発覚
小鳥さん達の元気な声で目が覚めた私は、しばらくベッドの中でごろごろしていた。
種の行方を思い出してから、一気にいろんな記憶が戻ってきて、しばらく寝込んじゃったんだよね。
もちろん全部を思い出したわけじゃないけど。
うん、今ある記憶にはちゃんと向き合わないとね。
ベッドからよいしょって下りて、カーテンを開ける。
人間の姿だと、色々なことが簡単にできるからすっごく便利。
記憶を取り戻した時に、変化の仕方も思い出したのはホントに良かった。
まあ、やっぱりネズミにしか変化はできないんだけど。
さて、今日はとってもいいお天気で、おでかけ日和だ。
「おはよう、姫様」
「姫様、今日は何して遊ぶの?」
私の姿を見つけた小鳥さん達が、窓際にやって来て朝の挨拶。
そうだなあ。何して遊ぼうかなあ?……って、ダメダメ。
昨日の夜に決めたことがあるんだ。もう逃げないって。
「おはよう、みんな! あのね、今日は遊ばないの。大切な用事があるから」
「えー、そんなのつまんない」
「ダメだよ、ワガママ言っちゃ。姫様には大切な使命があるんだから」
若い小鳥さんを年上の小鳥さんが注意する。でも、ちょっとプレッシャー。
ううん、そんなことは言ってられない。頑張らないと。だって、私は……。
「姫様、おはようございます」
私が起きた気配を察したのか、アマリが部屋に入ってきた。
と同時に、小鳥さん達が一斉に飛び立つ。
どうやらアマリが苦手らしいんだよね。一緒に遊んでて何回か怒られたこともあるから。
うん、小鳥さん達にはとんだとばっちりだったよね。ごめんなさい。
「姫様、本日のご予定ですが――」
「ねえ、アマリ。今日はね、大切なことをいっぱいしたいの。だから予定は全部また今度にできないかな?」
言いかけたアマリの言葉を遮るのは失礼だけど、勇気が萎えないうちに言わないと。
今まで延ばし延ばしにしてた卑怯者の私とはオサラバなんだ。
「……何をなさりたいのですか?」
訝しげに顔をしかめて訊いてくるアマリに、ちょっとひるみそうになったけど、ダメダメ。
頑張るって決めたんだから。
「あのね、今日はお母様のお墓に行きたいの。……騎士のみんなと」
反対されるのはわかってたけど、一瞬見せたアマリの表情に私の体は縮んだ。
アマリはお母様のお墓に、私と自分以外を寄せつけようとしない。
今でもお母様をとてもとても大切に思ってるから。
それで私はアマリを裏切れなかったんだ。どんなに寂しくて、悲しくても。
「アマリ、私はもうすぐみんなと出発するんだよ。すごく長い旅になるから、お母様にちゃんとみんなを紹介したいの」
「……かしこまりました。それでは、その旨を皆様にお伝えして参ります」
しぶしぶだったけど、アマリが了承してくれてほっとしたよ。
強気に出て正解だったかな。
アマリと入れ替わりに女官さん達がやって来て、そこからは楽しいお話をしながら着替えをしたり、ご飯を食べたり。
うん。今日のご飯もおいしいね。元気モリモリ、もう大丈夫!
* * *
「まあ、とても綺麗な場所ね。素敵だわ」
「うん! ここはお母様のお気に入りの場所だったんだって。見晴らしがいいから、小さい頃からアマリと一緒によく来たって」
ミザールがほめてくれるから、不安だった気持ちが軽くなる。
にこにこ笑顔で答えると、今度はヴィーが優しく訊いてくる。
「このお花はジャスミンが植えたの?」
「ううん。それはアマリだよ。全部お母様の好きだったお花なんだって。私はアマリと一緒にお手入れを頑張ったの」
今までここには一人か、アマリとしか来たことがなかったから、ちょっとだけ不思議な感じ。
今回はアマリの同行を断固拒否したけど、みんながいるから賑やかでお母様もきっと嬉しいよね?
「……それで、ジャスミンは僕達に何か話があるのかな?」
みんな静かに祈りを捧げてくれたあと、リオトが切り出した。
そのことに私はドキッとしてしまう。そんなにバレバレだったのかな。
オロオロする私を見て、ファドが励ますように笑う。
「姫、そんなに焦らなくてもいいぞ。俺達は何があっても姫の味方だからな」
「本当に?」
思わず出てきた言葉に、慌てて口をおおう。
今のは私の本心? そんなつもりじゃなかったのに。
ああ、どうしよう。私ってとってもいやな子だ。
だけどファドは怒ってないみたい。ただ、みんなと一緒に心配して私を見てる。
「ジャスミン、もう我慢して笑う必要はないんだ。腹が立てば怒ればいいし、つらければ泣けばいい。ここ最近のジャスミンは、ずっと無理していただろう?」
カイドの優しい言葉。みんなの優しい気持ち。
やっぱり気付かれていたみたい。記憶が戻ってからの私の空元気。
もうこれ以上、みんなに嘘はつけないよ。
「あのね、みんな……私ね……」
「うん、どうした?」
「わ、私ね……本当は……本当は王様の子供じゃないの!」
思い切った私の告白に、誰かが鋭く息をのむ音が聞こえた。




