121.信じる者と信じない者。
♢朝食後のくつろぎ
バルコニーから屋内に戻ってひと息つく。
食後のデザートにとプディングを出してくれた。
「この塩をかけて食べるの」
ザパァ...ザパァ...
置いてあった塩をガンガンに振りかけるレイナ。
有無を言わさず全員分に。
「大丈夫だから食べてみてレオナルド」
「えぇ...うん、じゃあひと口だけ」
はむぅ...モグモグ.....!?
感想から言わせてもらうと、甘い。
それに塩味は微塵も感じない。
「砂糖だったのか。騙されたよ」
「ふっふ〜ん。それは根本的に違うのよね」
確かにこの小瓶に入っているのは塩で
シーラルの海水を煮詰めたものらしいのだが...
(うまいなこの塩)
「ウミブドウって知ってるでしょ?」
「ここは綺麗な海だし波も穏やかで好条件なの」
甘くて美味しいウミブドウ。
俺の母さんも大好きなそれはシーラルで群生。
鮮度が保てなくて地元でしか知られていないが
そこここで普通に採れるそうだ。
「シーラルの地は大樹の根で出来ているのです」
「その大樹が近海の塩分を大量に吸いこみー」
「もう...先に種明かししないでよっ」
勿体ぶって話すレイナに割り込むミッチェルさん。
塩が甘い原因は彼が言うように大樹の性質で
ウミブドウから浸み出た糖分の比率が上昇。
その海水を乾燥させれば塩(砂糖)の完成。
「いわゆる“塩”は大樹の実から精製するんだけど」
「甘いこっちの塩も“塩”って呼ぶの」
「他国にはブドウ糖という名で輸出しています」
仄かに葡萄の香りもするから
紅茶に入れてフレーバーティーとかも良い。
これはフィオと母さんにお土産として...
ピロン♪
“メッセージが届きました”
“お元気そうでなによりです”
“早速ですがご依頼の件を調査したところー”
わずか二時間ほどで返信が来るとは...
さすがフィオである。
♢ゲストルームに戻る
ハッハ...ハッハ...
「だめだよっ!もうあげられないよー!」
ガウに干し肉を狙われているカレン。
ラファエルが一喝すると仕方なく引き下がったが
人型の時より野生的な雰囲気がする。
「ったく...ほら、お前の飯はこれな」
カリカリカリカリカリ.....
袋にはキャットフードと書かれているが
見なかったことにしよう。
「それで結果はどうなんだ?」
「んぅーっと...さっきの魔銃はシャイアのー」
今朝ガチャで出た当たりの鑑定をフィオに依頼。
簡単にで構わなかったのだけれど
年代やその歴史背景まで事細かに書かれていた。
“シャイアの魔銃は抗争中期のセントラ製ー”
“もしくは隣国アルバスの魔道具師が作った物かと”
属性は自身の属性に準ずるそうだが
ラファエルは白魔法が得意な癒し系男子。
残念だけれど使用時のメリットは得になし。
「じゃあそれお前に貸しとくわ」
「ありがとう。大事に使わせてもらうよ」
内心すごく嬉しかった。
今度試し撃ちしてみようっと。
“レオナルドの当たりは投槍ですね”
“援護射撃用なので通常攻撃には向きません”
そもそも凄く重いからムリ。
斬るのと投げるのとではワケが違うし
そんな大物と対峙することもまだないだろう。
(レアな代物が当たっても使えないんじゃな...)
ここには返却屋がないから
とりあえず“ポッケ”の中に入れておこう。
「まあハズれるよりかはマシだな」
「そうだね。気分は悪くない」
フィオにお礼のメールを送ってから
俺達は明日からの行動計画を見直すことに。
本来ならとっくに海を渡って
最初の目的地ケインズアークに着く予定だったが...
“レラントへの渡船は全便運休です”
“この後も逆波や急な海の変化にご注意ください”
ネットのローカル放送でも注意喚起が続いていて
やはり無理に海へ出なくてよかった。
レイナに会っていなかったら宿代がかさんだか
船上で航海したことを後悔していただろう。
ウォアーン!ウォアーン!ウォアーン!
突如町中にサイレンが鳴り響いた。
窓の外を覗くと漁師の男衆が慌てた様子で海へ。
「なんだかヤベー感じがするな...」
「レイナのところに行こう」
♢城へ続く渡り廊下
事情が読めずにひとまず城に向かうと
長い渡り廊下の途中にクロードさんの姿が。
「レイナはここに残りなさい。ミッチェル!」
「はい。さあ、お嬢様は中へ」
「ウェスター!サンガ!続いて行くぞっ!」
体には重装を身に付けていた...
「何があったんですか?」
ザッザッザッ...
険しい表情で通り過ぎた王にかわり
ミッチェルさんが口を開いた。
「レラントからの船が襲われています」
「チャーター船が無理をして出たようで...」
災悪日など迷信だとして出航する船もいるらしいが
運が悪いことに港から百メートルほどの近海で
魔物か魔獣の襲撃をくらったようだ。
「行くぞレオナルド!」
「わかってる。レイナはここに残って」
「なんでよっ!ちょっとミッチェル離しなさ...」
レイナは半ば強引に屋内へと連れて行かれたが
俺達は反転して海へと続く道を急ぐ。
ウォアーン!ウォアーン!ウォアーン!
その間もサイレンはけたたましく鳴り続け
穏やかな町の日常を一変させた。




