表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネズミの姫と七星の騎士  作者: もり
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/51

競争


「ミザール!」


 一生けんめい走って私が飛びつくと、ミザールはしっかり受け止めてくれた。


「ジャスミン……」


 ギュって抱きしめてくれるミザールの腕の中はちょっと苦しいけど、嬉しい。

 あんまり嬉しいから、頭でグリグリしちゃう。


「ミザール、心配かけてごめんね」


「いいえ。私の方こそ、ごめんなさいね」


 グリグリ攻撃のあとに顔を上げて、赤く潤んだ目を見つめて謝ると、ミザールは首を横に振って応えてくれた。

 でもこれじゃまた、ごめんなさい大会になっちゃう。

 だから楽しい話にチェンジ。


「ミザールが待っててくれるって聞いて、みんなで駆けっこして来たの」


「まあ、それでなのね。動物達が勢いよく向かってくるから、何事かと思ったわ」


 ミザールが笑ってくれたから、私も一緒に笑う。

 森に入ると、たくさんの動物さん達が会いに来てくれたんだよね。

 仲良しのシカさんもウサギさんもネズミさん達も。

 それで久しぶりに聖域まで駆けっこすることにしたんだ。

 もちろん、シカさんは最後にスタート。

 だけど、私が一番になれなかったのは背中のブランケットが重かったから。うん、きっとそう。


「姉さん、ジャスミンを独り占めしてないで、彼女を早く紹介してあげてくれないかな。また暴れられると困るし」


 ん? 紹介? 彼女?

 リオトの言葉に首を傾げる。

 カイド達は駆けっこには参加しなかったけど、すぐ後ろをついて来てくれてたんだよね。

 でも、全然息が切れてないのはちょっと悔しい。

 ふむむ。もっと鍛えないと。

 って、そうだ! 

 リオトの言う彼女って、もう一人の騎士さんのことだ!


 すっかり忘れてて大慌て。

 一つこのとしか見えなくなるのも私の悪いクセなんだよね。大失敗だ。

 初対面なのに、恥ずかしいとこ見られちゃった。

 せめてボサボサになった頭だけでもと、急いで毛づくろい。


「あら、暴れるだなんて、リオトは大げさねえ。ただちょっと不満をぶつけただけじゃない。……ファドに」


「あれがちょっとかよ!」


 ミザールの後ろから聞こえた鈴が鳴るような澄んだ声に、ファドが応えてる。

 騎士さん達はみんな仲良しなんだね。


「ジャスミン、紹介するわね。七星の騎士の一人、ドゥーベよ」


 ミザールが後ろへと振り向きながら、私を抱き直してくれた。

 するとミザールの背後から現れたのは、お人形さんのように可愛い女の人。

 濃い茶色の巻き毛と緑の瞳がとっても印象的。


「ジャスミン姫、初めまして。私、オスロ国を統べるドゥーベ・オスロと申します。親しい者は皆ヴィーと呼びますので、姫もそのようにお呼び下さると嬉しいですわ」


「は、はい! 初めまして、ジャスミンです。えっと、ご挨拶もせずに今までごめんなさい。あの、ビ、ヴィーもできたら私のことはジャスミンって呼んで下さい」


 軽く膝を折って挨拶してくれるヴィーに釣られて同じように屈んだつもり。

 でも、あんまり変わらなかったから、やっぱりペコリって頭を下げた。


「この凶暴女が女王だなんて、オスロ国の民も気の毒だよな」


 私の後ろで小さく聞こえたファドの声。

 ヴィーはニッコリ笑ってファドへと近付くと、そのまま片手でファドを掴み上げた。


「どこの誰が、凶暴ですって?」


 ええ!?

 すごく可愛いヴィーが! 背だって私より少し大きいくらいのヴィーが!?

 ファドは苦しそうにギブギブって感じで、ヴィーの華奢な手を叩いてる。


「オスロ国の守護獣はクマなんだよ。だから、ヴィーは怪力でね」


 ビックリ仰天の私に、リオトが教えてくれた。

 カイドは呆れたように溜息を吐いてるし、ミザールは楽しそうに笑ってる。


「あら、リオト。今、何か言ったかしら?」


「いいえ、女王様。何も言っていません」


 なるほど。守護獣がクマさんだから力持ちなんだ。

 って、あれ? 女王様? 

 そういえば、さっきファドもそう言ってたよね。


「ヴィーは女王様なの?」


「ええ、そうなの。我が国の王位は長子継承ですから。でも今は、弟に国のことは任せているので心配はいりませんわ」


「す、すごいんだね……」


 ヴィーはファドを片手でポイって放り投げちゃった。

 とにかく色々すごくて驚いてる私に、カイドがそっと声をかけてくれた。


「ジャスミン、これからどうする? このまま森で暮らしたいか?」


「このまま森で……?」


 でも、私にはしないといけないことがあるんじゃなかった?

 不思議に思ってカイドを見上げると、いつもの澄んだ蒼い瞳にぶつかった。

 そうだ。私が国には帰らないってワガママ言ったから。

 森で暮らすって、勝手に飛び出しちゃったから、カイドは私の気持ちを訊いてくれてるんだ。

 ふぬぬぬ。こんなに私はダメな子なのに、みんなとっても優しい。

 やっぱり頑張ろう。もう逃げないよ。


「私、聖国のお城に行く。それで、ちゃんと頑張る!」


「……そうか」


 決意を込めて私が答えると、カイドは柔らかく笑って頷いてくれた。


「でもね、ジャスミン。無理に頑張る必要はないのよ? ジャスミンはそのままでいいんだから」


 ミザールが私を撫でながら言ってくれたのは、前にもカイドがくれた言葉。

 そうだね。張り切り過ぎてたから、あの時はショックも大きかったんだ。

 ちょっとだけ力を抜いて、大きく深呼吸。

 

「……って、あれ? メルクは?」


 駆けっこにメルクは参加しなかったから、カイド達と来てるんだとばっかり思ってた。

 今さら気付くのも遅いけど、大丈夫なのかな?


「メルクは着替えの為に、森のはずれに停めた馬車に向かったよ」


「んなもん、その辺で着替えりゃいいのに、メルクは恥ずかしがり屋だよな」


「それが常識ですわ。変態はしゃべらないで」


 心配する私に、リオトがすぐに教えてくれた。

 そうか、メルクはお着換え中なんだ。

 ということは、人間になったメルクともうすぐ会えるんだ。

 それに馬車ってなんだかロマンチック。


「私も馬車に乗ってみたいなあ」


「もちろんだよ。聖城までは馬車で行くからね。でもまずは森を抜けないと」


「うん!」


 着いたばっかりで、動物さん達とはあまり遊べなかったけど、善は急げだもんね。

 というわけで、今度は馬車まで駆けっこしよう。

 今度は絶対負けられない! 

 だから、ブランケットはカイドに預かってもらった。

 それじゃリオトの合図で、位置について。

 よーい、どんっ! 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ