表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/179

結び目

三人は、脈打つ光の中心へと走り続けました。


近づくにつれて、空気が重くなり、足元の景色が次々と入れ替わります。草原だった場所が一瞬で岩場に変わり、焚き火の煙が現れたかと思えば、消えてしまう――まるで世界そのものが迷っているようでした。


やがて、ついに“それ”の前にたどり着きます。


そこには、大きな光のかたまりがありました。絡み合う糸のように、いくつもの時間が結びついています。


ドクン……ドクン……。


「これが、“結び目”ですねぇ。」


ピースケが静かに言いました。


ショウタは顔をしかめます。


「なんか……見てるだけで気持ち悪いな。」


ガルも低くうなります。


「……トキ、イタム。」


そのとき、光の中から声が響きました。


「……ほどけない……。」


三人は顔を見合わせます。


光の奥に、ぼんやりと人の形が浮かび上がりました。小さな影――それは、サヨに似ています。


「え……サヨ!?」


ショウタが叫びます。


影はゆっくりと首を振りました。


「ちがう……でも、ちょっとだけ、サヨ……。」


ピースケは目を細めます。


「なるほど……“記憶のかけら”ですねぇ。」


「記憶?」ショウタが聞き返します。


「ええ。ここには、いろんな時間の“想い”や“記憶”も混ざっているようです。その中に、サヨさんの気持ちも残っていたのでしょう。」


光の中の影は、苦しそうに言いました。


「つなぎすぎたの……さびしくて……バラバラが、いやで……。」


ピースケはゆっくりとうなずきました。


「だから全部、つないでしまったんですねぇ。」


ショウタは少し戸惑いながらも言います。


「でも、それじゃダメなんだろ?」


影はうつむきます。


「……ほどきかた、わからない……。」


しばらく沈黙が流れました。


やがて、ピースケが口を開きます。


「“つながり”は大事ですが、“離れること”も同じくらい大事なんですよ。」


ショウタが腕を組みます。


「離れるって……なんか、さみしくね?」


ピースケはやさしく笑いました。


「ええ、さみしいものです。でも、離れていても、つながっていることはできます。」


そう言って、ショウタとガルのほうを見ます。


「さっき、ふたりは別々の時代でも友だちでいられましたよねぇ。」


ショウタははっとした顔になります。


「……あ。」


ガルも静かにうなずきました。


「トモダチ……ハナレテモ……ダイジョウブ。」


光の中の影が、ゆっくり顔を上げます。


「……ほんと?」


ショウタは一歩前に出ました。


「ほんとだよ。サヨもさ、帰ったけど……ちゃんとつながってる気がするし。」


ピースケも続けます。


「ですから、無理につなぎとめなくてもいいんですよ。それぞれの場所に戻してあげましょう。」


影は少し考え、そして小さくうなずきました。


「……やってみる。」


その瞬間、光のかたまりがゆっくりほどけ始めました。


絡み合っていた“時間の糸”が、一本ずつ離れていきます。


ドクン……ドクン……という音も、だんだん静かになっていきました。


やがて、強い光が一度だけ広がり――


すべてが白く包まれました。


――気がつくと。


三人は、村の広場に立っていました。


空は穏やかで、風も、水も、音も、すべてが自然に戻っています。


「……終わった、のか?」


ショウタがつぶやきます。


ピースケは空を見上げ、ゆっくりとうなずきました。


「ええ、うまくいったようですねぇ。」


ガルの体が、ほんのり光り始めます。


「……カエル、トキ。」


ショウタは少しさびしそうに笑いました。


「またかよ。でも……まあいいや。」


ガルはうなずき、拳を軽くショウタの肩に当てました。


「トモダチ。」


「おう。」


光が強くなり、ガルの姿はゆっくり消えていきます。


「ピースケ……ショウタ……アリガト。」


そして、静かにいなくなりました。


しばらくのあいだ、ふたりは黙って空を見ていました。


やがてショウタが言います。


「……でもさ、なんか前よりさみしくないかも。」


ピースケはやさしく笑います。


「それが“つながっている”ということですよ。」


夕日が村をオレンジ色に染めていきます。


遠く離れた時代にも、同じ空が広がっているような気がしました。


そしてピースケは、いつものように小さくつぶやきます。


「さて、次はどんな不思議が来ますかねぇ。」


村の物語は、まだまだ続いていくのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ