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17/23

17話 助けてくれた少年


◇◇◇◇◇



「やべぇ!誰か来たぞ!」

「クソ…時間かかり過ぎたか!」



覆面男達が慌てて声の方を振り向く。



「いや…来たのは一人だな?」

「しかも、まだ子供じゃないか?」



階段からやって来たのが一人で、しかも少年だと気付くと覆面の男達は再び落ち着きを取り戻す。



「おい、小僧!邪魔するな!」

「黙って上へ行っておけ!…さもなけりゃ…」



「さも無ければ…何だと言うのだ?」



覆面の男達の凄みのある声に、怯えた様子を見せない、少年は更に階下を下る。


真っ直ぐに、覆面の男達に近づいてくる少年は

見たところ十四、五くらいの年齢だろう。


年齢の割に高身長で、息をのむような、精巧な顔立ちの絶世の美少年だ。


落ち着き払ったその雰囲気は、年齢以上の風格を漂わせ、覆面の男達さえも気圧していた。



「お、おい…あの小僧、刀を持ってやがる」

「模造刀だろ?子供に刀が扱えるかよ!」



覆面の男達のそんな話しを耳にした少年は、僅かに口角を上げる。



「…試してみるか?」



静かに声にした少年は、鞘から刀を引き抜く。


覆面の男達が息を呑む…その刹那に少年は動き始めていた。



「う、ぐあぁぁ?!」



一人目の男を刀の峰で強かに打ちのめし、

そのままの流れで柄を、次の男の顔面に叩き込む。


余りの素早さに、華乃も覆面の男達でさえ、動きを捉えられない。


二人の覆面男らは華乃にのし掛かっていた為、少年の動きに間に合わなかった。


三人目の男はスマートフォンを手に少し離れたところに居たが…少年は刀を持ちながら、男へ一息に距離を縮める。



「う、うぎゃあぁ!」



少年の俊敏な攻撃に、逃げる暇も与えられず、三人目の男も股間を強かに蹴られ、続け様に顔面を峰打ちされ倒れ込む。


落とした男のスマートフォンを少年は踏み潰す。



「お、おい…コイツ、やべぇよ!に、逃げるぞ!」



先ほど、河精の突撃でダウンしていた最初の覆面男は起き出し、逃げ出そうとする。



「…あっ」



華乃は思わず逃げ出す男を捕まえようと立ち上がる。



「逃さぬよ」



少年は取り出した自らの符を投げる。


符からは、鬼が出現し、覆面の男達を完全に拘束する。



「お、鬼の物の怪さん?!…初めて見ました」



つい、華乃が呟いてしまうと、少年は彼女の方を振り返る。



「Sレアの物の怪だ」



少年がほんの少しだけ口角を上げて華乃の呟きに反応した。


Sレア…その響きに華乃の目は輝く。

Sレアの物の怪など、一般人は殆ど見る事はないのだ。



「凄いです!実物見るのは初めてです!」


「君…その……大丈夫か?」



華乃の笑顔とは反対に、表情を曇らせる少年は、言いにくそうに、視線をずらし、気遣わしげに華乃へ問う。


華乃は、はたと気付き、はだけたブラウスを

急いで整える。



「だ、大丈夫です!被害は第一ボタンだけで済みました!…助けていただき、ありがとうございます」



改めて、華乃は少年に深々と頭を下げた。

今頃になって指先が震えだす。


少年が来てくれなければ…どうなっていたかと思うと、胸が苦しくなった。



「早く、警察に通報した方がいい…コイツらを捕まえて貰えれば安心だろ?」


「…そうですね」



俯きながら震える指先でブラウスを抑えている華乃を見て、少年は痛ましそうに眉を顰めていた。


華乃もまた、落ち着きを取り戻し、状況を把握しようと記憶を辿る。


この覆面の男達は…華乃に乱暴をし、それを撮って公開しようとしていた話しを思い出す。



(嫌がらせの分類でしょうか?…それとも別の意図が?

 …今回はこの少年に助けていただけたので無事でしたが…)



女性が一人で行動するという事に、華乃は改めて危険があるのだと認識する。

 


(あ…それに河精さんも…助けてくれたのですよね)



今は、符の中へ戻っているが…

守ってくれた河精や、少年がいなかったら…



(配信を出来なくさせる為…とも言っていましたね)



自分の知らぬところで、悪意ある者が華乃の失墜を望んでいるのだと思うと…


華乃は震えが止まらず、沈んでいく心を引き上げられなかった。



「少しの間は一緒に居てやるから…そう落ち込むな」



少年が静かに呟いた言葉に、華乃は顔を上げた。



「…いいのですか?」


「暫くは…不安だろう?」


「……っ!」



少年の穏やかな声に、華乃は緊張の糸が切れそうになった。


声を出せば泣き出してしまいそうだった。



(一人で生きていこうと決めたけれど…周囲の暖かさに感謝しても、しきれません…)



華乃は、未だ震えの残る指先を、ぎゅっと握り締めるのだった。



◇◇◇◇◇

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