第13話「キングは五枚、そして本物が出てきた」
ディーラーが、静かにカードを並べていく。
「……では、確認を行います」
テーブルの上。
女の前に出された三枚。
――キング、キング、キング。
そこに。
別の山から、カードがめくられる。
捨て札。
「……」
一枚。
キング。
さらに。
もう一枚。
キング。
合計――
「……五枚?」
誰かが呟いた。
沈黙。
そして。
ざわっ――!!
「おいおいおい!!」
「キングって四枚だろ!?」
「どうなってんだよ!!」
空気が一変する。
ただの疑いじゃない。
“確定”だ。
ディーラーは、カードを見つめたまま。
ゆっくりと顔を上げた。
「……いかさま、ですね」
その声には、感情がない。
だが次の瞬間。
「誰か」
短く、言った。
ギィ……
奥の扉が開く。
重い音。
「……来たか」
自然と、背筋が伸びる。
出てきたのは――
でかい。
とにかく、でかい。
肩幅。腕。首。
全部が太い。
“屈強”って言葉がそのまま歩いてる感じだ。
「……なんだ」
低い声。
部屋の空気が、さらに重くなる。
「イカサマの申告がありました」
ディーラーが淡々と説明する。
「対象は、こちらの女性です」
視線が集まる。
女は――
微笑んでいた。
「……あら」
余裕の顔。
「ひどいわね」
とぼける。
「運が良かっただけよ?」
「……」
誰も信じていない。
だが。
証明できるかは別だ。
「……カードは?」
男が聞く。
ディーラーが示す。
「キングが、五枚出ています」
一瞬。
男の眉が、ぴくりと動いた。
「……ほう」
ゆっくりと近づく。
テーブルの前に立つ。
カードを見る。
指で、一枚つまむ。
「……確かに、五枚だな」
低く呟く。
「……どういうことだ?」
視線が、女に向く。
逃げ場はない。
だが。
「……さあ?」
女は肩をすくめる。
「混ざったんじゃない?」
適当すぎる。
空気が張り詰める。
次に動いたのは――男だった。
「……ふざけるな」
低い声。
ドンッ!!
テーブルに拳を叩きつける。
カードが跳ねる。
「この場で、それは通らねぇ」
完全に“処刑モード”だ。
「……で?」
男の視線が、今度は俺に向く。
「申告したのは、てめぇか」
「……ああ」
短く答える。
喉が少し乾いている。
「……どうやって気づいた」
探るような目。
「……」
一瞬、迷う。
(ゴキジェットのことは言えない)
言ったら終わる。
「……違和感だ」
俺は肩をすくめる。
「捨て札と、手札が合わなかった」
半分本当。
半分嘘。
「……なるほどな」
男はじっと見る。
見透かすように。
「……」
数秒。
長い沈黙。
「……いいだろう」
男が口を開く。
「イカサマは成立だ」
ざわっ。
空気が揺れる。
「……処分は?」
ディーラーが聞く。
男は、女を見る。
「……どうする?」
静かに。
だが、重い。
女は、初めて少しだけ表情を崩した。
「……」
ほんのわずか。
焦り。
「……さて」
男が笑う。
全然笑ってない。
「楽しませてもらった礼だ」
視線が鋭くなる。
「ちゃんと払ってもらうぜ」
その瞬間。
俺は思った。
(……やべぇとこに来たな)
今さらだが。
完全に。
引き返せない場所にいる。
胸元で。
ゴキジェットが、わずかに動いた。
まるで――
“まだ終わってない”とでも言うように。




