きっとそうだよ...そうそう.....)」


見かねた褐色美女がそれらを呼びに行くが

少し言葉を交わしてから彼女だけ戻ってきた。


「ごめんなさい。恥ずかしいみたいで...」

「女神級なんて滅多に拝めないですものねぇ」


カレンとイルジオネを珍しそうに見る商人。

裏に隠れていたのは彼女が連れている精霊であり

同類なだけあって女神級がいると勘付いたようだ。

(特に元女神のオーラは半端ないし)


「余に姿を見せぬなど不敬であるな」

「..........!?」「...........!!」


シュタタタタ...ピタッ


それを聞いたイルジオネが面白がり

揶揄うようにワザと上から目線で威圧すると

子供の背丈ほどの精霊が慌てて飛び出して来た。

なんて意地の悪い女神様なのだろうか。


「素直で可愛いらしい子供達ではないか」

「こんなに隠れていたんだね」


横一列に並んで一人ずつ自己紹介をしてくれた。

緊張して固まっているのがストーンで

そっくりな二人はミラーという双子の精霊だ。


「そしてぇ...サニーちゃんですのだ!」


(.....変なヤツ混じってるな)

それはさて置き、褐色美女の件だが

この界隈を新たに拠点とした北東からの商人で

ステインベルグのアリッサと名乗った。


「並べたって買わないわよ」

「補給は大事ですわよ〜? 真水も今なら半額で」

「見るだけならタダなんだぞ!」


まあ見るだけならと思い物色していると

ガチャのレア率が上がるという怪しげな壺や

幸運の当たり札などなど...

ついつい欲しくなる代物がいっぱい。


「無駄遣いするつもりじゃないでしょうね?」

「信じることは勝利への近道とも言いますので...」


ミッチェルさんは当たり札を二枚購入。

彼はガチャ理論派なのだと思っていたが

案外そうでもなさそうだ。

さすがに壺は買わなかったけれど

俺も騙されたと思って一枚だけ買ってみた。


「あ...あの!サインくださいですよ!」


アリッサがレイナと交渉を続ける中

売り子の一人がキラキラと目を輝かせながら

イルジオネの元にやって来た。

(サインってあのサインだよな...?)


「良いぞ。どこに施そうかのう」


なんてミーハーなのだろうかと思ったら

いわゆるソレではなく女神属の印の事であり

身体に刻印するとお守り程度に効能が.....

あるとかないとか。


サッ...サササッ...

空を切るように指を走らせると

格好いい朱色の紋様が浮かび上がった。

ちょっと羨ましい。


「ありがとうでしたっ!」「サニーいいなぁ」

「わ...わたしもお願いします女神様」


憧れの先輩...もしくはアイドル的な感じなのか

刻印された箇所を見せ合っては

嬉しそうにキャッキャとはしゃいでいる。


「あの子達も女神になりたいんだね〜」

「カレンも目指しているの?」「もちろんっ」


妖精は精霊になりたい。

ただの精霊なら女神級の精霊に。

そして本物の女神になる日を夢見るのだが

もちろん全員が女神になれる訳ではないため

倍率は相当に高いらしい。


「サインくださいですよ!」

「私のでいいのかなぁ...」「描いてあげなよ」


シャシャっと手の甲に印を入れると

褐色の精霊は飛び跳ねて喜びを表現したが

カレンが何の女神級かを伝えた途端に

ガタガタと震えながら失神した。

(大丈夫なのかコイツ...)


「やっちゃったねサニー」

「やらかしたねサニー」

「この子お日様の精霊なんです」


正確には晴天の精霊サニー。

気象を操るウェザーは彼女の上級精霊であり

知らずにタメ口をきいてしまったのだから

泡を吹いて倒れるのも無理はない。


「サニーちゃんったら...」

「こう見えて一番人気のある売り子なのよ」


アリッサが来て母親のように抱きかかえると

日陰に吊られたハンモックの上に寝かせた。

面倒な個性が暴走している精霊だが

バナーヌのたたき売りでは見事な歌と口上で

客の心とキャッシュを鷲掴みにするらしい。


「とりあえず今日は撤収しますわ」

「そうしてくれると助かるんだけど」


レイナもなんだかんだ言いつつ

不足していた食材を渋々買い足していた。

値段は市場価格より割高なのは仕方がないが

足元を見られているのは間違いなさそう。


「それでは皆様またお逢いしましょうね〜♡」


手を振りながら去っていく商人達。

寝る前にこっそり例のお札を試してみたが

結果は見事なまでに惨敗だった。

thanks挿絵(By みてみん)

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