108.朽ち果てた王の剣。
シャァァァン!!!
俺は確信していた。
ここ最近の引きの悪さはレアを引き当てる前兆。
アップデート後すぐに回すジンクスも実行。
絶対に負けるワケがな...
“ピッピィ〜”
(......違う、お前じゃない)
改良されたモーションに騙された。
排出率は以前と何も変わってはいないし
派手な演出のせいで落胆も大きい。
カレンは当たりだと喜んでいるけれど。
「まあ落ち込まないで。さぁ、次いってみよう!」
「どんな感じで回すと当たるんですか?」
授業で使う武器が欲しいと言っていたヨツ。
ガチャ経験も浅くてジンクスとか詳しくないから
俺と伯父の話に興味があるようだ。
「それなら少し試してみようか」
伯父の提案で3つの召喚陣を開き
向かい合うように構える。
これは囲むことで互いの運気を中央に集約し
最大限に高めるという壮大なジンクスらしいが...
「単発にする?」
「いえ、全力でいってみますっ!」
彼女の強い希望で十連ガチャに決まった。
アカデミーのために貯めていた石を取り出して
やや緊張した面持ちで構えるヨツ。
フォンッ...ブォンブォンブォン
三人同時に召喚陣へ向かって石を投げると
轟音を立てて一斉に回り始めた。
「カマァァァァァン!」
「おりゃぁぁぁぁ」「こいこい!」
開始から数分後。
最後の光がキラキラと弾け飛んで
俺達の長い戦いは終わった。
.....結果はお察しの通りだ。
それでも俺と伯父は使えるアイテムも出たから
比較的に軽傷で済んだのだけど
残念ながらヨツだけは重度の被弾。
「こ...これがニト兄様の言ってた爆...爆死」
初めて引いた十連ガチャの洗礼を受けて
かなりショックを受けている様子。
爆死...それは誰もが通る道。
皆これを乗り越えて大人になるのだ。
“焦らない・無理をしない・図に乗らない”
大切なことはみんなガチャから教わった気がする。
「はぁぁ...私もう当たる気がしません」
「ハハッ!何事も経験だって」
その後はフィオの入れたお茶を飲みながら
いつもの鑑定会を開催した。
「まずはこちらをご覧いただこうかっ」
伯父が先に当てていたレアな魔道具から。
(この自慢したがりめがっ!)
スルゥ...
革製の鞘からゆっくり引き抜くと
白く輝きを放つ平たい剣が姿を現した。
「白銀の剣という代物だ」
その名の通りプラチナで作られている。
耐食性があるから錆びにくいし高級感もあって
なかなか良さそうな剣。
シュゥン...シュゥン...
伯父が試しにと素振りを見せると
空を斬るたび微かに白い火花のようなものが...
「その剣は光の魔力が込められているようですね」
「比較的古そうなので王侯貴族の時代かと」
最近では伯父よりフィオの方が詳しくなったから
鑑定を行うのはもっぱら彼女の役割である。
並べられた当たりを入念に調べていく。
そういえば眼鏡をしてるけど...
「ああ、これですか?(眼鏡を外す)」
「これは透視レンズという魔道具の一種です」
本来はダンジョンの地形調査や
宝箱が安全か調べるのに使うモノだが
アイテムの特性がわかるという裏技もあるらしい。
(眼鏡姿も似合ってるな...可愛い)
コト...フムフム...
真剣な表情をするフィオもいい。
隈なく調べるその姿は刑事か名探偵のようだ。
「実際あいつはソレ系の話が好きだからな」
「いつも推理小説ばかり読んでさぁ」
伯父の得意分野である恋愛小説には興味がない。
精霊には人間の恋心がわかりにくいから
サスペンスやミステリーの方が好きなのだとか。
「だから次回作は恋愛サスペンスと銘打って...」
「それって絶対に誰か死にますよね」「当然だ!」
なんでも盛ればいいわけじゃないと思う。
そんな無駄話をして待っていると
「これは...」「どうしたんだいフィオ」
ヨツの当たりの中に錆びた剣があった。
フィオが少し驚いた表情で柄の部分を調べる。
「とある王様のコレクションです」
「こんなにも朽ち果ててしまったとは...」
まるで何か知っているかのような口振り。
ヨツは全部ハズレだったと嘆いていたが
レアな当たりに間違いはなさそう。
「石は金色に光ってたんですけど...」
“錆びた剣”という名前と見た目から
彼女がハズレと勘違いしたのは無理もない。
「元は誓いの剣という名前です」
「お前なんでそんなこと知っているんだ?」
「まあ色々とありまして...」
それ以上は話そうとしなかったし
事情があるのだろうから深掘りはしなかった。
名前が“錆びた剣”になっているのは
手入れされない状態のまま商人などの人手に渡り
長い年月の間そう呼ばれ続けた結果
銘が変化したのではないかと鑑定された。




