7話 座敷童の福?!
◇◇◇◇◇
つい昨日、札を買ったばかりの符屋へ、華乃は今日もまた顔を出す。
店内は比較的広く、整然とショーケースの並ぶ清潔な空間で、女性でも尻込みせずに店へ入れる事がありがたい。
「すみません、お符を鑑定して貰いたいのです」
華乃が店員に声を掛ける。
「ああ!昨日のお客さん!…もう物の怪を捕まえたんですか?!」
「はい、今日ダンジョンに入って…幸い一層で物の怪に遭遇したんです!」
「ええ?!それは凄いですね!」
華乃は、はにかみながら符を店員へ差し出す。
「ノーマルの物の怪なのですが…聞くところ、今は少し値が上がっていると聞いたので…」
希少度レアである座敷童については、始めから売るつもりは無かった。
確かにレアなら、もっと値は上がるかもしれないが、自分を待っていてくれた座敷童に無体な事は出来ないと、華乃は考えたようだ。
(それに座敷童さんは福をもたらしてくれそうですしね)
胸ポケットに仕舞ってある符に手を当てると、
心なしか、暖かい気がした。
「どれどれ?符を拝見しますね…」
清潔な手袋を着用した店員は、符を慎重に手にし、専用の検査機器に入れる。
暫しの後、スキャンが終了すると、モニターに鑑定結果が表示された。
「おおー!化け狸ですか!」
店員は興奮した雰囲気で声を弾ませる。
「今、相場が上がってる符なんですよね!
しかも…今日はかなりラッキーですよ!お客さん!」
「ラッキー…なのですか?」
華乃はきょとんと首を傾げる。
「はい、化け狸は最近人気で品薄でしたが…近日中にどうしても手にしたいという方がいらして…
入荷できたら倍の金額で引き取りたいと言っているのです」
「まあ…!」
それは凄いと、華乃も目を輝かせる。
「今の相場が三千円でして…その倍で、という事なので…六千円でお引き取りしますが…
いかがですか?」
ノーマル符では、破格の値に華乃はコクコクと二つ返事で了承する。
「ありがとうございます!」
「こちらこそ、ありがとうございます」
まさか、初日からこんな幸運があるとは思わず、華乃はつい、顔がニヤけてしまう。
(良かった…これで今日のご飯と寝床は確保できそうです!)
「本当に幸運でしたねお客さん!また当店にお越しください!」
店員に笑顔で送り出され、店を出た華乃は、ふと気付く。
「あれ…?もしかして、この幸運って…」
胸ポケットの符に手を当てる。
(座敷童さんのお陰…ですかね?)
華乃は符へ向けて微笑み、店を後にする。
◇
「ああ…満腹って幸せ…コンビニのカップラーメンとおにぎりって素晴らしいですわ!美味しゅうございました!」
うら若き女性の夕食にしては、ジャンキーだが、所持金数千円では贅沢もできないだろう。
華乃は、昨日も泊まったネカフェで、スマートフォンを確認する。
「わわ!サイトの登録者数が三十人も!」
事前告知も無く始めた初日の配信で、この成果は、かなり良い方だと華乃は浮かれる。
しかし、一方…励ましのコメントに紛れて、
批判的なコメントも幾つかあった。
『ヤラセ臭い』『調子乗りすぎ』
「色々なご意見もありますよね…善処しなくては」
だが、登録者三十人もいるのだ。
励ましのコメントも多いのだ、華乃は明日もまた、ダンジョンへ行き配信する決意を固める。
初日は、かなりな幸運で物の怪を捕まえられたが…明日は屋敷のレポートでもしてみようかと
予定を立ててみる。
「今更ですが…やけに疲れました…スキル使うと疲労も増すのかも?」
早めに休む事にする。
椅子の上では快眠とはいかないだろうが、もっと稼げるようになる迄は我慢だ。
「配信による収益なんて…まだまだ先のことですねぇ…」
金を稼ぐだけなら、別の仕事の方が楽なのだろうが…
華乃には、やらなくてはいけない目的があった。
「お父様、お母様…仇は必ずとりますから…」
そう、小さく呟いて華乃は眠りに落ちていくのだった。
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