↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最底辺テイマーゴキブリに救われる~人間には不評、虫には大人気~  作者: 忍絵 奉公


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/13

第2話「もしかして、虫しかテイムできないのか?俺」


 朝。

 目を開けた瞬間、現実を思い出した。

「……ゴキブリ、いたな」

 肩に視線をやると、黒くて小さい相棒が、ちょこんと乗っている。

「……夢じゃなかったのかよ」

 昨日の出来事を思い返す。

 テイム。命名。金貨。

 どう考えてもおかしい。

「……もしかして」

 俺はゆっくりと体を起こした。

「……虫、テイムしてる?」

 口に出してみると、じわじわ実感が湧いてくる。

「いやいやいや……まさかな……」

 でも、試してみる価値はある。

 俺は宿を出て、近くの路地へ向かった。

 地面を見る。

 いた。

 蟻だ。

「……よし」

 しゃがみ込む。

「テイム」

 ぼそっと呟く。

 すると――

 ざわっ。

「……え?」

 気づけば、周囲の蟻が一斉にこちらへ集まってきた。

 一匹、二匹、三匹……どんどん増える。

「ちょ、ちょっと待て……」

 最終的に、二十匹ほどの蟻が――

 俺の足元で、綺麗に整列した。

「…………」

 沈黙。

「……はは」

 肩が震える。

「……ははは」

 腹の奥からこみ上げてくる。

「はははははははははははははは!!」

 腹を抱えて笑った。

「俺、虫テイムしてるじゃねぇか!!」

 通りがかりの人が、ぎょっとした顔でこちらを見る。

「なんだあいつ……」

「蟻に話しかけてるぞ……」

 そんな視線、どうでもいい。

「いや、待て待て……これ、やばくないか?」

 冷静になる。

 ゴキジェットは金貨を持ってきた。

 じゃあ、この蟻たちは?

 俺はにやりと笑った。

「……よし、お前ら」

 指先でちょいちょいと示す。

「小銭、探してきてくれないか?」

 その瞬間。

 ゴキジェットが、すっと前に出た。

 そして――

 蟻たちの前に立つ。

「……お前、指揮するのか?」

 ゴキジェットは何も言わない。

 だが、確かに“リーダー”のように見えた。

「……頼んだぞ」

 次の瞬間。

 蟻たちは整列したまま、ゴキジェットの後ろについて――一斉に走り出した。

「すげぇ……」

 思わず呟く。

 それから、五分ほど。

 ほんの五分だ。

「……まさかな」

 と思った次の瞬間。

 帰ってきた。

 蟻たちが。

 それぞれの口に――

 銅貨、銀貨をくわえて。

「……え」

 さらに。

 ゴキジェットの背中には――

 金貨が、二枚。

「……は?」

 固まる。

「……嘘だろ?」

 受け取る。

 本物だ。

「……いきなり金持ちじゃねぇか!!」

 思わず叫ぶ。

 通行人がまた振り返るが、そんなの関係ない。

「やったああああああああああ!!」

 思いっきりガッツポーズをした。

 蟻たちは、じっとこちらを見ている。

「……あ」

 ふと気づく。

「お前ら、名前つけてないな」

 でも――

「まあ、いいか」

 笑う。

「じゃあな!ありがとな!」

 手を振ると、蟻たちはさっと散っていった。

「……自由だな」

 名前をつけてないからか。

 それとも元々そういう性質なのか。

「……ま、いっか」

 今は、それよりも。

「飯だ!!」


 食堂に入る。

 久しぶりの“ちゃんとした飯”だ。

「すみません!オークバーグ定食!」

「はいよ」

 運ばれてきた料理は、湯気を立てていた。

 肉。スープ。パン。

「……うまそう……」

 昨日から何も食べていない。

 手が震える。

「いただきます!!」

 がっつく。

「うまっ!!」

 涙が出そうになる。

 その時。

 肩の上で、ゴキジェットが動いた。

「……あ」

 そうだ。

 こいつのおかげだ。

「……ほら」

 肉をほんの一切れ、ちぎる。

「食うか?」

 そっと差し出す。

 ゴキジェットは、それを受け取った。

 もぐもぐ、と食べているように見える。

「……なんか、普通に可愛く見えてきたな」

 ぼそっと呟いた、その瞬間。

「おいおいおい!!」

 大声が響いた。

「ゴキブリじゃねぇか!!」

 店内がざわつく。

「うわ、マジだ!」

「テーブルにいるぞ!」

 しまった。

 完全に忘れてた。

「ちょ――」

 店員が、血相を変えて近づいてくる。

「失礼します!!」

 手には――丸めた布。

 叩く気だ。

「やばい」

 小声で呟く。

「ゴキジェット、避けろ。いったん逃げろ」

 次の瞬間。

 ゴキジェットは、すっと姿を消した。

 布が振り下ろされる。

 空振り。

「……あれ?」

 店員が周囲を見回す。

「消えた……?」

 ざわざわと空気が揺れる。

 俺は何事もなかったかのように、スープを飲んだ。

「……ふぅ」

 数秒後。

 店員が頭を下げた。

「お客様、大変申し訳ございません」

「え?」

「お代は結構ですので……どうか、お気になさらず」

「……マジで?」

「はい……」

 どうやら“店にゴキブリが出た”と思ったらしい。

「……ラッキー」

 小さく呟く。

 その時。

 足元から、気配。

 ちらっと見ると――

 ゴキジェットが、戻ってきていた。

「……おかえり」

 誰にも聞こえないように、そっと言う。

 ゴキジェットは、何も言わない。

 ただ、そこにいる。

「……これ」

 やばいな。

「……俺、人生変わるかもしれない」

 まだ完全には理解していない。

 でも――

 “虫たちが味方する世界”に、俺は足を踏み入れたらしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ハジメまして 最初あらすじを見た時に、虫?うわーって思ったけど…読んだら、ゴキブーちゃん向かってくる…あるあるある!あれムリムリムリーこっちに来るなー!って笑ってしまった(笑) 名前のゴキジェットも、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。