灯台島へ その2
翌朝――
港には重たい霧が立ちこめていました。
白ではありません。
黒い霧。
ゆらゆらと海の上を漂っています。
村人たちも不安そうでした。
「昼なのに暗い……。」 「なんか嫌な空気だな。」
ショウタは荷物を抱えて船へ向かっています。
「うぅ……また海かぁ。」
サヨは逆に少し楽しそう。
「今度はどんな島なんだろ!」
ベルフェルは大量のパン箱を積んでいました。
『霧よけニンニクパン』 『船酔い対策レモンパン』
エリシアがじっと見ます。
「霧よけの根拠は?」
「気分。」
「雑。」
ガンツは船の準備をしながら真剣でした。
「今回は本気でヤバいかもしれねぇ。」
クロノワールが海を見つめます。
「霧の流れがおかしい。」
ピースケも静かにうなずきました。
海が、
どこか息苦しい。
まるで何かを隠しているみたいでした。
そのとき――
ポゥ。
ピースケのポケットの中で、
青い貝殻が光ります。
『……急イデ……。』
サヨが顔を近づけました。
「聞こえる!」
声は前より弱っています。
『……島ガ……沈ム……。』
ブツッ。
また途切れました。
ショウタが青ざめます。
「島が沈むってどういうこと!?」
魔王が低く言います。
「急ぐぞ。」
そして――
荒波カジキ丸、再出航。
ザバァァン!!
黒い霧の海へ、
船が進み始めました。
しかし今回は様子が違います。
静かすぎる。
波の音まで小さい。
ガンツが顔をしかめました。
「鳥も飛んでねぇ。」
ショウタが周囲を見回します。
「ほんとだ……。」
サヨも不安そう。
「なんか、海が眠ってるみたい。」
その瞬間。
ギィィィ……。
どこからか音。
全員が止まります。
ショウタが震える声。
「……また幽霊船?」
しかし違いました。
霧の中から現れたのは――
大量の灯り。
小さな船です。
十隻以上。
でも。
誰も乗っていない。
無人船。
サヨが息をのみます。
「だれもいない……。」
船はゆっくり漂っています。
ボロボロ。
一部は壊れていました。
ガンツが青ざめます。
「漁船だ……。」
クロノワールが低く唸ります。
「最近消えた船か。」
ショウタが小声。
「怖ぇぇ……。」
すると。
無人船のひとつから、
カラン……と音。
誰かいます。
ゆっくり現れたのは――
小さな少女。
白い服。
長い黒髪。
サヨくらいの年齢です。
しかし。
足元が半透明。
ショウタ、絶叫。
「幽霊ぃぃぃ!!」
少女は無表情のまま、
こちらを見ています。
そして静かに言いました。
『……帰って。』
海風が止まります。
『この先へ行くと……みんな消える。』
サヨが勇気を出して聞きました。
「あなたは誰?」
少女は少し黙り――
『……灯台島の案内人。』
その瞬間。
黒い霧の奥で、
巨大な“何か”が動きました。
ゴゴゴゴゴ……。
海面が盛り上がります。
ガンツが顔面蒼白。
「な、なんだあれ……。」
霧の向こう。
山のような黒い影。
赤い目が、ゆっくり開きました。
ショウタが震えます。
「……またデカいのいるぅぅぅ!!」




