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最底辺テイマーゴキブリに救われる~人間には不評、虫には大人気~  作者: 忍絵 奉公


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13/14

第13話「キングは五枚、そして本物が出てきた」


 ディーラーが、静かにカードを並べていく。

「……では、確認を行います」

 テーブルの上。

 女の前に出された三枚。

 ――キング、キング、キング。

 そこに。

 別の山から、カードがめくられる。

 捨て札。

「……」

 一枚。

 キング。

 さらに。

 もう一枚。

 キング。

 合計――

「……五枚?」

 誰かが呟いた。

 沈黙。

 そして。

 ざわっ――!!

「おいおいおい!!」

「キングって四枚だろ!?」

「どうなってんだよ!!」

 空気が一変する。

 ただの疑いじゃない。

 “確定”だ。


 ディーラーは、カードを見つめたまま。

 ゆっくりと顔を上げた。

「……いかさま、ですね」

 その声には、感情がない。

 だが次の瞬間。

「誰か」

 短く、言った。


 ギィ……

 奥の扉が開く。

 重い音。

「……来たか」

 自然と、背筋が伸びる。

 出てきたのは――

 でかい。

 とにかく、でかい。

 肩幅。腕。首。

 全部が太い。

 “屈強”って言葉がそのまま歩いてる感じだ。

「……なんだ」

 低い声。

 部屋の空気が、さらに重くなる。


「イカサマの申告がありました」

 ディーラーが淡々と説明する。

「対象は、こちらの女性です」

 視線が集まる。

 女は――

 微笑んでいた。

「……あら」

 余裕の顔。

「ひどいわね」

 とぼける。

「運が良かっただけよ?」

「……」

 誰も信じていない。

 だが。

 証明できるかは別だ。


「……カードは?」

 男が聞く。

 ディーラーが示す。

「キングが、五枚出ています」

 一瞬。

 男の眉が、ぴくりと動いた。

「……ほう」

 ゆっくりと近づく。

 テーブルの前に立つ。

 カードを見る。

 指で、一枚つまむ。

「……確かに、五枚だな」

 低く呟く。


「……どういうことだ?」

 視線が、女に向く。

 逃げ場はない。

 だが。

「……さあ?」

 女は肩をすくめる。

「混ざったんじゃない?」

 適当すぎる。


 空気が張り詰める。

 次に動いたのは――男だった。

「……ふざけるな」

 低い声。

 ドンッ!!

 テーブルに拳を叩きつける。

 カードが跳ねる。

「この場で、それは通らねぇ」

 完全に“処刑モード”だ。


「……で?」

 男の視線が、今度は俺に向く。

「申告したのは、てめぇか」

「……ああ」

 短く答える。

 喉が少し乾いている。

「……どうやって気づいた」

 探るような目。

「……」

 一瞬、迷う。

(ゴキジェットのことは言えない)

 言ったら終わる。

「……違和感だ」

 俺は肩をすくめる。

「捨て札と、手札が合わなかった」

 半分本当。

 半分嘘。


「……なるほどな」

 男はじっと見る。

 見透かすように。

「……」

 数秒。

 長い沈黙。


「……いいだろう」

 男が口を開く。

「イカサマは成立だ」

 ざわっ。

 空気が揺れる。


「……処分は?」

 ディーラーが聞く。

 男は、女を見る。

「……どうする?」

 静かに。

 だが、重い。


 女は、初めて少しだけ表情を崩した。

「……」

 ほんのわずか。

 焦り。


「……さて」

 男が笑う。

 全然笑ってない。

「楽しませてもらった礼だ」

 視線が鋭くなる。

「ちゃんと払ってもらうぜ」


 その瞬間。

 俺は思った。

(……やべぇとこに来たな)

 今さらだが。

 完全に。

 引き返せない場所にいる。

 胸元で。

 ゴキジェットが、わずかに動いた。

 まるで――

 “まだ終わってない”とでも言うように。



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