126.別れの挨拶を。
フェスティバルガチャ...
結果から言わせてもらえばアレだ。
内容が渋いとか話が違うとかなんとか。
まあ、それはいつもの事だけれど...
「いや〜参ったよなレオナルド。マジ爆死」
「そうだねラファエル。俺も散々だったよ」
シーン...
祭りも終わり城に戻った俺達は
この気まずい空気に戸惑いながらも
用意されたシーラル最後の晩飯を頂いている。
「(なんで怒ってんだあいつ)」
「(わからないけど喧嘩したらしいよ)」
ダンッ!......バタンッ!
レイナはほとんど食べないまま部屋を出て行ったが
クロードさんは気にせずスープを口に運ぶ。
「美味いな。さあ、君達も遠慮せず食べなさい」
「は...はい。ありがとうございます」
シーンと静まり返る食卓。
ぎこちない会話も長続きすることなく
祭りで色々食べたから食欲も湧いてこない...
この二人は例外であるが。
ガツガツ...ガウガウ...
「食べないの?すっごく美味しいよ〜」
「ガウゥ〜!」「(オマエら空気読めって!)」
天気は読めても空気は読めないようで
大きな海牛のステーキにかぶりつくカレン。
「良い食べっぷりですな。ハッハッハ」
「このお酒も中々いけるぅ〜」
(調子に乗って酒まで飲んでるし)
見た目と違って年齢はアレだから問題ないけれど
そんなに飲んで大丈夫なのだろうか...
「あっち(亜空間)にお酒うぁないからさぁ〜」
「ひっさしぶりだよー!くはぁ〜」
俺の家には料理酒しか置いてなく
酒場でもケニーに飲ませてもらえなかったから
二年半ぶりの美酒に酔いしれている様子。
「そういえばレイナがいないよぉ〜?」
「(こらカレン、余計なこと言わないでー)」
酒に強いとかなんとか前に言っていたけれど
確実に酒にのまれている女神は
「あ、そうだ!王様と喧嘩してるんだったぁ〜!」
勢いだけで余計なことを言い放った。
一瞬で室温がグンと下がった気がする。
「こ...これ美味しいねラファエル」
「おう...なかなかイケるよな」
「シーラルでよく獲れる魚なんですよ。ハハ...」
シーン.....
ミッチェルさんのアシストも虚しく
再び静まり返るテーブル。
メイドのお姉さん達もビクついている。
「あ...ええと...デザートをお持ちします...(ビクッ)」
「熱い珈琲も頼む。ブラックでだ」
元とはいえ王様だったクロードさんは
部下でさえ声をかけられないほどの迫力で
葉巻の煙をフゥっと吹き出した。
「ねぇ、なんで喧嘩しちゃったの〜?」
少しも動じない女神がグイグイと絡んでいく。
これが王政だったなら俺は連帯責任で打首か
よくて投獄といったところだろうか。
「すみません...ほら、カレン席に戻って」
「レオも気になるでしょ〜?ヒクッ」
酔っ払いの失礼には怒っていないようで
クロードさんは深いため息をつくと
事の経緯を俺達に話してくれた。
「ふぅ...申し訳ない。居心地が悪かったかな」
「まったく誰の性格に似たんだ(ブツブツ)」
レイナが不機嫌な理由は渋いガチャのせいではなく
それにつぎ込んだ額を咎められたわけでもない。
どうやら俺達の借りる船に原因があるようだ。
「ウェスターを同行させるつもりだったのだがな」
「それをお嬢様が納得されなくて...」
“一番優秀な航海士をって言ってたじゃない”
“私なら風を読めるし操縦だってー”
「優秀には違いないがな。私は反対だ」
「クロード様も言い方が...」
「親としての正論を言ったまでだ」
俺達にはなにも言っていなかったのだが
レイナは一緒についてくるつもりだったようだ。
まだ人数が少ないパーティーだから
レイナが仲間に入るのは大歓迎だけれど...
「島で生まれた者は島を出るべきではない」
「外の世界に憧れているだけだ」
言っても聞かない彼女のために
レラントからシーラルまでの航海や
危険がないイベントへの参加を認めてきたが
海を渡れば魔獣や魔物とも対峙するだろうから
父親としては許すわけにはいかないのだ。
「ただでさえ可愛い一人娘だからな」
「世継ぎの問題もありますから...正しい判断かと」
コンコンコン.....
食後にレイナの部屋へ。
泣いているのか怒っているからなのか
頑なに扉を開けてくれない。
「最後の夜だからみんなで遊ぼうよ〜!」
「そうだぜ。仲間なんだからさ」「ガウガウ」
しばらく扉の前で待ったが応答はない。
明日の準備もあるし出発は早朝になるから
諦めてゲストルームに戻ることにした。
「おやすみレイナ。また明日」
翌朝まだ薄暗い港に煌々と船の灯りが輝く。
少し大きめの小型クルーザーは設備も整っていて
初心者が使うには十分すぎるほどだ。
(...結局会えないままだったな)
朝日が昇る頃には荷を積み終わり
見送りに来た町民や城の人達と別れの挨拶をしたが
その中に彼女の姿は見当たらなかった。




