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最底辺テイマーゴキブリに救われる~人間には不評、虫には大人気~  作者: 忍絵 奉公


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12/15

第12話「見えてしまった“ズル”と、折れるかもしれない腕」


「……もう一回だけ」

 俺は席に座り直した。

 さっきの勝ち。

 七十五枚。

「……ぼろもうけやん」

 にやける。

 ビギナーズラック。

 それに――

(ゴキジェット)

 こいつの力。

 完全に“見えてる”。

「……いけるな」


 カードが配られる。

 ゴキジェットは、気づかれないように飛び回る。

 薄暗い店内。

 誰も気にしない。

 全員、カードしか見てない。

(……よし)

 頭に情報が流れ込む。

 俺は――6のワンペア。

 左の男――3のワンペア。

 右の男――9のワンペア。

 女の隣――10のワンペア。

 そして――女。

(……ブタ?)

 意外だ。

 さっきは強かったのに。

「……まあいい」

 様子を見る。


 コインが積まれる。

 どんどん。

 誰も降りない。

(……なるほど)

 これは。

「……スリーカード勝負だな」

 全員、狙ってる。

 交換。

 また交換。

 コインが減る。

 空気が重くなる。


「……ストップ」

 女の隣の男が言う。

 カードを出す。

「10のスリーカードだ」

「……おぉ」

 ざわつく。

 強い。

 かなり強い。

(……ここまでか)

 俺はチップを引いた。

「降りる」

 冷静に。

 無理はしない。


 だが。

「……じゃあ、私も」

 あの女がカードを出す。

「……キングのスリーカード」

 静かな声。

 空気が凍る。

「……は?」

 誰かが声を漏らす。

 俺も、固まった。

(……おかしい)

 さっき見た。

 確かに。

(ブタだった)

 それが――

(キング三枚?)

 ありえない。

 さらに。

(……キング、捨てられてたよな?)

 左の男。

 右の男。

 確かに“キングを捨てた”。

 見た。

 ゴキジェット越しに。

(……じゃあ、なんで)

 頭が回る。

(枚数……)

 このゲーム。

 カードは制限されてる。

(……おかしい)

 明らかに。

「……」

 女は微笑む。

 当然のようにチップを回収する。

 誰も、何も言わない。

(……違う)

 言えないんだ。

 ここは――

 マフィアの賭場。


 俺は、ゆっくりと立ち上がった。

「……なあ」

 ディーラーを見る。

「はい?」

「いかさま発見」

 一瞬。

 空気が止まった。


 ざわっ。

「……は?」

「マジで言ってんのか?」

 周囲がざわつく。

 ディーラーは、にこりと笑った。

「……イカサマ申告、ですね?」

「そうだ」

 俺は頷く。

 心臓がうるさい。

 でも、引けない。

「……確認します」

 静かな声。

 そして。

「もし、その申告が間違っていた場合」

 少しだけ、間を置く。

「持ち金は没収」

 淡々と続ける。

「その上で――」

 視線が、俺の腕に落ちる。

「両腕を折って、退場となりますが」

 にこりと笑う。

「よろしいですか?」


「……」

 空気が、重い。

 さっきまでの賭けとは違う。

 本物の“賭け”。

 命まではいかない。

 でも――

「……腕か」

 ぽつりと呟く。

 折られたら。

 終わる。

 冒険者としても。

 何もできなくなる。


(……どうする)

 頭の中で、ぐるぐる回る。

 引けば――

 安全。

 だが、負けたまま。

(……いや)

 違う。

(……俺、見たよな)

 ゴキジェットの映像。

 確かに見た。

 確実に。

(……あれは、ズルだ)

 間違いない。


 ちらっと女を見る。

 微笑んでいる。

 余裕。

(……こいつ)

 確信してる。

 バレないと。


「……」

 俺は、息を吐いた。

 そして。

「……いいぜ」

 顔を上げる。

「やってくれ」

 ディーラーをまっすぐ見る。

「申告、通す」


 ざわっ。

「……あいつ、マジかよ」

「腕折られるぞ……」

 周囲の声。

 全部無視する。


 ディーラーの笑みが、少しだけ深くなる。

「……承知しました」

 ゆっくりとカードに手を伸ばす。

「では――確認を」


 その瞬間。

 空気が変わった。

 ただの遊びじゃない。

 ここはもう――

 “命を削る場”だ。



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