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109.武器は持ち主を選ぶ。

錆びてしまった王の剣。

レアだとしても今は武器の再錬成は禁止で

それが出来る魔道具専門の鍛冶屋も廃れている。

これはもう返却するしか...


「ヨツ、魔石を持っていますか?」


フィオがおもむろにそう訊くと

バッグの中から魔石を数個取り出した。


「すべて魔石のカケラですね...」

「まあ、なんとかこれで研いでみましょう」


魔石を使ってあの剣を研ぐのだという。

他人のモノに手を加えることは出来ないから

自分の剣と魔石を使ってやり方を教えてくれた。


ジャリィ...ジャリィ...ジャリィ...


馴れた手つきで刃に魔石を当てるフィオ。

研ぐたびに黄色い魔石と同じ色の火花が散る。


「ほぅ...なかなか上手いじゃないか」

「武器の手入れはウォーリアの基本なので」


ザザッ...ザザッ...ザザッ...


ヨツも魔石のカケラで表面を削るが

全体的に錆びているから一筋縄ではいかない。


「状態も悪いので壊れないよう慎重に」

「怖いなぁ...」「それはそれで運命ですよ」


魔剣が折れたり欠けたりするのは

持ち主との相性も関係しているらしい。


「剣に信用されるか否かって事だな」

「そうです。武器は持ち主を選びますからね」


なんかカッコいいな。

そもそもガチャでヨツの元に現れたことも

何かの縁や運命なのかもしれない。


キィーン...ジャキン...ザン...


俺とフィオは剣術の稽古を。

始める前に手持ちの魔石で少し研いだからか

鋭さが増したような気がする。


密林の時に当てたレアなクリスタルソードは

非常に重くて使いこなせていない。

まだ使うレベルに達してないという証拠だから

もっと基礎値を上げる必要がある。


「今日はこの辺で終わりにしましょう」

「はぁ〜疲れた...」

「お疲れ様です。ヨツも手を休めて下さい」


彼女は稽古している間も黙々と作業していた。

指の腹がプックリと腫れている。


「マメが痛そうだね」

「違いますよ。一応これは肉球です」


触ってみるとプニプニしていて確かに肉球。

ミトと違って普通の手だから気付かなかったけれど

ちゃんと獣の特徴が残っていた。

プニプニ.....(気持ちいいなこれ)


「ありがとうございました!」

「また経過を見せに来てください」


遅くなる前に屋敷を離れた。

最近は暖かい日も増えてきたけれど

日が落ちるとそれなりに肌寒い。


ガッガッ...ガッガッ...


家に帰ってからも庭で研磨を続けているヨツ。

背中を丸めて地道にカリカリと削る姿は

木ノ実をかじるモリリスのようだ。


「あまり無理すると風邪ひいちゃうよ」

「もう少し削ったら戻りますので」


小さな魔石のカケラで研ぐのは大変だけど

申請が通れば俺の魔石を使えるようになるから

もう少し楽になるだろう。


モゾモゾ...


家の中に戻ってログの更新をしていたら

脱いだ上着のポケットがモゾモゾと動きだした。

なんだか怖いし気持ち悪い。


「どうしたのレオ?」

「カレン...ここ何か入ってるっぽい」


モゾモゾモゾ...ガサッ!


怖いものなしの彼女に確認してもらうと

中からピョコンと頭を出した妖精。


「...............(嬉しそう)」


伯父のところのウィンディ。

屋敷からここまで付いてきたようだ。

偶然ポケットへ紛れ込むはずもないから

確信犯的に家出したのだろう。


「心配するから勝手について来たら駄目だよ」

「...............(少し反省している)」


もう暗くなってきたからフィオに連絡して

明日仕事の前に屋敷へ送り届けることにした。

カーラもまた泊まりに来るとかなんとかで

我が家は家出少女の溜まり場となりつつある。


頭を抱えながらも夕飯の準備。

今日はもう簡単なものでいいにしよう。

でも栄養面を考えるならサラダも作りたいし

身体を温めるならスープも必要か...


クスクス...

そんな独り言を聞いてなぜか笑う精霊。


「やっぱりレオはお母さんみたいだねっ」

「むぅ...カレンにまで言われるとは」


心配性な母さんに似たのか

つい他人の世話を焼いてしまう癖がある。

こうして俺の冒険者レベルは停滞し

主夫スキルだけは急成長を遂げるのであった。

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