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119.うわさ話は程々に。

♢一泊して早朝


昨夜は元王様のレイナ父と話が長引き

深夜までずっと起きていたのだが

慣れない場所だからなのか目が覚めてしまい

俺は寝ぼけたままトイレのドアを開け...


カチャ...

「うぁ!ごめん、ノック忘れて...あれ?」


うっかりそのまま開けてしまったが

気配を感じた先には誰もいない。

(頭がぼんやりしてるせいだろうな...まだ早いし)


スサッ...モゴモゴ...


俺がボーっとしている間に

フサフサした何かが足元をすり抜けていった。

銀色のそれは何事もなかったかのように

まだ眠っているラファエルのベッドに潜り込む。


(あぁ、もう朝だからか)


寝ぼけ眼でよく見えてなかったけど

あれは昨日人型に変身していたガウだろう。

トイレトレーニングしたと言ってはいたけれど

あの姿でも普通の厠を使うんだな...


シャァァ...ふぅ


用を足して戻るが今から二度寝もないから

散歩にでも出かけることにしよう。


(そういえばカレンの姿が見えない)


透明化しているわけでもなさそうだから

ピッピィ達とどこかで遊んでいるのだろう。

まだ寝ているラファエルに書き置きを残して

俺は海沿いの町を歩いた。




♢朝明けの町角


まだ薄暗いし誰もいないだろうと思ったら

市場では朝漁であがった魚の取引で活気に満ち

むしろ昼間より人で溢れていた。

レラントからの買い付け船も来ているようだ。


「おう坊主っ!オマエお嬢の連れだろ?」

「金髪の彼女なら港にいたぞ」「モテるなぁ〜」


狭い町だから噂は筒抜けで

俺達のことをみんな把握している。

(そして歪曲されている...)


レイナの婿養子ではないかと変な誤解までされ

俺はそそくさと逃げるように港へ。

“金髪の彼女”はカレンで間違いないだろう。


「いたいた。ひとりで何してたの?」

「ウェザーのお仕事だよ〜!」


フォーキャストを発動しているカレン。

天気予報は相変わらず晴れだし風も穏やか。

それなのに彼女の指差す方向には


「船が続々と戻って来てるけど」

「もっと遠くだよ〜!ほらそこっ!」


水平線の手前に見える変なうねり。

風もないのに白波が立っているように見える。


「あれは逆波。日が悪いとよく出るのよ」

「おはようレイナ。カレンと一緒だったんだね」


逆波という呼び名の通り

よく見ると反対方向に向かって波が立ち

普通の波を打ち消すようにぶつかっている。


「海流も変わるし、あれで泡も出るからね」


塩の泡が立つと推進力がなくなり

その場から動けなくなるらしい。

今日はこの他にも色々な災悪が続くそうだ。


「カレンに天気を教えてもらっていたの」

「明後日は大事な日だから...」


その明後日にはお祭りがあるというが

レイナはなぜか浮かない顔。


「お祭りには違いないんだけどね」

「いろいろ大変なの。レオナルドが羨ましいわ」


地位にも名誉にも興味がない彼女。

お祭りには貿易国の偉い人やその子息が集まり

実質的に社交界デビューなのだそう。

まあ、俺には無縁の世界だな。


雨なら中止か屋内で簡単に終わるだろうと考え

散歩ついでに天気予報をしてもらったらしい。

...しかしカレンの予報は晴れである。


「はぁ...もう最悪」


ため息をついたレイナは足取り重く城の方向へ。

ラファエルも起きる頃だろうから

俺達も一緒に城へと戻る。


シャンシャララ〜ン♪

ランラララ〜ン♪


通りに入るとさっきの人達がいた。

なぜか結婚式の定番ソングを演奏され

指笛と野次が飛び交う。


「漁師町の住人はからかい上手なのよ」

「他に面白い事もないしね(苦笑)」


船を出せなくてヒマしてるだけだから

無視していいと言うけれど...超恥ずかしい。

(あぁ、もうっ!米撒くなって)


「一夫多妻とぁいいご身分じゃねぇか」

「そろそろ怒るわよホッチ」


中でも一番調子のよい漁師のオッさん。

マズイと思ったのか急に大人しくなって

漁で使う投網の修繕作業に戻った。

親しき貴族にも礼儀ありってやつだ。




♢城の外側/階段の前


「こっちだレオナルド!」


城に戻ると上からラファエルの声がした。

塔の一番上まで登ったようだけれど

朝からなにをしているんだろう...


とりあえず来いというから

レイナのウィザーライドに乗せてもらい

階段を使わずして一気に最上階へ。

そこには青白い光を放つ召喚陣とラファエル

それにミッチ...ミッチェルさんの姿が。


「今日はとても日が良いので」

「えっと、日が悪いんじゃなくて?」

「まあ見れば解りますよ」


彼は開いた陣の前に立ち

開催中の限定ピックアップを選択。

両手に掴んだ石をその中へ投げ入れると

石は登る朝日よりも眩しく輝き

高速で陣の中を回ってから弾け飛んだ。

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