114.ちょうど良いサイズ。
そろそろ夜も更けてきたから
荷造りは途中だけど今日はもう寝よう。
毎日徹夜でさすがに体力の限界を感じる。
「私は朝までには帰るわ」
カーラはまだまだ居座るつもりのようだ。
いつもは早めに眠る優等生のヨツも...
「なんだかポーションが効いてるみたいです」
先程のアレで目が冴えてしまったらしい。
カレンも寝溜めして起きていられるから
三人で夜更かしするのだとか。
まあ、暫く会えないからそれもいいか。
「じゃあ先に寝るね。カーラも早く帰りなよ」
「わかってるわよ。おやすみ」「おやすみなさい」
バタン...
時々女子の話し声や笑い声が聞こえてくるけれど
疲れているから子守唄のような感じがして
いつのまにか朝を迎えていた。
部屋を出て居間に行くと書き置きが。
“恋は盲目...byカーラ”
(...なんだよそれ)
それはともかく夜が明ける前には家に帰ったようで
マハトさんから迷惑をかけたとメールが来ていた。
年頃の精霊って扱いが難しいんだな...
朝食を食べてから今日は街の仕立て屋へ。
アカデミー用の制服をヨツが取りに行くから
一緒についていくことにしたのだ。
♢ディアードの洋裁店♢
カランカラン...
「いらっしゃい。あぁ、ケモミミの子か」
「制服を引き取りに来ました」
店の奥から出てきた仕立て上がりの制服を持って
ヨツはサイズ確認のため試着室へ。
「私もカッコいいのが欲しいなー」
「可愛いのじゃなくて?」
室内授業用の通常服は落ち着いた感じで
実技用の戦闘服は機能性に優れた素材を使用。
どちらもアカデミーのロゴと紋様が入っていて
すごく格好の良いデザインだ。
スササァ...「どうですか?」
ケモミミと戦闘服が反則級に似合っている。
制服というより何かのコスプレだ。
「いいないいなー(きらきら)」
羨望の眼差しで見つめるカレン。
どのみち今の白いローブは魔法タイプだから
武闘用の魔装束は当てなきゃと思っていた。
ヨツがもう一つの試着をしている間に
店の待合室を借りてガチャを回してみる。
魔装束を当てる触媒としては申し分ない場所だ。
「ちょうど魔装衣の確率アップ期間だしね」
「こいこいこ〜い...こいこいこ〜い...」
シャシャッ...サッサッ...サッサッ...
召喚陣の後ろで謎の踊りを展開する女神。
効果があるか謎だけれど本気度は伝わってくる。
「じゃあいくよ」「ほいきたっ!」
“Grand Challenge System Assign”
いつもの蒼白い閃光が視界をさえぎり
回転する石と石とが激しくぶつかりあう音がした。
シュィィーン...シュダーン...ダダーン...
ボワァン...“聖騎士の鎧”
俺でも鑑定できる代物。
名前の通り旧世界の帝国騎士団と思われる紋章と
赤黒い特殊な塗装は魔法によるものだろう。
大きさはフリーサイズっぽい。
「やったぁ〜!レオ、私着てみたい」
「試着室を借りてもいいですかディアードさん」
「鎧なら奥の広い部屋を使いな」
カレンが先に着てみることに。
俺は出してくれたお茶を飲んで休憩。
(ズズッ...うまいなこのお茶)
シャァー...
カーテンが開く音がして後ろを振り向くと
聖騎士の鎧を纏った凛々しいカレンが立っていた。
「みてレオ!格好良い?」
フリーサイズ...だったよな。
胸の辺りにどうも目がいってしまうのだが...
奥の部屋から制服の微調整を終えたヨツと
ディアードさんも様子を見に来た。
「ほう...魔力でサイズ調節できるタイプだな」
金属で作られているのに不思議だ。
(それにしてもなんだか...大きいな)
「これって俺が着た場合はどうなるんですか」
「胸の部分なら引っ込むから安心しろ」
ローブの時はダボっとしてるから気付かなかったが
少し露出度の高いデザインであることと
レベルが上がったせいもあり胸が大きく見える。
慣れるまで直視しづらい。
「カレン様とても似合ってますよ!」
「えへへ〜。レオも着てみる?」
いま着ているのを俺が着るのも...
ちょっとまずいかなぁーって思うから遠慮した。
(先に試着すればよかったな...)
「俺は前に当てたのがあるからカレンにあげるよ」
「いいの!? やったぁ〜」
喜ぶカレンの隣でニヤリと笑うディアードさん。
俺の複雑な心境がバレたようですごく恥ずかしい。
「さあ、制服もこれで調整完了だ」
「ありがとうございました」
「頑張るんだよ。ケモミミのお嬢ちゃん」
嬉しそうな女子二人の後ろをついて歩く。
そういえば入学のお祝いを考えていなかったから
今夜は夕飯を外で食べるのもアリだな。
「ヨツ、何か食べたいものとかある?」
「それでしたらやはり...」
当然お肉と返事が返ってきたのだけど
骨つき肉が食べたいらしい。
美味しい骨つき肉を出す店といえばあの店か。
「山盛りなんだよぉ〜!」
「しかも美味いんだよな。予約してみるよ」
便利な時代になったもので
端末からお店のログに入って予約申請ができる。
お得なクーポンも利用可能だ。
「よしっ!予約完了っと」
カーラとフィオも誘った(一応伯父も)
明後日はもう入学式。
翌々日には俺達も旅に出るから
少しくらい贅沢したって問題はない。
まだ夜までには時間があるから家に戻って
それぞれの準備を進める。
ヨツにも街のみんなにも暫く会えなくなるから
一緒にいられる時間を大切にしようと思う。




