灯台島へ その12
ゴォォォォォォ!!
青い光が、
灯台島全体を包み込みました。
黒い霧が吹き飛ばされ、
空の渦がゆっくり崩れていきます。
霧守りの巨大な咆哮。
でもその声は、
もう苦しみではありませんでした。
まるで長い悪夢から目覚めるみたいな声。
ショウタは光の中で目を細めます。
「うわぁぁ……まぶしっ……。」
サヨは少女の手を握っていました。
「消えないで……!」
少女は驚いた顔をします。
その体はまだ透けています。
でも――
青い光が彼女を包み始めました。
ポゥ……。
黒い霧だけが、
少しずつ体から離れていきます。
少女が目を見開きました。
『これ……。』
魔王が王冠を支えながら叫びます。
「今だ!」
ピースケは核へ向かって羽を広げます。
巨大な霧の目は、
ひび割れながら苦しそうに叫んでいました。
『我ハ……消エル……。』
ピースケは静かに首を振ります。
「違います。」
青い光の中。
巨大なニワトリの姿が浮かび上がります。
「あなたも、苦しかっただけです。」
霧の核が揺れました。
怒り。
悲しみ。
孤独。
全部が渦巻いています。
でも。
その奥に――
小さな光。
誰かを守りたいという気持ちが残っていました。
ピースケはそっと羽を伸ばします。
「もう休みましょう。」
その瞬間――
パキン。
霧の核が静かに砕けました。
黒い霧は暴れません。
ただ、
夜空へ溶けていきます。
ザァァァァ……。
まるで長い雨が終わるみたいに。
そして。
赤かった灯台の光が、
ゆっくり白へ変わりました。
ポゥ……。
サヨが涙目で笑います。
「戻った……!」
灯台守も呆然と光を見上げていました。
赤い目は完全に消えています。
普通の人間の目でした。
「終わった……のか。」
すると――
ゴゴゴゴ!!
灯台が大きく揺れます。
ショウタ絶叫。
「建物崩壊イベント残ってたぁぁ!!」
天井が崩れ始めました。
魔王が叫びます。
「脱出だ!!」
全員、
全力疾走。
崩れる階段。
落ちる石。
ショウタは半泣き。
「最後まで忙しいぃぃ!!」
ベルフェルはまだパン箱持参。
「なんで離さないんだ。」
エリシア真顔。
しかしそのとき――
巨大な影が灯台の外へ現れました。
霧守りです。
でももう、
赤い目ではありません。
深い青色。
穏やかな目です。
霧守りはゆっくり首を下げました。
そして――
崩れる灯台へ巨大な前足を伸ばします。
ドン!!
まるで橋みたいに。
ショウタが叫びました。
「助けてくれてる!」
ピースケたちは前足を渡り、
外へ飛び出します。
次の瞬間――
ドゴォォォォン!!
灯台が完全崩壊。
赤い霧が空へ消えていきました。
しかし。
今度の空は明るい。
黒い霧はありません。
海には月明かり。
静かな波。
サヨは涙をぬぐいます。
「きれい……。」
そのとき。
白い服の少女が、
驚いたように自分の体を見ました。
透けていない。
ちゃんと存在しています。
ショウタが目を丸くします。
「消えてない!!」
少女も信じられない顔。
『どうして……?』
魔王が疲れた顔で言いました。
「王冠が呪いだけを切り離した。」
クロノワールが小さく笑います。
「奇跡だな。」
灯台守は静かに少女を見ます。
そして、
震える声で言いました。
「……すまなかった。」
少女は少し黙って――
やがて笑いました。
『おかえりなさい。』
その瞬間。
灯台守の目から、
大粒の涙がこぼれ落ちたのでした。




