107.ふあっふぁな食感。
戸籍住民課の窓口。
「はい、次の方どうぞ」
「じゃあねレオナルド。ヨツちゃんも」
ようやく塔の中へと入れたのだが
受付に呼ばれるまでの時間も非常に長かった。
ケニーは労働局に用があるからと五階へ。
俺達は呼ばれた窓口へと向かった。
混雑解消のために去年から端末に表示ができる
電子証明システムも登場したのだけれど
個人情報の流出や悪用を懸念する声も多くて
政府の目指す完全移行には時間がかかりそうだ。
「端末証明書は希望されますか?」
「はい。作りたいです」
「では三階の窓口に並んで登録を」
この証明書がないと例の申請ができないため
俺もヨツと一緒に作ることになった。
「緊張しないでください」
「もっと口角下げて...いきますよ〜(パシャリ)」
登録用の顔写真を撮られてから内容の確認。
俺は残念な表情になってしまったが
ヨツは写真写りが良かった。
トトン...バンッ!
最後に大きな判を押されて無事終了。
端末を開くと登録が反映されていた。
これで一連の準備は万端。
あとはアップデートが終われば申請ができる。
「なんだか家族になるみたいですね」
「そうだね。妹が増えたような気分だよ」
「ではレオ兄様と!」「いや...レオ様でいいよ」
役所を出てから街で少しお買い物。
フィオに頼まれていた製菓用の材料と
見張り番のカレンにご褒美を...
「どれも美味しそうですね〜」
肉の匂いに反応するヨツ。
やはり獣人族なだけあって好物は肉である。
「ヨツにも買ってあげるよ」
「うはぁ...ありがとうございます(感激)」
ハフハフ...
さっそく熱々のボンゴリまんを頬張る。
ふあっふぁな生地の中に野菜と肉の入った餡。
寒い日には無性に食べたくなる。
お土産用に何個か包んでもらい
冷めないうちにと足早に屋敷へ戻った。
カンカン...カチャ
「おかえりレオ〜!んぅ...あ、お肉の匂いだ!」
「ただいま。はいお土産どうぞ」
嬉しそうに包みを受け取るカレン。
更新は終わったのだろうか?
開いたままの召喚陣を覗いてみると...
「...微妙にまだだな」
「...微妙にまだですね」
残り僅かなのに96%から進まなくなったらしい。
もう一度やり直すという手もあるが
また時間がかかるかもしれないし迷うところだ。
ヨツも召喚陣を開いてアップデートを開始。
同じく終盤に差し掛かると重くなり
終わる気配すら感じさせない。
トットットットッ...バンッ
「見ろレオナルド!コレが新しいガチャのー」
なにかのレアを当てたようで
はしゃぎながら階段を降りてきた伯父。
「なんで更新終わってるんですか伯父さん」
「ハハッ!日頃の行いってヤツだな」
ハフハフ...
それを聞いたフィオが冷たい視線を送っているが
彼は気にも留めずにボンゴリまんを口に頬張る。
コイツには物理的に怒ってもいいと思う。
シュウーン...ブチッ
音がして更新中の召喚陣が解かれた。
何事かと焦ったが落ち着いてもう一度陣を開くと
ピコッ!
“Grand Challenge System Ver 3.0”
“Assign...”
バージョン3.0へと移行したシステム。
空中に表示される設定画面とかも変わっていて
全体的に使いやすくなった印象だ。
「私の方も更新できましたよ」
「よかった。そしたら設定画面からさっきの...」
ここからだ。
端末証明書の番号や個人情報を入力してから
膨大な量の注意事項と規約を読まされた。
色々と難しい言葉が並んでいる。
“同意しますか?”
ポチリ...とりあえず押してみた。
俺は適当に読んだだけで内容はさっぱりだけど
頭の良いヨツは完全に理解したようだ。
「あとは審査が通れば完了だね」
「はい。これで妹になれます」
申請してから審査が終わるまで数日かかる。
確実にパスしそうだから問題ないけれど
肉食姉妹を抱える家計のやり繰りの方が心配だ。
これからもっと節約しないと...
「さあ、アップデートも終わったならやるだろ?」
「言われなくてもやりますよ」
ブォン...
青白く輝く画面の中からガチャの種類を選ぶ。
俺は1回分の石を“ポッケ”から取り出すと
ポイッと陣の中へ放り投げた。
シュィン...シュワワン...
音と光が以前よりも格好良くなっていて
射幸心を煽られてしまう。
(これは気をつけないとヤバいな...)
輝きながら回る石を見守る俺は
レアな当たりが来ることを確信していた。




