125.郷にいれば郷に従え。
♢翌朝のシーラル
結局気絶したまま朝まで寝ていた俺は
祭りを知らせる花火の音で目を覚ました。
「早く着替えろよレオナルド」
体力はラファエルが白魔法をかけてくれたし
魔力も栄養と睡眠で半分以上は回復した。
どのみち明日出発する予定だったから
今日は祭りを楽しみながら静養する予定だ。
コンコンコン...
「おまたせラファエル。準備できたわよ」
「...ってまだパジャマのままなワケ?」
俺の寝ぼけた姿に呆れるレイナ。
それを見てケタケタと笑うラファエル。
「いま起きたばかりなんだぜ。ウケる」
あの遅い昼食を食べた後に倒れてから
起きることなく半日以上も眠り続けるなんて
疲れていたとはいえ自分でも驚きである。
「魔力風邪とかじゃなくて良かったわ」
「気分はどう?」「.....お腹が空いた」
晩御飯を食べていない俺は
空腹でいまにも死にそうな気分である。
「お祭りの屋台でオススメのお店があるの」
「早く着替えて。カレンも待ってるから」
バタンッ...
慌ただしく去っていったレイナ。
てっきりカレンも一緒かと思っていたが
ミッチェルさんと先に出かけたらしい。
(それにしても腹減ったな...うぐぅ...)
昨日貸してもらったシーラルの服に着替えて
三人でシーラルの祭りへと繰り出した。
「どうしてラファエルは普通の服なのよ」
「似合わねーしさ」「お祭りは海被が普通なのに」
彼女の言うように町の人は皆この服を着ている。
昨日の今日で外国からの客も来ないから
私服を着ているラファエルの方が浮いている感じ。
「うわっ...もしかして超アウェーじゃね?」
「だから言ったのに」「マジかぁ...」
たしかに似合ってはいなかったけれど
郷にいれば郷に従えということだ。
♢屋台のカユ屋
朝食にと連れてこられた屋台。
ライスを煮たドロドロの液体が“カユ”で
見た目には食欲をそそられる要素がない。
「さあ、食べてみて」
(ふぅふぅ...はぐ...あ、美味しい)
濃厚な旨味とコリコリとした貝柱がアクセントに。
これはなかなかイケるな。
「ホタチの出汁が効いてるでしょ」
「本当はこの列に並ばなきゃ食べられないのよ」
店の前から通りの角まで続く行列。
みんなこの海鮮朝カユが目当てなのだけれど
俺達は並ばずに中へと通されていた。
「キミは昨日のヒーローだからね」
正確にはミッチェルさんが倒したのだけれど
その場で派手にやり合ったのは俺だから
「これ玉子焼きよかったら食べな」
「あ...ありがとうございます」
「なにいってるのさ。感謝するのはこっちだよ」
まるで勇者のようなVIP扱いになっている。
なんだか申し訳ない気もするが...いい気分だな。
「次はここのイカ焼きね」
「まだ食うのかよ」「もちろんっ!」
他にも食べさせたいものがあるからと
カユ屋を出た後もいくつかの屋台に立ち寄った。
基本的には魚介系が多いけれど
どれも鮮度が良いからか抜群に美味い。
(それにしても女子の胃袋というものは...)
♢屋台街をハシゴした後
バンッ!バンバンッ!
〆のデザートを食べ歩きしていたら急に銃声が。
音の先には先に来ていたカレンとミッチェルさん。
「うぅ〜!おじさんもう一回だよっ!」
「あいよ。よく狙って撃ち...」
バンバンッ!
「たはぁ...それじゃ駄目だってお嬢ちゃん」
「あ、おはようございますレオ!」
「おはようカレン。射的かぁ...ちょっと貸して」
食後の腕慣らしにちょうど良さそう。
長い銃身は軽く押さえて
撃つ時は息を止めずに吐くっ!
カチャ...バンッ!
「さっすが海蛇の兄ちゃんだな」
外すと格好が悪いから狙いやすい所にしたが
一撃で仕留めたのはまずまずの結果だ。
「もっと近い的を狙ってごらん」
「うん!そこのウサピョン人形にするよ」
バンッ.....
(どうやったらそこに飛ぶんだよっ!)
弾は明後日の方向に飛んで壁に直撃。
前から薄々気付いてはいたものの
この女神は...とても的外れだ。
「あれぇ?おかしいな〜」
打撃は得意でも目標に当てるのは苦手。
旅龍の時は避雷針があったからヒットしたけれど
これは猛特訓の必要がありそう。
「大丈夫。ミッチも近距離はご覧の通りだから」
「今度こそ...何故だ!何故当たらないっ!」
バンッ!ポシュ...バンッ!ポシュ...
海蛇の頭をを遠くから狙い撃ったのに
この距離では擦りもしないミッチェルさん。
見かねたラファエルがヒョイっと銃を構えると
いとも容易く獲物を射止めた。
「遠い的の方が難しいんだって。気にすんな」
悔しがるミッチェルさんの肩を叩くラファエル。
昨日撃たれたからわかるけど彼は感覚がいい。
「もう気が済んだかしら?次に行くわよ」
「あの人集りが出来てる所かな」「大正解〜♪」
急にテンションが上がるレイナ。
意気揚々と先を歩く彼女について行くと
中央の噴水広場に町民が集まっていた。
足元には召喚陣が開かれている...ってことは
「もしかして何かのガチャイベントじゃ...」
「勘がいいわねレオナルド」
「これからが本番なんだからっ!」
ブウォン...
“Grand Challenge System Assign”
レイナが陣を開きアサインすると
ガチャの選択項目に“Festival”が追加されていた。




