沈没船 その7
嵐の海――
荒波カジキ丸は、巨大な波に揺られていました。
ザバァァァン!!
ショウタが転がります。
「うわぁぁぁ!!」
サヨもしがみつきながら叫びました。
「船が飛んでるー!」
ガンツは必死に舵を握っています。
「耐えろぉぉ!!」
雷。
暴風。
黒い海。
まるで世界の終わりみたいでした。
しかし。
ピースケだけは船首で立っています。
羽の中には、
深海の王冠。
青い光が、嵐の中でも静かに揺れていました。
そのとき――
ゴゴゴゴゴ……。
前方に巨大な岩山が見えてきます。
断崖絶壁。
荒れる波。
そして岬の中央には――
古い石の祭壇。
魔王が叫びました。
「あれが潮鳴り岬だ!」
ショウタが青ざめます。
「近づける気がしねぇ!!」
本当に危険でした。
巨大な渦潮。
岩。
荒波。
普通の船なら一瞬で沈みます。
ガンツが歯を食いしばります。
「このままじゃ突っ込むぞ!」
その瞬間――
ドゴォォォン!!
海面が爆発。
巨大な触手が現れました。
ショウタ絶叫。
「追ってきたぁぁぁ!!」
海喰らいです。
傷だらけですが、
まだ生きていました。
しかも怒っている。
赤い目がギラギラしています。
ベルフェルが顔をしかめました。
「しつこい。」
海喰らいは巨大な口を開きます。
ゴォォォォ……。
海水が渦を巻き始めました。
クロノワールが低く唸ります。
「飲み込む気だ。」
サヨが王冠を抱きしめました。
「どうしよう……!」
そのとき。
遠くから鐘の音。
カン……。
カン……。
霧の向こう。
ボロボロの幽霊船が現れます。
ショウタが目を見開きました。
「船長……!」
骸骨船長は、もう半分以上崩れていました。
でも。
赤い目はまだ消えていません。
『……行ケ。』
幽霊船は最後の力で、
海喰らいへ突撃します。
ドゴォォォン!!
大衝突。
海が揺れました。
スケルトン船員たちが叫びながら戦っています。
ガンツが叫びます。
「今しかねぇ!!」
荒波カジキ丸、
最後の全速力。
巨大波を越え、
渦潮を抜け、
ついに――
潮鳴り岬へ到達しました。
ピースケは王冠を抱え、
岩場へ飛び降ります。
ザッ!!
サヨとショウタも後を追いました。
暴風。
雷。
祭壇は青白く光っています。
魔王が叫びます。
「中央へ置け!」
しかしその瞬間――
ズガァァァァン!!
巨大触手が岬へ叩きつけられました。
岩が砕けます。
ショウタが吹き飛ばされました。
「ぐわぁっ!」
サヨが悲鳴。
「ショウタ!」
海喰らいが岬へ這い上がってきます。
巨大な目。
怒りの咆哮。
完全にラスボスです。
ベルフェルが炎を放ちます。
エリシアも光の槍を放つ。
しかし止まりません。
クロノワールが低く言いました。
「間に合わん。」
そのとき。
ピースケは静かに前へ出ました。
巨大な海喰らい。
その前へ。
ショウタが叫びます。
「ピースケ!!」
でも。
ピースケは落ち着いていました。
嵐の中。
羽が揺れます。
そして静かに言います。
「あなたも……苦しかったんですねぇ。」
全員が止まりました。
海喰らいの目が揺れます。
ピースケは王冠を見つめながら続けました。
「海が荒れ、居場所を失い、ずっと怒っていた。」
風が吹きます。
「でも、もう終わりにしましょう。」
海喰らいは咆哮を上げます。
しかしその声は、
どこか悲しそうでした。
その瞬間――
ピースケが羽を大きく広げます。
「サヨさん!」
「う、うん!」
「お願いします!」
サヨは震えながらも、
祭壇へ王冠を置きました。
カチリ。
次の瞬間――
青い光が空へ突き抜けます。
ゴォォォォォォ!!
海。
空。
嵐。
すべてが青く染まりました。
そして――
海喰らいの動きが止まります。
赤い目が、
ゆっくり青へ変わっていきました。




