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105.時間を無駄にしない。

アップデート初日の朝。

俺達は予定通り伯父の屋敷で待つことにする。


カンカン...ギィィ


「いらっしゃい。寒いから中へどーぞっ」


扉を叩くとすぐに伯父が出てきた。

(この危険人物(ロリコン野郎)め...絶対玄関で待機してただろ!)


「伯父のフェルナンドだ。新刊が好評発売中だよ」

「はじめまして伯父様 (ペコリ)」


さりげなく宣伝を入れたのは

新刊の売り上げが伸び悩んでいるからだ。

やはり今は異世界ものでないと厳しいらしい。


「この屋敷で暮らしてもいいんだよ?」

「.....通報しますよ伯父さん」

「やだなぁ〜!顔が怖いぞレオナルド。ハハッ!」


見境のない奴だけど

どちらかといえば男の娘(こ)が好きだから

それ以上ヨツにしつこく迫りはしなかった。

でも用心するに越したことはない。


フィオが居間で端末を開いて待っていた。

今日もお菓子を焼いた甘い香りが漂っている。


「は...はじめまして」

「ケモミミ族のヨツと申します」


握手を交わす二人。

来る前に彼女が精霊だと伝えていたけれど

獣人族は神性に対する信仰心が厚いから

少し緊張している様子。


「ようこそ。私はウォーリアのフィオレット」

「フィオと呼んでくださいね (笑顔)」


微笑む彼女の顔をぼーっと眺めるヨツ。

見惚れてしまうその気持ちはよくわかる。

フィオはとても綺麗だ。

(やはり魅了スキルを持ってるのだろうか...)


「ところでアップデートはどんな感じ?」

「いまのところ問題なさそうですよ」



カチカチ...パチ


前回大問題になったにも関わらず

公式のログにはメンテじゃなくて残念だとか

どうせすぐメンテになるだろ等の

ネタの書き込みで盛り上がっていた。

なんだろうこの人達...


「みなさん石が欲しいんですよ」

「私もまだ課金のガチャは出来ないので」


ここにも詫び石勢がいた。

たしかに働けない年齢の子供にとっては

貴重な石を手に入れるチャンスなのだろう。


「リンツは何度も回してたよー?」

「あの子はパーティーの収入があるからだよ」

「そっかぁ...すごいんだねぇ〜!」


彼はヨツより年下であるけど

冒険者だから収入は俺よりも多いはずだ。

ああ...早く旅に出たい。



“Grand Challenge System Ver 3.0”



とりあえず大丈夫そうなので更新してみる。

ヨツの申請もガチャ経由でしか出来ないから

早く更新を終わらせたい。


他にもまだやることが山積みで

時間がいくらあっても足りないくらいだ。

この時期はなにかと忙しい。



“更新しています...”

“アップデート終了までお待ちください”



パーセント表示が中々進まない。

今回は何事もなく順調に進んでいるとみて

更新する人が一気に増えたようだ。



“システムが混みあっております”

“時間をあけてから再度お試しください”



ヨツの召喚陣はボタンすら押せない状況。

本人は嬉しそうだけれど俺は困る。


この後は役所に行って

彼女の居住地の変更届を提出したり

住民登録を済ませなければならないのだ。

(...まだ25%までしか進んでないし)


アップデートに併せて新しいガチャも登場予定。

俺はこれにもかなり期待している。

カレンを本格的な戦闘に参加させるには

封魔扇子一つだけでは心許ない。

彼女にもレアな剣や杖などが欲しいところ。


「私も剣とロッドが必要なんです」

「学校で使いたいので絶対に負けられません」


ミトはガチャを回していたから

強そうな槍とか剣を持っていたけれど

ヨツは石を売って参考書を買っていたため

武器はあまり持っていないのだとか。


「俺は途中まで親父の剣を使ってたな」

「羨ましいです。今はもう無理ですから」


二年前に没収されるまでは

魔道具の購入も貸借りも完全に自由で

俺は勇者の息子で家宝の聖剣を使っていたから

友達に羨望の眼差しで見られていた。

失った途端“ザマァ(笑)”と煽られたけれども。


一応学校では非魔力の武器も用意されているが

訓練に使うなら本物の方が絶対に良い。

レアな代物なら尚更だ。


「眺めていても終わりませんね」

「私達が残るので役所へ行かれてはどうですか?」


「そうだね。じゃあ手続きをしてくるよ」


まだ更新している俺の魔法陣はカレンに任せて

俺とヨツは役所のある中央塔へと向かった。

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