118.強さは見た目によらない。
お茶を飲みながらしばし雑談。
冒険者志望の俺達はお互いの近況を聞いたり
色々と情報交換をしたりして時を過ごした。
「グリフォンは結構大きくなったよ」
「そっかぁ〜。私もあのあとのガチャでー」
話題はガチャで当たった魔獣の話に。
レイナは海属性のシーライオン(通称ウミニャンコ)
ラファエルはというと...
「すげーだろ。マジで変身するんだぜ」
「.....ファンタジーの世界だな」
彼がここまで一緒に連れていた狼。
いや、狼だったはずの魔獣だが...
ピクンッ
「すごいねぇ〜!ヨツみたいだよっ」
フサンフサン...
カレンが臆さず耳を撫でると
魔獣は大きな尻尾をパタパタとさせた。
まるで獣人族のようである。
「オオカミ人間だよね?」
「正確にはマーベリクスな。獣人でもないんだぜ」
見た目は12歳くらいの可愛い少年。
少し長めの髪は変身前と同じでシルバー。
獣人族との明らかな違いは喋らない、群れない
月が沈むと変身が解かれることなど。
「あと食い物で言うこと聞くんだぜコイツ」
「そこの薪を持ってこいっ!」
ハッ!スタスタスタ...ポン(手渡し)
ラファエルがお菓子を片手に指示すると
オーブン用の薪を一つ抱えてきた。
ご褒美が貰えることを確信しているのか
期待に満ち溢れた目をしている。
「よく出来たな。ほいっ」
アガァ〜...カプッ!モグモグモグ
彼が投げた焼き菓子を口でキャッチして
あっという間に飲み込んだ。
しかし薪を戻してくるよう出した指示は理解せず
首をひねってはウロウロする狼(人型)。
見た目は人でも中身は犬である。
「でも狼男なんて凄く強そうよね」
「それがマジで弱いんだなー」
それを実際に見せてやると言い
シーライオンを捕まえるよう命令した。
タッタッタ...シュッ!シュッ!
フギャァァァ!!!シャシャッ!バゴッ...
何度も捕まえようとして空振りした挙句
最終的に反撃を食らって半泣き。
ちなみにライオンといってもまだレベルが低くて
言われなければ普通の猫である。
「よしよし。これくらいで泣くなって」
ニャニャァ...ペロペロ
あまりにも軟弱過ぎて心配になったのか
ウミニャンコが近付いてきて傷口を舐めている。
「言った通りだろ?」
「運動能力はまるっきりゼロだ」
そう言い切る非情な飼い主。
でも狼の姿だとそれなりに足は早い。
まあ、それなりにだけれど。
「レアには違いないんだから大切にしなよ」
「本当にレアなんだかなぁ?」
頭を小突くラファエル。
意地悪なことばかり言うけれど名前も付けたし
とりあえず気に入ってはいるらしい。
「いつもガウガウしかいわねーからさ」
「だからって単純すぎるわよね」
マーベリクスは忠誠心が高い魔獣らしく
“ガウ”は主人の側から離れようとはしなかった。
♢夕飯をご馳走になった後
「お魚ばかりでごめんなさいカレン」
「来るとわかっていたらウミウシを用意したのに」
この辺りで出没する海牛という生き物は
平たいヘンテコな形をしているけれど
味は赤身の肉と似ているのだとか。
「これは美味しかったよー」
カレンが指差したお椀の中には
茹でロブスター蟹の殻が山になっていた。
魚は嫌いだけどウミダコとコレは好きらしく
ひたすらそれだけを食べていた。
彼女の偏食は治りそうにない。
「ガウはなんでも食べるの?」
「ご覧の通りだ。食い溜めするタイプな」
ガウガウ...ガウガウ...
残った料理をペロリと平らげた。
底無しの食欲はカレンにも勝るかも。
「よかったな。お前カレンよりスゴいんだとよ」
ガウガウゥ〜!
ラファエルは少し馬鹿にしたのだが
褒められたと思ったガウが嬉しそうに吠える。
シャツから出たお腹はポコんと膨れていた。
タタタッ.....
急にラファエルの背後に隠れるガウ。
外で誰かの話し声が聴こえて
だんだんとそれは近付いてきた。
カチャン...ギギギィ...
「ただいま帰った。おや?客が来ているとは」
「お帰りなさいお父さま」
「お父さまって事は...あの人が王様かな?」
「やべぇー。まずオーラが違うよな」
俺とラファエルが後ろでヒソヒソ話していたら
王様の方から声をかけてくれた。
「きみがレオナルド君だね」
「この前は美味しいお茶をありがとう」
前回レイナに持たせたドラゴンティーの茶葉。
それをとても気に入った王様はすぐに取り寄せて
倉庫にストックしてあるのだという。
(一時期謎の品薄状態が続いたのはそれでか...)
「ほう...すると隣の美しい君は精霊の...」
顔を見るなり正式な会釈をして
最大限の敬意を払ったレイナの父。
カレンは少し困った顔をして
照れくさそうに笑っていた。




