沈没船 その1
――3ヶ月前。
夏の日差しがまぶしい午後。
ピースケたちは海辺へやってきていました。
青い空。
白い雲。
波の音。
そして――
巨大な2m超えニワトリ。
海辺の観光客たちがざわついています。
「あのニワトリでかくない?」 「しゃべってる……。」
ショウタは麦わら帽子を押さえながら言いました。
「いやー海だー!!」
サヨも大喜び。
「きれー!」
しかし。
その中でひとりだけ、
妙に真剣な顔をしている者がいました。
魔王です。
腕を組み、海を見つめています。
ベルフェルが聞きました。
「どうした。」
魔王は低い声で答えます。
「……この海の底に、沈没船がある。」
全員が止まりました。
ショウタの目が輝きます。
「沈没船!?」
サヨもわくわく。
「宝探し!?」
クロノワールは嫌そうな顔です。
「また面倒な話だな。」
魔王は静かにうなずきました。
「昔、“深海の王冠”を積んだ船が沈んだという噂がある。」
ショウタが飛び跳ねました。
「絶対お宝じゃん!!」
ベルフェルも目を細めます。
「ロマンだ。」
エリシアがため息。
「また危険な流れですね……。」
そのとき。
後ろから声。
「その話、本当か?」
振り向くと、
日に焼けた大男が立っていました。
ヒゲ。
筋肉。
海賊っぽい服。
ショウタが小声で言います。
「海の男感すごい。」
男は胸を張りました。
「オレは船長のガンツ。」
どう見てもベテラン船乗り。
ガンツは魔王を見ます。
「その沈没船を探してるのか?」
魔王はうなずきました。
するとガンツはニヤリ。
「なら忠告しとく。」
風が吹きます。
「“霧喰らい”には気をつけろ。」
サヨが不安そう。
「きりくらい?」
ガンツは海の沖を指差しました。
遠く。
霧がかかった海域があります。
「昔から、あの辺へ行った船は消える。」
ショウタが青ざめました。
「怖ぇぇ……。」
しかし。
魔王は静かでした。
「それでも行く。」
ガンツは少し笑います。
「面白い連中だ。」
そして。
「オレの船を貸してやる。」
ショウタが驚きます。
「えっ、いい人!?」
ガンツは豪快に笑いました。
「代わりに宝を見つけたら酒代よこせ!」
「やっぱりちょっと海賊!!」
こうして――
“沈没船探索”が始まったのでした。
翌朝。
ピースケたちはガンツの船へ乗り込みます。
船の名前は――
『荒波カジキ丸』
ショウタが笑います。
「名前クセ強っ。」
ガンツは誇らしげ。
「速いぞ。」
出航。
ザバァァン!!
船は青い海を進んでいきます。
サヨは海風に大喜び。
「気持ちいいー!」
ピースケは少し緊張気味でした。
巨大ニワトリ、船に乗る経験は少ない。
クロノワールは日陰で丸くなっています。
ベルフェルはパンを焼いていました。
「なぜ船で焼く。」
エリシアが真顔でツッコミ。
そのとき。
空が少し暗くなりました。
ガンツの表情が変わります。
「……来たな。」
前方。
白い霧。
どんどん濃くなっています。
ショウタがごくり。
「霧喰らい……。」
海が静かになります。
風も止まりました。
不気味なくらい静か。
そして――
ギィィィ……。
どこからか、
古い船のきしむ音。
サヨがピースケの羽をつかみます。
「な、なに……?」
霧の中。
ぼんやりと、
巨大な影が浮かび上がりました。
マスト。
破れた帆。
ボロボロの船体。
ショウタが震える声を出します。
「……幽霊船。」
その瞬間。
霧の奥で、
赤い光がギラリと光りました。




