27話 絶望からの救い
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亀裂から入ってきたのは、探索者のシンだった。
「なっ…?!ま、まさか…この空間に他人が入れるなんて…世夜子は言ってなかったぞ!」
狼狽え、興人は後退る。
「…お前が黒幕……いや、黒幕の腰巾着か」
シンは凍えるような声で吐き捨てる。
「こ、腰巾着だって?!何を言うんだ?!」
興人は二体の物の怪の後ろまで下がり、物の怪にシンへの攻撃を命じようとするが…
「……ふん!」
シンは、刀を振り翳し二体の物の怪を一振りで斬り倒す。
「は、はぁ?!世夜子から貰った物の怪が!!」
「護身に貰ったのが、たかがレア二体か?
俺にとっては、敵でもない」
「ひいっ…!か、金か?金ならやる!だから…」
興人が腰を低くしながら、にへらと口を歪ませる。
「弱き女には強気のくせに…本当にゴミ野郎だな
…だが、彼女を見くびらない方がいいぞ?」
「う、うるさい!この女は元々僕のものなんだ!
他人が口を挟むな!
逃げ出したから、再調教しようと…」
「本当に自分を持って無い奴だな?
…そう言って、世夜子に唆されたんだろう?」
シンは鋭い視線と刀の切先を興人に向けた。
「ひ、ひいぃ?!」
興人は腰を抜かし、ずるずると後退る。
「た、確かに…今回の計画は…世夜子が全て考えてくれて…だ、だが…
華乃も手に入れたいという気持ちは…」
「黙れ」
怒気を帯びた冷たいシンの声に、興人は縮まる。
興人よりずっと年下であろう、少年姿のシン…
だが、姿と立ち居振る舞いが合致しない。
「お、お…お前は…何者なんだよ…?!」
興人のやっとの虚勢も彼の前では意味を為さない。
シンは、刀を振り翳す。
「ひ、ひぃ?!や、やめ…ぎ、ぎゃああぁぁ」
一片の迷いも無く、シンは興人を切り捨てる。
◇
華乃が瞬きをすると、二層へ戻っていた。
「っは!!…た、助かった…?」
夢の中では、身じろぎひとつ出来なかった華乃は、ようやく息ができた心地だ。
「…大丈夫か?…すまん、助けに来るのが遅れたな」
目の前には、シンがいた。
(夢では、無かったのですね…)
シンがまた、助けに来てくれた。
安堵した途端、涙が溢れてきた。
「す、すみませ…う、うぅ……」
華乃は必死で涙を拭う。
これは、怖かったからじゃない、安堵した反動なだけだ…と、自分に言い聞かせる。
そんな華乃へ、シンは近づき首筋へ触れてくる。
「…っ?!」
華乃は、反射的に恐れる。
つい、先程までの興人の指の感触を思い出してしまうからだ。
「いや、すまない…用があるのは、君の首筋だ」
「く、首筋…ですか??」
何の為だと怪訝に思いながらも、華乃は大人しくする。
「…うん、やっぱりここにあったか」
「…?」
華乃はキョトンとするが、シンの指が首筋に触れた瞬間、ピリリと痛みが走った。
「え?…え?…何?」
華乃は驚くが、しかし…急に体の重さが無くなった。
周囲の空気も、驚くほどに軽く感じる。
そして、何より…
「…あ!!階段が…!!」
あんなに探しても見つからなかった階段が、目の前にあったのだ。
「君を空間に閉じ込める呪縛…三つの印の、最後の一つは、君の首にあったんだよ」
「く、首に?…ええ?」
何故?…いつから?
華乃は混乱するが…一昨日の覆面男達の件が頭を過ぎる。
(あの時…確かに首元に触れられました!)
「暴漢に襲われた時に…印を付けられたのですね…って、事は…」
華乃は首元を触りながら眉を顰める。
「ああ、あの暴漢と興人はやっぱり繋がっていた」
華乃にも合点がいった。
貴兼門興人…これ程までに最低な男だったとは…
「ですが…きっと、敵は…興人さんだけでは…
ない……そういう事ですね?」
興人が何度か口にしていた名。
華乃はぎゅっと手を握る、その手が震え出さないように。
「そうだな…簡単に言えば、貴兼門興人は単に私欲を利用されていただけの雑魚だ」
シンもどこか遠くを睨みつけるように、目を細めた。
世夜子……
華乃の思考にその名が浮かぶ。
単なる勘だった…しかし、茶会で見た時から、世夜子の雰囲気は他と何かが違っていた。
(彼女は…何者なの?)
華乃はそう思いながらも、既に心の奥で、その答えは出ていた。
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