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96.精霊は恋愛に疎い。

女神達とのトランプ遊びに興じながら

俺は事の顛末を聞き出した。


ここはフローリアの個人事務所で

建物は移動式の古い図書館を利用している。

庭も含めて丸々他の場所へと移るそうだ。


「最近はすぐに居場所を特定されるじゃない?」

「だから身を隠す必要があるの」


それからエレインは暗殺者(アサシン)とかではない。

並々ならぬ殺気を感じたのは

俺達の事を侵入者 (ファン)だと勘違いしたからだ。


役人のような格好をしているけれど

彼女の生まれた国では“スーツ”と呼ばれていて

仕事着として女性も着ているのだとか。


「アイドルを守るのも大事な仕事なのよ」

「手荒な真似をしてゴメンなさいね」


笛を吹いて飛んで来た黒服は彼女の雇った護衛。

魔術師から武闘派まで様々なメンバーがいる。

押さえ付けられた時に軽傷を負ったが

気絶している間に専属の白魔術医が治療したから

どこも痛くないし前より調子が良い。


それからブルーとの関係なのだけれど

彼女達はこの“世界”になる前からの知り合いで

奇跡的に再会を果たしたのだという。


まず亜空間から抜け出すのも運次第だし

この広い世界の中で以前の仲間と出会う確率なんて

ガチャでいう超絶レアな当たりに等しい。


「だから未練がましく男を探してるワケ」

「その言い方ヒドい!ブルーは少し黙ってて!」


興味なさげに“例の話題”を振るブルーに対して

頬を赤らめて抗議するフローリア。

少し怒った表情とかも...可愛い。

つい横目で観察してしまう。


「精霊は恋愛に疎すぎるのよ」

「私が渡した小説ちゃんと読んだ?」

「あれでしょ。竜と少女がなんとかって...」


なるほど。

彼女の裏アカでの名前“アリシア”は

伯父の小説に出てくるヒロインの名前からだ。

作者が俺の伯父だと教えたら凄く驚かれた。

.....なぜかこの人に。


バンッ!(床に手帳を落とす)


「え...作者って...フェル...フェルナンドさん」

「そうだよ。俺と一緒の街に住んでる」


動揺して固まるエレインは

一時間前の俺と同じような反応を見せた。

彼女は恋愛小説好きで伯父の大ファンなのだとか。


「素晴らしい方ですよね...ああ...(うっとり)」

「どうかな...よくわからないけど」


小説のイメージから誤解しているが

あいつはただの危険人物(ロリコン野郎)だ。

彼女の理想を壊すのは可哀想だから

詳細については伏せておくことにした。



残る手札は2枚ずつ。

カレンとフローリアの一騎討ち。


「勝ったぁ〜!」「あー負けちゃった」

「この子(精霊)はある意味引きが強いのよ」


トランプで想像以上に負け越した彼女のことを

ブルーは“引きが強い”のだと言う。


引き繋がりで渋すぎる厳冬ガチャの話をしたら

ブルーも同じように困っていると言っていた。

研究所の温室は固形燃料だと割高なのだ。


「死活問題よ。運営許されないわ」

「へーそうなんだ。私が回してみてもいい?」


ガチャに興味津々なフローリア。

さっきブルーが言っていた“引きが強い”とは

このことを指しているらしい。


俺は迷わずお願いした。

そう簡単に当たる筈もないのだけれど

推しが回すガチャならハズレでも許せるし

返却せず大事に保管するつもりだ。

(もちろんサイン入りで...)


召喚陣を開く...

「来なかったらゴメンね」

「大丈夫だよ。気にしなくていいから」


“Grand Challenge System Assign”


ブウォン...

シュゥゥゥ...シュタァァァン...キシャァァァ!!


フォン...“魔術ファンヒーターDX”


俺の欲しかった当たりを

いとも容易く一発で引き当てた女神(アイドル)。

しかもデラックス。


「やったねレオ君!」

「あ、ありがとうフローリア」


なんだろう。

凄く不思議な感じがする(2回目)


絶体絶命の状態から一転

推しのアイドルとトランプをしていたら

伯父の小説の大ファンであることが判明して

流れで俺のガチャを推しが引いたところ

欲しい当たりが手に入った。


人生なにがあるかはわからないと言うけれど

俺はこの状況を未だに飲み込めていない。

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