97.神々のコトノハ。
ガーデンテラスに移動して少し休憩。
庭で採れる香草を組み合わせた
ほんのり花の香りがするハーブのお茶を飲む。
フィオが好きな栽培の難しいシュガーフラワーも
ここでは普通に沢山の花を咲かせている。
さすが“開花の女神”フローリアだ。
“レオ君はどの曲が一番好き?”
“髪型変えよっかなーとも思うんだけどさぁ...”
“変顔って私的にアリでもファン的にはナシだよね”
“それからそれから...”
普段ファンと話すことがないから興味津々の様子。
推しと優雅にお茶を飲みながら雑談なんて...
ここは天国か。
「それでねレオ君!......あ、ごめんなさい」
「私だけ喋りすぎてるよね(照れ笑い)」
はにかんだ笑顔と穏やかな陽射し。
(レオ君...この呼ばれ方は最高だな)
ずっと頭の中でリフレインしているけれど
なんて良い響きなのだろう。
「俺は構わないよ。凄く楽しい」
「本当に!?よかったぁ...(安堵)」
庭の奥にある畑からブルーが戻ってきた。
「フローリア、そろそろ良い頃よ」
「わかったわ。レオ君とカレンも一緒に来て」
畑には俺の背丈ほどに育ったミルク豆の苗。
ブルーの能力で一気に成長させたもので
これから“開花”させるのだという。
“Al fmgna heb hsik...”
“Al h nabc mg pvbar...Nharb eb si kpsin”
スゥっと息を吸うと
透き通った美しい声で口ずさんだ。
その歌はこの国の言葉でも
異国の言葉でもなく
神々のコトノハというものだろうか。
キュポン...ポン...ポン.....
小さなつぼみから次々と白い花が咲く。
その花は一瞬で枯れ落ちて
残された部分に種子を形成していた。
「もういいでしょ。食べ頃よ」
「そうね。硬くなったら美味しくないもの」
ミルク豆は早熟なら鞘まで食べられるから
まだ緑色をしている間が食べ頃だ。
茹でて塩を振っただけでも超うまい。
「これで暫くミルク豆に困らないわ」
「そんなに好きなのブルー?」
「教授ですよ。嗜好が隔たっているので」
最近はこの豆ばかりを食べているらしい。
好き過ぎて自家栽培を試みているのだが
やはり女神達(精霊)の力には敵わない。
ほんの一瞬でこの収穫量だ。
「昔はよく二人で旅してたんだよね」
「東部でのモリンゴ栽培は成功だったわ」
東部の森はモリンゴ栽培が盛んで
この辺りの市場に売られているのも東部産。
色艶も良いし味も抜群だから
五人に一人はモリンゴ農家をしている。
「戦争で焼失してしまっていて...」
「だから二人で種を植えたの」
更地と化した大地を再建して
彼女達がモリンゴの森を作ったというのだ。
貧窮していた村に突然現れたこの森は
女神の加護で造られたと言われているが...
「ただの偶然なんだけどねぇ」
「この子が暑いって騒いだからよ」
“日陰が欲しかった”
ただそれだけの理由だったらしい。
女神(精霊)はやはり気紛れな生き物だ。
図書館に戻ってミルク豆を茹でる。
採れたては甘い香りがして
噛むとプチッと弾ける食感がたまらない。
「私も味見するー!」
「ダメだよ。もうテーブルに運ぶからね」
昼食にフローリアの手料理を食べるはずが
急な打ち合わせが入ってしまい白紙に。
代わりに俺が手料理を振る舞っているワケだ。
エレイン許すまじ。
(好き嫌い聞けばよかったな...)
とりあえず肉はなしで。
ミルク豆を鞘から出して少し刻む。
それにモリヤギのチーズとスパイス等を混ぜて
丸く平たい形に成形。
こんがりと焼いたら偽装ハンバーグの完成だ。
あとはサラダとかキノコのソテーとか...
デザートまでは無理そうだな。
タッタッタッタッタ.....
「ゴメンねレオ君!私なに手伝えばいいかな?」
「あ...ええと、じゃあココット皿を」
デザートも作る事にした。
一緒にお料理タイムだなんてもうね...
(やばい...口元が緩みっぱなしだ)
今日のランチ計6品を作り終えた。
肉なしでも満足のヘルシーメニューだ。
カレンのハンバーグにだけ入っているけど。
「凄いじゃない。あなた才能あるのね」
「エレインさんもご一緒に」
仕事の手を休めて食事の時間。
みんなが美味しそうに食べてくれて嬉しい。
黒服の人達にも一応デザートを用意して
休憩室の冷蔵庫に入れておいた。
あとで見たら器が洗って伏せられていて
“美味しかった”と書かれたメモが挟んであった。




