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3話 初配信は…


◇◇◇◇◇


配信を開始したとしても、さすがに無名の華乃へ

すぐに視聴者が来るとは思っていない。


だが…この配信が記録となればいいと思い、華乃は挑戦する。



(ここでの記録こそが報復の第一歩ですもの)



「皆さま、初めまして…黒鳥華乃と申します」



緊張で声のボリュームは小さめだが、淡々と言葉を紡いでいく。



「ここが、屋敷型ダンジョンの入り口ですね…では、お邪魔いたします?

…あ!…ふふ、ちゃんと玄関が残ってるのですね!

…懐かしいです」



配信を開始してから、五分ほど経ち視聴者人数一人〜二人が頻繁に出入りしている状況だった。


しかし、先ほど華乃が口にした“懐かしい”と言う言葉に反応した視聴者から、コメントが来た。



『懐かしいって、どういう事?』



初のコメントに、華乃は少し驚きながらも、返事をする。



「そのままの意味ですわ!…この屋敷は、わたくしの生家だったのです」


『は?嘘つけ!こんなダンジョンが自分の家な訳無いだろ!』

『ま、初回配信の釣りってヤツじゃない?』

『よくあるよなー!変な事言って注目集めようって』



華乃の言葉に、批判的なコメントが幾つか流れる。



「今は…信じていただけないのは仕方ないです…

訳あって、真実の立証は困難なので…」



華乃の言葉に、五人ほど集まっていた視聴者が次々と抜けていった。



(やっぱり、中々難しいものですね…)



華乃は心の中でため息を吐きながらも、気を取り直してダンジョン内へ足を進める。



「わ!記憶では…こんなに廊下は長くは無かったと思います…やっぱりダンジョン化して、空間が歪められたのですね!」



木製の廊下は、奥が見えない程長く続いている。


廊下の両脇には、幾つも扉や襖が連なり、はやりダンジョン然としている。


コツコツと響く靴音に、華乃は心細くなっていくのだが…



「ぎゃははははっ」



不意に廊下の奥から笑い声が聞こえた。



「さすがに一層じゃ、物の怪なんて出ませんて!

もう、さっさと二層行っちゃいましょう!」



仲間を連れた配信者が内部にもいるようだ。


耳を澄ませば、両脇の部屋からも人の足音や声が微かに聞こえる。



「人気のダンジョンみたいですね、ここ…

同業者さま達が割といるようで安心しました」



つい、華乃が本音を呟いてしまうと、またコメントが動く。



『一層なら、女の子一人でも探索できるよ』

『一層は、まあ、初心者配信者の肝試し場みたいなものだからねー』



また三〜四人来てくれた視聴者に、華乃は質問する。



「やっぱり一層では物の怪…居ないですかね?

わたくし、レア物の怪を捕まえて換金したいのですが…」



『無理無理無理!

レアどころか、ノーマル物の怪だって居ないよ』

『レア物の怪だって、捕まえても物によっちゃ、千円にもならないよなぁ?』



そんなコメントに、華乃は力無く肩を落とす。



「…そ、そうなのですか?

千円……でもパンは余裕で買えますわね…」



華乃が力を抜いた腹からは、腹の虫が盛大に空腹の音を鳴らした。



「わわ?!す、すみません!お腹の音…聞こえちゃいました?…ちょっとお腹が空いてしまってて」



(視聴者からは見えない)顔を赤らめたまま、狼狽える華乃に、コメントはまた流れる。



『ははは!なんか面白い!』

『ちょっと天然で可愛いな』



悪い反応では無いのだが、華乃は羞恥でそれどころでは無い。


少し賑やかになりだしたコメント欄に釣られ、視聴者はいつの間にか十人になっていた。



「わ、わ、笑わないで下さい!わたくしは、今日のご飯を食べる為に、稼がなくてはならないのですー!」



華乃が控えめに叫んだ時だった。



「…あ……」

 


辺りから微かに鈴の音が、聞こえた気がしたのだ。



◇◇◇◇◇

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