↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最底辺テイマーゴキブリに救われる~人間には不評、虫には大人気~  作者: 忍絵 奉公


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/13

第3話「ブローチ扱いの相棒と、草原の主」


 ギルドの扉を開けた瞬間、視線が刺さった。

「……また来たのか」

「Fランク未満のミトリーだろ?」

 知ってる。全部知ってる。

「……今日は違う」

 胸元に手をやる。

 そこには、黒く光る“ブローチ”。

「……頼むぞ、ゴキジェット」

 ぴくりとも動かない。完璧だ。

 依頼表の前に立つ。

 並んでいるのは、薬草採取、どぶさらい、工事の雑用。

「……まあ、ここからだよな」

 薬草採取の紙を剥がす。


「……ひっ」

 受付嬢が小さく悲鳴を上げた。

 視線は俺の胸。

「ああ、これ?」

 軽く叩く。

「ブローチだよ」

「ブローチ……?」

 顔が引きつっている。

「リアルすぎませんか……?」

「いい出来だろ?」

「悪趣味です……今にも動き出しそうで……」

「はは、そんなわけ――」

 言いかけてやめる。

(動くけどな)

 心の中だけで訂正する。

 受付嬢は恐る恐る依頼書を受け取った。

「……ミトリーさん」

「ん?」

「この依頼を達成できなければ、永久追放となりますが……」

 周囲が静かになる。

「本当に、よろしいのですか?」

 一拍。

「おう!」

 俺は笑った。

「任せろ!」

 ――ドッ、と笑いが起きる。

「無理無理」

「どうせまた未達成だろ」

 でもいい。

 昨日の俺とは違う。


 ネーリ大草原。

「……広っ」

 見渡す限り緑。

「普通に探したら詰みだな」

 しゃがみ込む。

 足元に蟻。

「……テイム」

 魔力を流す。

 すると、近くの蟻がぴたりと止まり――

 数が増える。

 十、二十。

 やがて足元に整列した。

「……よし」

 笑う。

「お前ら、薬草探してくれ」

 命令を出す。

 すると、蟻たちは一斉に散った。

「……ちゃんと指示しないと動かない、と」

 昨日とは違う。

 理解してる。

 “テイムしたやつだけが動く”。

 それだけだ。


 しばらく歩く。

 そして――

「……おぉ!」

 見つけた。

 薬草の群生地。

「当たりだ!」

 すぐに採取を始める。

「一本銅貨三枚……」

 どんどん袋に詰める。

「……いけるぞこれ」

 夢中になる。

 だが。

 どしん。

「……ん?」

 嫌な音。

 振り返る。

「……グアヌー」

 でかい牛型魔物。

 しかも一匹じゃない。

「……縄張りかよ」

 目が合った。

 鼻息が荒くなる。

「……やばいな」

 一歩下がる。

 もう一歩。

 逃げ――

 ドドドドド!!

「うわあああああああ!!」

 突進。

 速い。

 逃げ切れない。

「……くそっ!」

 その時。

 足元に蟻たちが戻ってきた。

「……!」

 閃く。

「お前ら、あいつの足に群がれ!!」

 命令。

 一斉に動く。

 黒い流れがグアヌーの足元へ。

 噛みつく。

 登る。

 まとわりつく。

「……効け!」

 グアヌーが足を振る。

 動きが鈍る。

「今だ!」

 俺は叫ぶ。

「目と鼻を狙え!」

 さらに集中させる。

 蟻が顔へ。

 鼻先へ。

 グアヌーが暴れる。

 進路がぶれる。

「よし、そのまま押し返せ!」

 数で押す。

 ひたすら押す。

 数十匹の蟻が、執拗にまとわりつく。

 ついに。

 グアヌーが後退した。

「……いける!」

 もう一歩。

 もう一歩。

 そして――

 背を向けた。

 ドドドドド、と離れていく。

「……はぁ……はぁ……」

 膝から崩れ落ちた。

「……助かった……」

 周囲を見回す。

 蟻たちは、まだこちらを見ている。

「……ありがとうな」

 小さく呟く。

 ゆっくりと、胸元を見る。

 ゴキジェットは、相変わらず動かない。

「……お前は、何もしてないのに一番偉そうだな」

 苦笑する。

「……でも」

 立ち上がる。

 袋いっぱいの薬草を見る。

「これだけあれば……余裕で達成だ」

 息を整える。

「……やるじゃねぇか、俺」

 まだ知らない。

 自分が“虫限定”というだけで、どれだけ戦えるのかを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。