122.劣勢からの打開策。
♢港の桟橋から見守る人々
ザワザワ...
「サンガッ!船を引き離せるかっ!」
「ここからでは遠くて無理です」
人だかりの先にはクロードさん達。
そしてその前方には首の長い大きな魔獣が
船の進路を塞ぐようにしてこちらを睨んでいる。
「私の船を出しましょうか?」
「沈められるだけだ。...もう少し近ければな」
王には何か策がある様子だけど
魔獣は船を連れて徐々に沖の方へと後退して行く。
このままでは中の人達が...
(思い出せ...思い出せ...海上での戦い方はー)
“これから船での移動もあるかと思います”
“上級の出現する海域も避けられないでしょう”
“不利な形成を打開するにはー”
打開するにはコレが役に立つだろうと
フィオが戦術訓練の時に教えてくれた策がある。
俺は木の枝で砂浜に魔法陣を描き
クリスタルソードを装備してから詠唱を始めた。
“穏やかな波に白い吐息”
“海原を渡る氷結の道”
魔獣が立てた波の勢いを緩めてからの氷魔術。
薄く水色に輝いたクリスタルソードを振り下ろす。
ズダァァァァァァン!!!
ピキピキピキ...
狙い通り奴のいる付近まで氷の道を渡した。
これで近距離戦も可能になるから
形成は五分五分...いや、それ以上かー
「船は任せてくださいクロード様」
「頼んだぞウェスター。他の者は続けっ!」
ふぅ...かなりの魔術消費だ。
それに魔法陣に捧げた石はこの剣本体である。
ミシッと縦に小さな亀裂が入ってしまった。
“劣化していつかは砕けてしまうでしょうから”
“いざという時にだけ使うように”
そう彼女に言われていたのだが
もってあと7回...いや、5回が限度だろうか。
大きな魔石の塊であるこの剣の威力は
俺のレベルでは支えきれていない。
「やるなレオナルド。俺達も行くか」
「そうだね...ラファエルは船員の救助を手伝って」
「カレンは俺の援護をたのむっ!」
白魔法が使えるラファエルは救護班へ。
俺とカレンは王に続いて魔獣討伐に向かった。
♢クロードが指揮する最前線
ブンブンブン...
「少し下がって待機だ!」
「黄金に輝く王の錨」
ブゥオーン...
シャリシャリシャリシャリ.....ズドォォォン!
クロードさんの投じた金色の錨が輝き
奴の長い首にぐるりと一周巻きついてから
氷河に深く突き刺さる。
動きを封じられて憤る首長の魔獣...海龍か?
「これはドラゴンではなくて蛇ですよ」
「弱点は変わりませんが動きが早いので警戒を」
胴体は見えてないだけかと思っていたが
奴は龍ではなくて巨大な海蛇らしい。
紅い瞳でこちら睨んでは舌を出したり引いたり
それにウネウネしていて気持ち悪い。
「行くぞー!一気に畳み掛けろっ」
「ウオォォォォォォ!!!」
救護班が船員の救出を確認した直後に
王の号令で皆次々と攻撃を仕掛ける。
ジャキン!ザキィン!
「ダメっすわ。ドラゴン並みに鱗が厚くてー」
「ぐはぁ!」「迂闊に近付くなっ」
「下がって体制を立て直しましょう」
一度前衛を後退させ遠距離攻撃に切り替える。
サンガさんが言っていたように弱点が龍と同じなら
あの尾を始末してから攻勢をかける
もしくは額に一撃をくらわすのが一番だけど...
頭を狙うには高さが足りない。
バンッ!ガンガンガンッ!
暴れて凍った地面を破壊する海蛇。
このままでは錨を外されるかもしれないから
ゆっくりと考えている暇もなさそうだ。
「カレン!グリフォンに乗って」
急いでグリフォンの背に鞍を取り付けて
落ちないように体をロープでしっかりと固定。
「ホワール・ウィンド!」
ブワッ...バサバサ
俺達は“旋風”を使って奴の頭上高くまで上昇。
急転直下でクリティカルヒットを狙う。
「重たいから手伝ってね」
「わかったよ〜!」
今日一番の当たりだったレアな投槍。
かなり強い攻撃力だけど凄く重たいから
上から落とすように投げてしまえという作戦だ。
ズシィ...
重いけど二人で持てば重量分散されるから
なんとか投げることができそう。
「じゃあいくよカレン」「うん!」
「グリフォン、急降下だっ」
俺は知っている。
コイツは急上昇からの急降下が大好きだ。
ヴィアァァァァァァ!!!
シュゥゥゥー!
風圧で頬の肉が持っていかれる。
(それに凄く怖くて気...気絶しそうだ...)
必死に堪える俺に代わって
カレンが投げるタイミングを見計らう。
まだか...まだか...
「そろそろ投げるよ〜」
「わ...わかった」「せ〜のっ!」
けっこう軽いノリで投げられた槍は
海蛇の脳天めがけて垂直に落下。
(このままいけばクリティカル間違いなし!)
ピキ...ピキピキ...ズダァァァァァン!
グゥオォォォァァァッ!!!
グリフォンが浮上してから確認すると
左目に槍がめり込んでいた。
当たる直前に錨の刺さっていた付近の氷が砕けて
急所の額からは僅かに外れてしまったのだ。
(これはマズいことに...)
振り返って奇声をあげる海蛇は
許すまじと執拗に狙って追い回してくる。
しかし俺の体力はもう限界に近く
グリフォンに避けてもらうのが精一杯だった。




