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灯台島へ その13

静かな海風が吹いていました。


もう黒い霧はありません。


灯台島――いや、


霧守りの背中に広がる古い街は、


月明かりに照らされていました。


崩れた灯台の跡からは、


白い光がやさしく空へ伸びています。


ショウタはその場に座り込みました。


「つ、疲れたぁぁ……。」


サヨもへたり込みます。


「今回ほんと大変だった……。」


ベルフェルはパンを配り始めました。


『おつかれ塩パン』


エリシアが小さくうなずきます。


「今回は名前がまともですね。」


「失礼だな。」


ピースケは静かに海を見ていました。


その横に、


霧守りの巨大な顔が近づいてきます。


もう怖くありません。


青い目は穏やかでした。


サヨが手を振ります。


「元気になってよかった!」


霧守りは小さく鳴きました。


ゴルル……。


超巨大なので“小さく”でも海が揺れます。


ショウタが転がりました。


「小さくない!!」


みんな笑います。


そのとき。


白い服の少女が、


崩れた灯台跡を見つめていました。


灯台守が静かに近づきます。


もう赤い目ではありません。


疲れた普通の人の顔でした。


「……君の名前を聞いてもいいか。」


少女は少し驚き、


それからやさしく笑います。


『リュナ。』


灯台守は小さく繰り返しました。


「リュナ……。」


まるで、


ずっと忘れていた大切な言葉を思い出したみたいに。


リュナは海を見ながら言います。


『また灯台を作ろう。』


灯台守が目を見開きました。


『今度は、人を苦しめる灯じゃなくて。』


白い光が風に揺れます。


『帰ってこられる灯台。』


静かな沈黙。


灯台守はゆっくりうなずきました。


「……ああ。」


ショウタが小声でサヨに言います。


「なんか急に感動エンド感あるな。」


サヨも小声。


「毎回クライマックス映画みたいだよね。」


その瞬間――


ぐぅぅぅぅ。


全員が振り向きます。


犯人はピースケでした。


巨大ニワトリのお腹が鳴っています。


静寂。


ショウタが吹き出しました。


「ピースケぇぇぇ!!」


サヨも笑い転げます。


「感動返してー!」


ピースケはちょっと恥ずかしそう。


「お腹すきましてぇ……。」


ベルフェル、即座にパン差し出し。


「食べろ。」


「準備早いな!!」


霧守りも興味津々で巨大な顔を近づけてきます。


ショウタが青ざめました。


「ま、まさか食うの!?」


ベルフェルは真顔。


「超巨大サイズが必要か。」


「パン職人の対応力どうなってんだ!」


そのとき――


海の向こうから朝日が昇り始めました。


黒かった海が、


少しずつ金色に変わっていきます。


長い夜が終わったのです。


リュナは朝日を見ながら、


小さくつぶやきました。


『きれい……。』


灯台守も静かに空を見上げています。


何百年ぶりかの、


穏やかな朝でした。


そして。


ピースケたちの新しい冒険も、


また静かに始まろうとしていたのでした。

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