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111.便利な常套句。

クゥ...クゥ...

ヨツはドラゴンスネークのたまご酒を飲んでから

また横になって眠りについた。

きっと明日には体力も回復することだろう。


俺は昼食を食べてから一人で街へ。

カレンは看病のために留守番を引き受けてくれた。

メイン通りの角にある古い建物の中に入ると

様々なタイプの冒険者が壁や柱を見上げている。


ここは街の伝統的なギルド。

魔術ネットを介した募集が主流になりつつあるが

まだ紙で貼り付ける方式も残しているから

ネットが得意でない世代に需要があるようだ。


「はい、次の方どうぞ」

「パーティーですか?個人ですか?」


端末に登録したい俺は受付で手続きをする。


「個人です。あとは精霊が一人」


パチパチ...パチ...ピロン♪

その場でギルドから俺の端末に情報が届いた。

確認項目にチェックを入れて登録ボタンを押せば

ギルド用アカウントの完成。


これでメンバー募集や討伐参加の申し込みが

家にいながらにして出来るようになった。

仕事をセーブしたから長旅に出るのもいいけれど

まずは手頃な冒険から始めるつもりだ。


カチャ...「ただいまカレン...あれ?」


端末を開いたままスヤスヤとうたた寝をしている。

気持ち良さそうに眠っていて起きそうもないから

魔術電源をそっと落とした。


夕飯まではまだ時間もあるから

さっそく自分の端末でギルドからの情報を見る。


“あなたにオススメの情報が届いています”


何通か俺の登録した内容に関連する情報が

連絡ボックスに届いていた。

開いてみると結構有名なパーティーの募集情報が。

(これは願っても無いチャンスだ)


すぐに参加希望を送る。

これで経験を積んで名声を上げれば

いつか自分のパーティーを持つ事も夢じゃないっ!


数分後.....


“この度はメンバー募集にご応募いただきー”

“また機会がありましたらよろしくお願いします”

“あなたの冒険にご武運を!”


(コレが...ご武運メールというヤツか...)


【ご武運メールとは...】

パーティーの応募者をやんわりと断る時に使う為の

便利な常套句である。


今まで条件が合わなくて応募したのは初めてだけど

うわさに聞くコレを受け取って少しショック。

でも普通に考えれば応募者は相当数いるのだから

落ちるのは致し方ないことだ。


切り替えて他のメンバー募集を探す。

ウェザー持ちだからいくつか声もかかったが

攻撃魔法がまだ使えないことを伝えたら

またご武運メールが届いた。

モチベが段々としんどくなってくる。


パチパチ...カチ...

なんだかんだ調べていたら日が暮れていた。

そろそろ夕飯の準備をしないとだな。


「んぐぅ...ふぁ?」「よく寝てたねカレン」


普段は纏めて寝溜めしてずっと起きているのに

めずらしく寝落ちしていたカレン。

南国生まれのヨツは寒さに弱いからと

夜通し魔術ヒーターを付けてあげていたらしい。


「寝てなかったのか...」「明け方までね」

「でも夜はちゃんと寝ないとダメだよ」


精霊は自身で魔力錬成できるけれど無理は禁物。

それに夜更かしはお肌にもよくない。


「今日は10時に寝るよ」

「はやいよー。カーラのログも見たいしなぁ...」

「...じゃあ11時ね。約束だよ」


カーラの複垢はファッションに関する情報が満載。

なかでも1週間着まわしコーデ術とか

簡単ヘアーアレンジのコーナーは充実していて

カレンも最近ハマっている。

(本出したら絶対に売れるだろうな)


さて、今日はパタパタのスパイス煮。

ひと口大に切った野菜と肉を鍋に入れたら

数種類のスパイスとデミグラスソースも投入して

じっくり暖炉の熱で柔らかくなるまで煮込み

ついでに隣でライスも炊く。


シチュー系はなぜかパン派が圧倒的に多いけど

うちは母さんがライスにかけていたから

俄然シチューオンライス派だ。

家を出る前まではこれが常識だと思っていた。


「まだかなぁ...まだかなぁ...」

「もう少しかかるよ。お菓子でも食べてて」


この前カーラが買ってきたボンゴリ煎餅。

少し残ってたから腹の足しになればと食べさせる。


バリボリ...バリボリ...

空腹の女神は口いっぱいにそれを頬ばりながら

クツクツと煮える鍋の前で待機していた。

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