124.疲れた時の対処法。
♢クロードの城 / 門扉の前
事後処理で忙しそうだから先に城へと戻ると
レイナとミッチェルさんが外で待っていた。
「お疲れ様でした。さあ中へどうぞ」
波飛沫をもろに浴びてベトベト。
大浴場に案内されて塩を洗い流す俺とラファエル。
やはり湯船に浸かるとリラックスできる。
「さっきまでいた港が見えるぞ」
「まだ人だかりが出来てるね」
見晴らしの良い展望風呂から外を眺めると
壊れた桟橋と復旧作業をする町民の姿。
沖の方ではまだ逆波が続いているから
災悪は日付が変わるまで延々と続くようだ。
「あいつが原因ってワケじゃねーんだな」
「それっぽかったのにね。そろそろ出よう」
少しのぼせてきたから風呂を上がって
用意された着替えに袖を通す。
それにしてもこの格好は
うぅ...くふふ
「笑うなよレオナルド。お前も大概だぞ」
柔らかな綿の生地で着心地は抜群なのだけれど
袖と裾が膨らんだ独特なデザインで
頭に被る飾り付きの帽子と靴も置かれていた。
ラファエルにはちょっと似合っていない。
♢一階の奥にある食堂
カチャ...「ここかな?」
美味しそうな香りに吸い寄せられるように
突き当たりの大きな扉を開けた。
「湯加減はいかがでしたか」
「よかったぜ。疲れも吹っ飛んでこの通りだ」
メイドさんに腕を回して見せるラファエル。
俺はまだ疲れが半分も取れていないから
早く食事を済ませて横になりたい。
ゴォーン...ゴォーン...
カレンが来るまで席に着いて待つ。
さっき朝食を食べたばかりの気もするけれど
時刻はランチタイムを優に超えていた。
「二人ともおまたせ。ほらカレンも入って」
レイナに連れられやって来たカレン。
魔装衣の鎧から同じ綿の服に着替えているが
女性用は装飾に鮮やかなビーズが使われていた。
それとふわふわの髪がやけにストレートで
いつもの雰囲気と違った感じに。
「海藻のパックをしたんだよ〜!」
「髪の毛もレイナがとかしてくれたんだぁ」
サラサラと美しい髪をなびかせる姿は
まさに女神そのものだ。
それになんだか背も伸びた気がする。
「きっとレベルが上がったのよ」
「あれだけの大物を相手にしたんだから」
おそらく彼女の言う通り。
(カレンが上がったなら多分俺とラファエルも...)
それはまた後で確認するとして
今は目の前に広がった無数の料理を頂くのが先だ。
遅れてミッチェルさんも席に着く。
「ご一緒させていただきます」
「ほら、沢山食べなさいよミッチ」
体力は白魔法でそこそこ戻るけれど
魔力の回復は基本的に食事と睡眠。
彼はあれだけ凄い一撃を放ったのだから
相当疲れているはずだ。
「いただきます」
ガツガツガツ...あぐあぐ.....
無心で料理を口に放り込む俺とミッチェルさん。
体が栄養を欲していて美味いとかマズいとか
味を楽しむ余裕など全くないから
むさぼるように次々と料理を平らげる。
ガツガツガツ...んぐんぐ.....
「なんていうか...まるで犬みたいね」
「相当疲れてんだろ。カレンは平気なのか?」
「うんっ!お肉を食べれば大丈夫だよ」
魔力の回復力や貯蔵量も増えたのか
カレンは疲れも見せずに肉料理を味わっていた。
ゴクゴクゴク...ぷはぁ
「ご馳走さまでした〜!」
普段の三倍くらいは食べただろうか...
もうお腹が一杯で動くのもしんどいし
血糖値が急激に上がって頭がくらくらする。
スゥ...バタン...
「レオナルドしっかりしろ!」
「ダメだなこりゃ...完全に伸びてるわ」
意識が薄れるけど会話は聞こえている。
体が鉛のように重たくて動けない。
「.....ですかね...隣の部屋で横に...」
(声も遠くなってきた...)
(長湯し過ぎたからなのか...もう...聞こえな.....)
♢日が陰り始めた頃
重いまぶたをゆっくり開くと
俺はカレンの膝を枕にして横たわっていた。
疲労とその他要因で倒れたらしいが
気を失っている間に何度かうなされていたと
後でラファエルから聞かされた。
「レオ頑張ったね。えらいえらい」
カレンが俺の頭を撫でて声をかけると落ち着き
またスヤスヤと寝息をたてていたそうだ。
(そういえば変な夢を見ていたような...)
悪い夢は覚えていないが
不思議な夢がいくつか記憶に残っていた。
行ったことのない場所の景色や色々な食べ物
誰かと仲良く話をしていたような...
ダメだ。思い出せないや。
「どうかしたのレオ?」
「いや、なんでもないよ」
水を一杯飲んでから部屋に戻る。
なんとか洗面所で歯を磨いたけれど
俺はレベルの確認をする余裕もなくて
ベッドの上で再び深い眠りに落ちていた。




