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5話 【真眼】で見えるもの


◇◇◇◇◇



「もう少しだけ一層を探索してみて、今日は終了としますね」



初日の視聴者人数と、初の物の怪入手に気持ちがいっぱいになった華乃は、今日の収穫は終わりとばかりに、気楽に一層を探索する。


玄関から一直線に伸びる廊下を更に奥へ進むと、行き止まり、丁字に廊下は分かれている。



「左右…どちらへ行きましょう?」



『右かな?』

『左!』

『どっちもだろ!』



チャット欄のコメントに苦笑いした華乃は、

勘で右側の廊下へ進むことにする。


右側の廊下の奥にもまた、別の配信者が賑やかにレポートしているようだ。


華乃は、別の配信者の邪魔をしないように、

手前の障子戸の部屋へ入ってみる事にする。



「あ……ここ……」



華乃は戸を開くと、僅かに目を瞠り動きを止めた。



『どうしたんだ?』

『何かあった?』



チャット欄も反応する。



「あ、ええと…ちょっと、懐かしくて…

い、いえ…何でも無いんです…が」



変な事を口走ると、またチャット欄が荒れると思い、華乃は口籠る。


しかし、華乃は部屋の中の棚へ真っ直ぐに歩いていく。



(この棚…記憶があります、幼い頃のわたくしの子供部屋にあった棚ではないでしょうか?)



色や型…自分が貼った記憶があるシールまであり…

華乃はそっと棚に指を這わせる。



「あ!…ぬいぐるみさん…」



その棚に飾られていた物の一つに、華乃は反応する。



『うわぁ、何それ汚い…』

『もっと下の層なら呪われてそうだな』

『残念ー!一層だからそういうのは無いよw』



確かに呪われてそうな、薄汚れた不気味とも思える見た目のぬいぐるみだ。


だが華乃は大事そうに、そのぬいぐるみを手にして、優しく撫でる。



(この、ぬいぐるみ…幼い頃、大好きだったのですよね…ずっと側に置いていたのを覚えています)



幼い頃の新たな記憶が蘇り、華乃は胸が熱くなる。



『どうしたのー?』

『何か気になるの?』



視聴者からのコメントに、華乃は少し声を詰まらせながらも「何でもない」と応える。


この、ぬいぐるみを持って行こうかと眺めていると、不意に微妙な違和感を感じた。



「…あれ?ぬいぐるみが…少し動いた気が…」



華乃の小さな呟きに、チャット欄は流れる。



『えええ?怖い!!』

『やっぱ呪われてる物?』

『じゅ、呪物ー?!』



「いえ…そんな禍々しい雰囲気は無いと思うのですが…」


(だって、わたくしの大切なぬいぐるみさんですもの!)



戸惑う華乃は、スキルを使って“見て”みる事にする。



「スキルを使ってみますね、何も無ければ…

持って帰りたいのです」



『おおー!でた!!自称【真眼】!』

『とはいえ、コレも多分サーチ済みだと思う』

『楽しみ』

『持って帰る?!!』



流れるチャット欄に苦笑いしながら、華乃は

集中を高める。


【真眼】


手の中のぬいぐるみが仄かに発光する。


発光するのだが…

それは、ぬいぐるみからでは無かった。



「ぬいぐるみには…反応無しです」



『なぁんだ、残念ー!』

『さすがにね?一層でそんな物の怪いかいから』

『不気味なだけの、ぬいぐるみだったか』



「…ですが、ぬいぐるみに“付着している“毛玉”には反応がありました」



続く華乃の言葉に、収まりかけていたチャット欄が騒ぎ出す。



『け、毛玉だとおー?!』

『待って待って!毛玉に…物の怪が憑依してる?』

『絶対分からないって!細かすぎw』



「あ?!」



スキルを使った途端、ぬいぐるみに付いていた毛玉から、

何かが飛び出したような気がした。



『どしたのー?』



「ま、待ってください…スキル使ったら、毛玉から、何かが飛び出しました!」



『えええ?…な、何が?』



「部屋の角へ行ったみたいです…」



華乃は、ドキドキしながら視線を部屋の角へ移し、再度スキルを使う。


【真眼】


すると、部屋の角に鬼火が灯り、

やがて、小さな人形に変わっていく。



〈名称〉座敷童

〈危険度〉低

〈希少度〉レア

〈能力〉イタズラ、家の者に福をもたらす

〈弱点〉孤独



「ええええええー?!」



『な、何なに??』

『何か見えたの?』



華乃の驚きに、チャット欄も騒然となる。



「すみません!ええと…部屋の角へ逃げた鬼火…

皆さまは見えます?」



『うーん?鬼火は見えるかも?』

『いや…うっすら人影も?』

『何コレ?怖過ぎる』



「ええと…この物の怪、“見て”みたら、座敷童らしいんです!希少度レアみたいです!」



華乃が興奮したように、一息で言い出せば、

チャット欄も更に盛り上がる。



『う、嘘だろ?』

『ちょ、レアって…マジかあぁぁ?!』

『ダンジョン一層にレア??』



大騒ぎになったチャット欄を見れば、既に視聴者人数は七十人を超えていた。



(ちょ、初日でこんな人数の方が観てくださるなんて…大変ですー!)



華乃は、パニックになりながらも、目の前の

座敷童に冷静に対処しようと、自分を落ち着ける。



「とにかく、この座敷童さんを捕まえてみますね!」



『ああ!待て待て!レアだと失敗もあるぞ!』



視聴者の言葉に、華乃の動きは止まる。



◇◇◇◇◇

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